122
翌日。
正直、会って話せれば一番良いのだけれどそういう訳にもいかない。
なので、改めてルリシアさんからなるべく詳細な情報をメールに書いてもらい送ってもらった。
ルリシアさんと直接電話をする、という手も考えた。
しかし、それはメールと違い中々難しいらしい。
向こうには向こうの事情があるので、仕方ない。
そのメールの最後に、何故か俺が彼女を『さん』呼びしていることが嬉しいと書かれていて、さらに、出来ることならサクラのように呼び捨てにしてほしいとあった。
そう言えば、俺ずっと姫様呼びだったもんなぁ。
なんで『さん』付けにしたんだったか。
あ、そうだ、サクラに女子会の話聞いた時だ。
隣国のお姫様であることを隠してそうだったから、『様』呼びを『さん』にしたんだった。
ルリシアさんは、メールでのやり取りくらい、友人として気安くしてほしいらしい。
不敬にならないか念の為確認して、俺は彼女の希望通りに、そして親しみを込めて、これからは『ルリ』呼びにすることにした。
彼女はこういうやり取りに本当に憧れていたのだろう。
とても嬉しい、と返ってきたメールに書いてあった。
メールの中でだけなら、とこちらもそれこそサクラと同じように呼び捨てにしてくれと言うと、早速、そうしてくれた。
うん、たしかにこっちの方がやりやすいな。
そうして、ルリから話を聞いたところによると、アストリアさんの悩みは、どうやら俺らしいというのがわかった。
メールによると、女子会の時にサクラが俺の話をアストリアさんに振った時、どうも様子がおかしかったらしい。
ルリは、俺とアストリアさんが同じ学校に通っていることもあり、それで何かしらトラブルがあったのではないか、と考えているようだった。
しかし、思い当たる節は無い。
夏休み前と言えば、そういえばレイとの旅行について問い詰められたくらいだ。
アストリアさんって、こんなに押しが強かったのか、と意外に感じたことを覚えている。
そのあとはすぐ夏休みに入って、あの黒歴史を作りまくってしまった旅行に出かけたし、戻ってきたらなんだかんだ忙しかったしで、アストリアさんとは全くと言って良いほど接点など無かった。
あ、いや、定期的にゴンスケとドンベエの画像送ってたけど、そのやり取りでは、俺は違和感などは気づかなかった。
うーん、ルリと違ってアストリアさんとは電話もしやすいっちゃーしやすい。
【俺、なんかしたと思う?】
リーチやツカサの時と同じように、友人なのだから、と懇願されたこともありそんな砕けた文章をルリに送ってみる。
返ってきたのは、
【どうでしょう?】
そんな短い、文章。
そりゃ、わからないだろう。
【とりあえず、確認してみようと思う。
それと、ルリ。
ルリも友達なら、そんな丁寧な言葉使わないでもらえると嬉しいな】
【あ、はい。わかりました。
じゃ、なくて。えっと、('ω'◎)ワカッター
すみません、まだ慣れなくて。
でも、テツさん、いいえ、テツ。
お話、聞いてくれてありがとう。
大好き、愛してます】
おおっと、急にどうしたルリ。
俺が反応に困っていると、すぐにまたルリからメールが届く。
そこには、
【ご、ごめんなさい、すみません!
侍女が勝手にメールを送ってしまって!
あの、さっきのメールの最後の方は忘れてください!!】
なんて書かれていた。
そういえば、鬼婆侍女さんに気づかれないよう、別の侍女さんの協力を得てるんだったか。
イタズラ好きの侍女さんなのかな?
【いやぁ、お姫様から告白されるなんて、ちょっとドキッとした。
告白も初めてだから、嬉しかった。(*´艸`)w
ありがと。
でも、ルリ。そういうのは、気をつけなよ。
でないと、俺みたいなヲタ、じゃなくて、俺みたいなタイプは勘違いするから( ̄▽ ̄;)
あと、ちゃんと好きな人に言いなよ。そうじゃないと、たぶん後悔するから】
まぁ、わざわざこう書かなくてもわかってるとは思うけど。
それでも、もしもルリに好きな人がいるなら、叶わない恋でも告白はした方が良いと思う。
俺は告白する前に結局諦めて、後悔したから。
言えない苦しみはわかってる方だと思う。
告白する前に玉砕したから、その後悔とやっぱり苦しみも知ってるし。
あの時は、マサと一緒にカラオケ行って失恋した傷っぽいものを歌をうたって発散した。
それでも、やっぱりリオさんのことが好きなのは変わらなかったんだよなぁ。
だから、結局片思いは続いてるんだけど。
でも、告白して玉砕したことは無いから、その苦しみはわからない。
ただ、ルリなら、あの容姿に身分だ。
きっと引く手数多だろう。
いいなぁ、あんな子に好かれたら、きっと人生薔薇色なんだろうなぁ。
そもそも、告白されて振る男なんているんだろうか?
もしもいるなら、見てみたいものだ。