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【急募】捨てられてたドラゴン拾った【飼い方】  作者: カズキ
友達や知り合いって大切にしなきゃだな、と感じた話
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 そして、三連休初日。

 アストリアさんからの迎えを待っている俺に、祖父が声を掛けてきた。


 「玉ねぎ持ってけ」


 おそらく、迎えは高級車だ。

 前回、土付きの野菜を渡した俺が言うのもなんだが、臭いとか付くかもしれない。

 あ、袋二重にすれば良いか。

 ちなみに、あの後アストリアさんから俺が渡した野菜達を使った料理の画像が送られてきた。

 画像の中には、護衛さん達のものもあった。

 全部美味しく頂かれたようで何よりだ。


 「今日お世話になるんだから、このお菓子渡しなさい」


 と、祖父の次は今度は仕事が休みの母が、高級そうな菓子折りを渡してきた。


 まあ、たしかに、教わる立場だから手ぶらというわけにはいかない。


 「それと、向こうの親御さんによくお礼を言うのよ?」


 「うん」


 母が口を酸っぱくして、とにかく失礼のないように、だとか、挨拶はちゃんとするように、と言ってくる。

 母の中で俺はいったい何歳設定なのだろう?

 と、そうこうしていると、俺の携帯が震えた。

 アストリアさんから着いた、という連絡だった。

 同時に、玄関から声がした。

 ちなみに、ウチにはインターホンという現代文明の科学の利器はない。

 家人を呼ぶ時は、とにかく大声を出すことになる。

 前回、アストリアさんがウチに来た時は、護衛の誰かが声を出したと思われる。


 俺は玄関に向かう、と何故か母も着いてきた。

 扉を開けると、アストリアさんとやはり黒服の護衛さんが二人、計三人が待っていた。

 母が挨拶もそこそこに、メロンのお礼と今日アストリアさんの家へお邪魔することに、恥ずかしくなるほど頭を下げた。

 もういい、止めてくれよ。本当に恥ずかしい。

 と、護衛の二人とそしてアストリアさんも野菜のお礼を言ってくる。

 こういうコミュニケーションが大事なのはわかる。

 わかるが、


 「それじゃ、ウチの馬鹿をよろしくお願いします。

 無礼を働いたら、容赦なく叩きのめしてください」


 おい、もうちょい信用しろ、俺はもう高校生だぞ。




 「綺麗なお母さんだね」


 車に乗り込んで開口一番、アストリアさんはそう言ってくる。

 ちなみに、俺とアストリアさんが後部座席、護衛さん二人が運転席と助手席だ。

 なんだ、前回と違って人数少ないな。


 「そう?」


 「うん! もしかして女優とかアイドルだった?」


 「さぁ? あ、今日は改めてありがとう」


 「いいよいいよ、気にしないで。

 それと、玉ねぎありがとう。お菓子も貰っちゃってなんか悪いなぁ」


 「それこそ気にしないでくれ」


 「そういえば、話にあった人とはどこで食事するの?」


 俺は、携帯を取り出してホテルのホームページを表示させ、アストリアさんに見せる。


 「ここ」


 「なるほど、もしかしたら当日会うかもね」


 「なんで?」


 「同じ日にウチも、家族で食事なんだー。

 お父さんと、久しぶりに会えるから今から凄く楽しみ」


 「久しぶり?」


 「そう、とにかく仕事で忙しくってあんまり会えなくて。

 お母さんはいつも家にいるんだけどね」


 お金持ちも大変なんだなぁ。

 貧乏暇なしとは違った忙しなさがあるんだろうな。


 「そうなんだ」


 お手伝いさんもいそうだよなぁ。

 よくアニメで見る、メイドさんとか執事さんがズラーっと並んでお出迎え、みたいな光景が見れるんだろうか。


 「でも、今日で二度目だけどテツさんの家大きいね。

 一つの土地の中に三つ、車庫も入れると四つもあるなんて」


 「そう? でもアストリアさん家に比べると小さいでしょ?」


 「ウチ? 普通だよ」


 「そうなの?」


 「うん。お父さんもお爺ちゃんもあんまり家が大きいと落ち着かないからって。一般的かって言われるとそれよりは広いかな?

 でも、普通だよ。

 それに、今日はプライベートだしね。

 お父さんのお仕事の人やお母さんの友達とか、そういう来客用の建物なら別の場所にあるし」


 それ、別荘って言うんじゃ。

 いや、この場合は別宅か?


 「良いの? えっと母屋に俺が行って」


 「うん。だって、仕事や夜会じゃないしね。

 お母さんなんて、すっごく楽しみにしてるんだよ」


 「?

 なんで?」


 「なんていうか、今まで知り合った子達ってこうやって普通に遊べる子がいなかったから」


 そういや、そんな話聞いたな。


 「今日の話をしたら、どうせなら実践形式でやろうって張り切って朝からたくさん料理作ってたしね」 


 待て待て待て。ちょっと待て。


 「え、もしかして、アストリアさんのお母さんがマナーの先生?」

 

 途中でコンビニでも寄ってもらおうと思ってたんだけど、まさかご飯が実際に出てくるとは。


 「うん!」


 なんつー、いい笑顔するんだこのお嬢様。


 「ただ、テツさん家が農家でしょ?

 それも米農家って話したから、今日はパンなんだって。

 お米作ってる家の子に、逆にダメだしされたら怖いからパンにしたんだって」


 「アストリアさんのお母さん、パン焼けるの?」


 「うん。昨日の夜から種仕込んでたよ」


 気にしなくて良いのに。

 あ、でもいつもパンってスーパーの菓子パンか食パンだから、手作りのパンって何気に初めてかも。

 楽しみだな。 

 でも、


 「夜にパンの種を仕込むんだ?」


 「宵種法(オーバーナイト)っていう中種法の一つなんだって。

 冷蔵庫で低温発酵させる方法なんだってさ。

 当日にやる場合は直捏(ストレート)法って言うんだって」


 「詳しいな」


 「毎日お母さんから蘊蓄を聞かされてて、さすがに覚えちゃった」


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