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【急募】捨てられてたドラゴン拾った【飼い方】  作者: カズキ
なんか知らんが喧嘩売られた
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 「あー、これか」


 SNSなり、動画サイトなり、あとはウェブ記事なりをチェックすれば良かったんだろうけど、帰宅してすぐに何故かむくれてしまったゴンスケに携帯端末を取られ、充電が切れるまでゴンスケがハマっている動画を見まくったため、姉ちゃんが言っていた動画を俺が確認できたのは、午後六時のニュースでだった。


 「見事な土下座だなぁ」


 隣で父も感心している。

 ちなみに、全国区のニュースだからだろうか俺を蹴りつけていた連中の顔にはモザイク処理、ついでに声も加工されていた。


 「でも、ちょっと心配だなぁ。この子達。

 手や足、大丈夫だったんだろうか?」


 「慰謝料の請求来てないからたぶん大丈夫なんじゃない?」


 「結構な会社の子達だからなぁ。怪我させて慰謝料請求されたら首つるしかなくなるわ」


 父が不謹慎な冗談を言ってケラケラ笑っている。


 「あ、新しい動画だ」


 「あー、なるほど他にも被害者がいたのか」


 ニュースキャスター曰く、テレビ番組が独自入手した動画が流れている。

 父は、続けた。


 「でもお前良かったな。こうして謹慎で家にいるから学校のゴタゴタに巻き込まれないで済んでる」


 「いや、わかんねーよ?

 明日には、テレビの取材が押し寄せるかも」


 なんて話していた翌日。

 ジュースとお菓子を手土産に、何故かマサが押しかけてきた。


 「ゴーン? ゴンゴン? ゴンスケー??」


 出迎えた俺にお菓子とジュースの入ったコンビニの袋を押し付けて、マサはゴンスケを呼ぶ。


 「ぎゃう?」


 ひょこっと、家の奥からゴンスケが顔を出した。


 「お、居たな! うぉ、ポンもまだ生きてたのか!!」


 ゴンスケと一緒にポンが出てきて、マサがヅカヅカと家に上がっていく。


 「お前、長生きだなぁ」


 ポンは、マサが近寄ると体をゴロンと転がして、さぁ撫でろのポーズ。


 「よしよし、よーしよし」


 ゴロゴロとポンの喉が気持ち良さげに鳴った。

 そんなマサに俺は訊ねた。


 「お前、学校は?」


 「はは、大人みたいなこと言うんだなぁ」


 「…………」


 「いやぁ、お前が虐められて自宅で傷を癒してるってニュースで見たからさ。心配して見舞いに来たんじゃん」

 

 意外だ。


 「お前、ニュースなんて見るのか」


 「失敬な普通に見る」


 「……まぁ、いいや」


 そうして、俺はマサを自室へ案内する。

 しかし、


 「あー、その前に手洗わせてくれ」


 猫を触ったから、手洗いが先だった。



***



 彼女、アストリアの携帯端末が震えた。

 テツとは違い、安全のために、彼女にも自宅待機が言い渡されていたのだ。

 

 「あ」


 嫌われたと思っていた相手からの、メールだった。

 昨日もそうだった。

 ここ数日で知り合って、親しくなり始めた相手からのメールだった。

 昨日も、いつも通りに画像を送ってくれたのだ。

 アストリアが好きだと言った、でも家庭の事情で飼えないペットの画像を、彼はーーテツは今日も送ってくれたのだ。

 家柄が絡むと、友達になってくれた今までの子達は彼女から離れていった。

 こんなことは、大なり小なり今まで彼女は経験してきた。

 だから、きっと今回も、と思っていた。

 でも、彼は違った。

 たった数日の付き合いだ。

 ニュースで彼が受けた暴行の動画も見た。

 情けない、とかそんなことは不思議と思わなかった。

 それなのに、なんてことは無い彼女のわがままを聞いてくれている。


 【ありがとうございます】


 それだけじゃなくて。


 【大丈夫ですか?】


 【怪我の具合はどうですか?】


 【ごめんなさい】

 

 いろんな言葉が浮かんでは消えていく。

 でも、結局、考えすぎて、簡単な返信しか思いつかなかった。

 安全のための自宅待機だ、と言われている。

 でも、彼女は知っていた。

 否が応でも知ってしまったのだ。

 二日前に校内で起きた暴力事件。

 それが、一部の報道で学生同士の痴情のもつれが原因らしいと流れたからだ。

 規制音が入り、修正された動画ではなく、なんの加工もしていない動画をアストリアも別ルートで見たから、その中心に自分がいることを知ってしまった。


 返信のメッセージに、【ごめんなさい】とだけ書いて送る。

 少しして、返事がきた。

 そこには、顔文字とともに、【なにが?】とだけ書かれている。

 続けて、【画像のことなら気にしなくていい。送らないでほしいなら連絡を】とも書かれていた。

 淡白だった。

 でも、それが、普通で。

 普通すぎて、少しだけ嬉しくなってしまった。

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