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気づくと、人数が減っていた。
コレって地味にホラーだよなぁ。
「あ、ありがとうございます! ありがとうございます!!」
「やった! 助かったーー!!」
「おがああざあああん!! どごぉぉおお??!!」
「あの武装集団が持ってたの、最新の銃と旧式が混じってた! マジ感動なんだけど、生で、しかも間近で見れた!!
そう! このご時世に普通の銃だったんだよ!! 術式加工してないやつ!!
魔法弾じゃなくて、実弾!!
絶対、大戦時のやつだって!!」
最初はきょとんとしつつも、助かったことがわかると途端に人質だった人達は、そんな声を上げる。
まずは年寄りと未就学児、そしてその未就学児の親御さんを中心に、一人から多くて三人までを、転移魔法を駆使して、なるべく、テロリスト達に怪しまれないように救出している最中である。
それも野次馬達からも離れた場所、冒険者ギルドの多目的ホールだ。
『携帯の充電だけは気をつけなさいよ』
手に持った携帯端末から、そんな姉の声。
「分かってるよ」
作戦はこうだった。
テロリスト達が提示した時間までに、助けるだけ助ける。
というのも、特殊部隊なり機動隊なりが出てきても人質が怪我をする可能性が、あるからだ。
最初父は、姉ちゃんが転移魔法を遠隔操作で展開して全員助ける、ということも考えたらしい。
しかし、姉曰く、『できなくはないけど、確実に取りこぼしが出て、立てこもってるテロリスト達を刺激する自信がある』とのことで、回りくどい方法をとる事になったのだった。
魔法のことはよくわからないが、とにかく何か不測の事態が起こっても被害がより小さく済む方法を選んだらしい。
まず、父さんが冒険者ギルドから得た人質が囚われてる場所の位置情報を姉ちゃんに教える。
それから、俺達の姿を魔法を遠隔操作して消してもらい、人質がいる場所に転移。
警察などの機関は、特例として事故事件の現場にすぐ駆けつけられるよう、転移魔法を使用できるが、一般人の場合その魔法の使用には国家資格が必要になってくる。
それも、とくに難関な資格試験の一つをクリアしなければならないらしい。
また、転移魔法を使用後は色々と書類を書いて、役所と警察などに届出なければならないのだとか。
でないと、空き巣や犯罪をやりたい放題になってしまうからだ。
こう説明すると、ならわざわざ俺や父が行かなくても一人一人転移させればいいじゃないかという話になるが、こうして携帯で繋がっているからこそ細かい魔法操作ができるのだとか。
ちなみに、父は護衛で俺が選ばれたのは不安がってる人質達の警戒心を解くため、らしい。
アストリアさんの父ーーおじさんは外で待機して救助された人達の介抱をする係だ。
怪我とかしている人達がいたら、回復や治癒をするんだとか。
ちなみに、現役のお医者さんだった。
救助した何人かの人は、患者さんだったようでとても驚いていた。
人質の人数が減りつつも、怪しまれないように姉は巧みに幻術も展開させている。
それにより人数を誤魔化すことには成功していた。
そうこうしているうちに、最後の二人となる。
アストリアさんとルリシアお姫様だった。
この二人が後回しになったのには、近くをやたらうろうろしている武器をもったテロリストの人がいたからだ。
やはり、VIPだからか。
でも、だったら別の部屋にでも移動させれば良いのに、とも思うが。
あ、もしかして、暗殺が目的ならどさまぎで殺せるようにってことなのかな?
父さん曰く、指示待ちをしている感じらしいし。
そう、要求が通るのを待っているのではなく、指示待ち。
父曰く、
「トカゲの尻尾切り、なんだろうなぁ」
とのこと。
父は必要以上の情報を俺には言わなかった。
トカゲか。
そう言えば、ゴンスケのやつ今日あたり脱皮しそうだったんだけど、大丈夫だったかな。
帰ったら家が全壊してたとかだったら笑えないよなぁ。
まぁ、そんなこんなで救助は無事に進み。
残るは、アストリアさんとルリシアお姫様の二人となったのだった。




