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「で、お前彼女いんだろ?」
「姉ちゃんも言ってたけど、何の話だ?」
古い家庭用ゲーム機を引っ張り出し、昔はよく遊んだ対戦ゲームをやりつつ、時々お菓子、ジュースを飲み食いする。
「ニュースだと音声とかに修正が入ってて、動画サイトで元動画見たんだよ。
ばっちり、女の子の名前、えーと、アズ? アルト?とか言う名前がそのまま出てた。
はい、俺の勝ち」
「ちっ」
「で、彼女の画像とかないの?」
「彼女なんていねーし。そもそも、魔力ゼロの将来性皆無男と好き好んで付き合おうとか言うやついねーよ。
居たら、逆に怪しいだろ」
「えー、じゃあ動画で出てきた名前ってなんなん?」
「ん? あー、猫と魚と爬虫類好きな変わった女子がいて、ゴンスケのこと知って画像見せてーって言って来たんだけど。たぶんその子のことじゃね?
なんかすっげー金持ちらしいけど、よく知らん」
「友達?」
「いや、ペット画像送ってるだけ」
「友達じゃねーの?」
「よっし、俺の勝ち!!」
「あ、くそっ!」
ゲームをしながら、そんな会話を続ける。
と、携帯端末が震えた。
「なんか携帯来たんじゃね?」
「えー、タイムな、タイム」
「おぅ」
ゲームを一旦休みにして、俺は放置していた携帯を手に取ると中を確認する。
噂をすれば影だ。
アストリアさんからのメールだった。
ゲームをする前に送った画像に対する返信だった。
「…………?」
最後に、何故か謝罪の言葉があって意味がわからなくて俺は首を傾げる。
少し考えて、【なにが?】と書いて。
すぐに画像を撮って送る手間のことかと思い至る。
なので、気にしなくていいという旨のことも書いて返信した。
すると、今度はたったひと言【ありがとうございます】と返ってきた。
そして、また携帯を放置する。
ゲームのコントローラーを握り直しながら、俺はちらりと横で丸まっているゴンスケとポンを見た。
「なぁ、ゴンスケというか、ドラゴンの雛を捨てる理由ってなんなんだろうな?」
「どした、急に?」
「いや、ゴンスケって価値があるよな?
ドラゴンってだけで、金持ちは喉から手が出るほど欲しがるだろうし。
で、俺はトカゲだと信じて疑ってなかったけど、見る人が見たら雛ってわかるだろうし」
コントローラーをカチャカチャやりながら、俺の言葉を聞いていたマサが答える。
「そうだなぁ。
いくつか理由は考えられる。
たとえば、何らかの理由で飼えなくなった。
お前みたいにステータスが見えず、トカゲとして飼ったけど何らかの理由で飼えなくなって捨てた。
それと、んー、そうだなぁ。
品質が良くなくて捨てた」
「品質?」
「ほら、鯉とかも柄とかで値段がついたりするじゃん?
あとは、血統書とか気にするやつもいるし。
高値が付かなくて、他に貰い手も無くて袋に入れて捨てた、とかな」
「…………でも、ドラゴンってだけで買い手が付きそうなものだけど」
「まぁ、これはあくまで俺の想像だけど。
案外、その辺の子供がそれこそトカゲと思ってイタズラでコンビニの袋に入れて放置したとかじゃね?」
「…………」
「なに、なんか気になることでもあんの?」
俺はゲーム画面を見ながら、返した。
「いや。ほらここまで育つのも珍しいらしいからさ。
実は自分のドラゴンだ、返せとか言うやつが現れたら面倒いなって思って」
「居ねぇだろ。居たらとっくに来てると思う」
俺は、マサの言葉に少しだけホッとして、会心の一撃をマサの操るキャラクターへ叩き込んだ。
「あ、てめぇっ! ズッコイぞ!!」
「はい、俺の勝ち」




