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ホテルでの食事の場合、取り放題食べ放題形式でないなら、高確率で順番に料理が出てくる、いわゆるコース料理らしい。
なので、コース料理を前提にしたマナーを教えて貰えることになったのだが。
「そもそも、食事のマナーって言うのはその国、その地域の食文化に根ざした、要は一緒にご飯を食べる人と楽しい時間を過ごせるようにっていう気遣いから生まれたものだから、国によって全然違うの。
例えば、この大陸だとフォークとナイフを使うのが上品って場合もあれば、逆に手掴みで豪快に食べるのが上品って国もあるの」
「へぇ、世界は広いんですね」
「とても広いわ。
そんなわけだから、正解なんてないの。と言うよりも国や地域の数だけ正解があるというべきかしら。
とりあえず、まずは食べて見せてもらえる?」
と、コース料理にそって、突き出しから始まり食べつつ注意点なんかを教えてもらう。
その都度、横に置いておいたノートにメモしていく。
ゆっくりとマナー講座は進みつつ、時折料理の感想も聞かれる。
「全部美味しいです!」
なんか、全部めっちゃキラキラしてることさえ抜かせば美味しい。
ちょっと薄味で、量が少ないけど。
でも、コース料理って量が少ないらしいから、こんなもんなんだろうけど。
「そう、良かった」
途中で口直し用のシャーベットも出たけど、それがスーパーでよく見る奴でちょっと驚いた。
出てくる前にイチゴとレモンとコーヒーの3つから選んでくれと言われて、レモンを選ぶ。
「本番だと、もっとあっさりしたアイスが出ると思うけど、今日はコレで代用ね」
「あたしイチゴ味!」
アストリアさんとお母さんはイチゴ味のようだ。
「俺はレモンを」
時折雑談も交えつつ、食事は進んでいく。
「そういえば、弟さんは?」
「今日は、退職したおじいちゃんと一緒に買い物。
前から欲しいって強請ってた玩具買ってもらうんだって」
アストリアさんの説明に、お母さんが続く。
「まぁ、ずっとお手伝い頑張ってたからね」
「そういえば、テツさんも子供のころはそういう玩具とかほしがったりした?」
「あー、特撮のロボットとか変身アイテムとかほしがったりしたなぁ」
「やっぱりそうなんだ! 弟も、この前家族で出掛けた時におもちゃ屋の前で駄々こねて大変だったんだ」
身に覚えがありすぎる。
子供の頃、欲しい玩具の展示の前で床を転がってバタバタしてほしがったことがある。
結局、母か姉に強制連行されてしまう。場合によってはゲンコツが追加されるのだが。
「それで、弟さんは、なんの玩具を欲しがったんだ?」
「いまテツさんが言った特撮ヒーローの変身玩具だよ。
もう、テレビを見ながら毎週毎週真似をしてる」
もう何も言えない。
うん、好きになるよな。
「あー、わかるわかる」
こんな感じで授業は進んで、最後のデザートが出てくる。
それは、時折スーパーでやっているミニケーキバイキングで販売されているケーキが二個と、手作りらしいクッキー数枚が乗った皿だった。
「さっきから思ってたんですけど、スーパーよく行くんですか?」
「うん? そうだけど。なんて言うか、値段が美味しい商品がたくさんあるし、よく母親と娘時代に買い物に行ってたから」
たしか、アストリアさんのお母さんって元王族だよな?
というか、此処が公爵家だよな?
娘時代に一般的な場所に買い物行くなんてありえるのか?
そもそも、公爵家がこんな一軒家って。
なんだろ、なんか不思議だ。
「お母さんは、元々王位継承権が低かったし、他所にお嫁に行くことを見越してお城のおばあちゃんにいろいろ教育されてたらしいよ」
俺の疑問を察したのか、アストリアさんがそう説明してくれた。
なるほど。
民間に嫁ぐことも考慮して、教育をされてきたのか。
だから、一人で出来ると。
現代の貴族社会は謎だよなぁ。
「でも、テツさん驚いたでしょ?」
アストリアさんのお母さんがイタズラっぽく笑って言ってくる。
「こう、イメージの公爵家と違うって思ったんじゃない?」
「えー、まぁ」
「そもそも公爵の爵位を持ってるのが私ってだけの話で、だから家としては民間人の家になるの。
ちょっとややこしいんだけど、跡継ぎの関係でね。
ごたつかないようにってことで」
「なるほど」
ごめんなさい、100ぱー理解できません。
でも、嘘も方便なので。
あ、いや、とりあえずアストリアさんは公爵の令嬢ではあるけど分類的には一般人ってことでいいのか?
「ところで、マナーの説明、分からないところとかあった?」
「いえ、大丈夫です!」
「そう、ならあとはニコニコして美味しそうに食べて、楽しめば大丈夫。
笑顔もマナーの一つだから」
「わかりました」
「でも、今日は遊びにきてくれてありがとう。
アストリアも、本当なら一般人なのに私のせいで気軽に話せる友達が中々出来なくてね。
というわけで、夕飯も食べて行ってね。もちろん、オカワリ自由。味付けも、夕飯の方はいつものに戻すし」
おおぅ!
ってことは、やっぱり薄味だったのか。
それを差し引いても、こんな絶品料理がまた食べられるなんて!
あ、いや、礼儀正しく。礼儀正しく。
「なにか食べたいものはある?」
断ろうと思ったのに、気づいたら食べたいものを口にしていた。




