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結果だけを言うなら、翌日から俺は一ヶ月の停学処分となった。
理由は風紀を乱したから、らしい。
大人しくしていても処罰されるとは、難しい。
そんなわけで、俺は自宅待機している。
いや、していたのだが。
「暇なら畑で草むしり手伝え」
「ついでにじいちゃん達の昼ごはんも作れや」
と、祖父母から指令が下ったので、指定された場所の雑草取りに励み、お昼は余り物で適当に昼を作った。
マヨネーズを使わないポテトサラダをオカズにしたのだが、祖父母の口には合ったようだ。
「昼からは、オオカミ出たらしいから駆除に行くよ」
そんな祖母の言葉に従い、昼食のあとはうちの山に出かける。
人的被害が出る前に退治するとのことだ。
俺は人間種族だが、色々血が混じっているからかとても頑丈なのだ。
そのため、囮役をするのである。
「ぐぅるるる」
ゴンスケが俺のとこへよってきて、鳴いた。
「今日も、行くか?」
祖母がそんなことをゴンスケに言った。
もしかしなくても、これたまに連れ出してたな。
「ぎゃう!ぎゃう!」
ゴンスケは嬉しそうだ。
「よしよし、また、大物とったらご褒美やるからな」
「ぎゃうるる!!」
満足そうなゴンスケを横目に、俺は確認する。
「ご褒美?」
「捕れたオオカミとかクマとかの肉を焼いて食べさせてた。
最近はゴンスケ、口から火も出せるようになって自分で焼いて食うようになったんだ」
「なるほど」
昼食のあと少し昼寝をして、それから婆ちゃんの運転する軽トラで片道三十分ほどの私有地である山を目指す。
軽トラの荷台には、犬用のリードで繋がれたゴンスケ。
まぁ、いるけどさ。
こうやって犬を畑や田んぼに連れてく人。
「よしよし、じゃあいい子にしてるんだぞ」
車を出す前に祖母に言われ、ゴンスケはうなずいた。
「ぎゃうっ!!」
慣れてるなぁ。
***
時間は少し戻って、学校の昼休み。
「まさか謹慎とはなぁ」
リーチが呟いた。
「理不尽だ」
ツカサも納得がいっていない。
「まぁ、仕方ねーよ。それが持ってるヤツらの特権ってやつだ」
「…………でも、一方的過ぎるよ。なんでテツばっかりが悪者にならないといけないんだ」
「それが、世界の普通だからだろ。
逆に言えば、テツのお陰で俺達は見逃されてる。
まぁ、アイツはこういう事慣れてるみたいだし。
また出てくれば普通に授業受けるだろ」
「それは、そうだけど」
「これで俺たちまで標的になったら、それはそれで面白いんだけどな」
「?」
「人の口に、扉や壁は立てられないんだよ。
ほら、見てみ?」
ツカサのステータス画面、もしくはウィンドウにリーチから動画サイトのアドレスが届く。
開くと、それは現在注目度一位の動画だった。
昨日の、特進クラスの者達によるテツへのリンチ動画だった。
モザイク等はされていない。
なので、うずくまって暴力に耐えているテツの顔は映っていないものの、特進クラスの面々は高画質でくっきりはっきり映っていた。
「特進クラスの連中のことをよく思っていない。
でも面と向かってだと何もできないヤツらが、こうやって世間にチクってる」
「…………」
「世界の普通より、世間一般の常識の方が勝つことがある」
「違いがわからない」
「匿名で、大義名分さえあれば誰でもお手軽に【正義の味方】になれるってことだ。
さて、明日か、いやいや、今日の夕方か夜のニュースで取り上げられるぞ」
「…………リーチってさ、性格悪いよね」
「バッカ、俺みたいな品行方正のやつそうそういないぞ」
鏡で自分の顔見てみろ、とは思ったがツカサは何も言わなかった。




