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【急募】捨てられてたドラゴン拾った【飼い方】  作者: カズキ
可愛い子に旅行に誘われて行った話
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***


 ゴンスケは、なんだかんだ肩車をしてくれるクリスを見た。

 飼い主であるテツの父親、ウルクより少し年上らしい。


 そして、次に、まるでテレビや動画で流れるCMに出演しているアイドルのような、もしかしたらそんなアイドルよりも綺麗な顔立ちをした二十歳前後の白髪で赤い瞳を持つ青年を見た。


 「久しぶりだな、リム」


 青年の名前は、どうやらリムと言うらしい。

 血のような紅が、クリスを見つめ返す。


 「ま、おっさんとは久しぶりか。

 つーか、おっさん知っててここに来たのか?」


 言われて、クリスが首を傾げる。


 「何の話だ?」


 「ここが、どんな場所かちゃんと知ってるのかって話」


 「都市伝説の舞台で、たった今なんらかの実験がされてた場所ってことが証明されたな」


 「……おっさん、魔法に詳しいだろ。まさか気づいていないとか、無いよな?」


 「ん? この家の中の術式のことか?

 それとも、森というか他の廃屋に関してのことか?」


 「なんだ、やっぱり気づいてたんじゃないか。

 ってことは、あえて掲示板に書き込まなかったんだな?」


 リムが確信を持って訊ねる。


 「言えるわけないだろ。国家機密かもしれないんだぞ」


 クリスが答えた時。

 ぺちぺち。

 ゴンスケが説明しろ、とクリスの背中を尻尾で叩いた。


 「ぎゃっ」


 「んあ? あー、ゴンスケちゃんは魔法の知識無いのか?」


 「ぎゃうっ!」


 「まー、喋れないし大丈夫か」

 

 そう呟いて、クリスは利き手の人差し指を空中に滑らせる。

 すると、この辺りの地図が出現した。

 透けているので、どうやら立体映像のようなものらしい。


 「民家もでてるな、丁度いい。

 ここが、俺達のいる【白い家】、で、ここが民家、こっちが墓地、んで、ここに民家」

 

 今度は地図にある建物の場所に触れ、触れた場所が淡く光りはじめる。

 クリスは、そうやって数十箇所に光る点を打つ。


 「で、これらを繋げると」


 今度は指を滑らせて、点と点を繋いでいく。

 現れたのは、魔法陣だった。


 「な? 結界の魔法陣になるんだよ。

 それも、俺みたいなのに気づかせないよう、いろいろ細工されてる」


 「ウォルルルっ!」


 初めて見る光景に、ゴンスケは興味津々である。


 「で、この魔法陣、術式なんだが。

 いまだに稼働中なんだわ。

 つまり、掃除されてることを含めて考えると、ここで実験は続いているってことだな」

 

 「そういうことだ。

 で、おっさんのことだから、この魔法陣がどんなものかもう分かってるんだろ?」


 「結界の機能に加えて、ここの式を見るに次元をずらして、異世界を形成するやつだな。

 戦時中は、いろんな国で研究施設を隠すのに使われてたらしいとは聞いた。

 終戦とともに、その記録の大半は処分されたとも」

 

 「そう、そういうことだ。

 で、研究は継続されてる。

 戦時中は、それこそいろんな実験、研究をしていた。

 んじゃ、とりあえずは平和な現代において、ここでされていた研究ってなんだと思う?」


 「…………」


 クリスは答えなかった。

 ゴンスケは、話が全く分からなくて首を傾げている。


 「答えは、そこのドラゴン娘の飼い主だよ。

 いまや、昔で言うところ白痴の人間すらまともに手に入らない。

 人権ってものがあるからな。

 そんな現代の世界で、今から十年くらい前まで、合法的にこの国だととある障碍持ちを集めることが出来た。

 それも、王族の名を隠れ蓑にして。

 まぁ、一部は研究と言う名の悪事がバレて研究材料を手放すことになったけどな。

 奴隷生産、あるいは養殖場、そうそう家畜施設とかなんとか言われていたな。

 おっさん、ここで本当は何の研究が行われているのか、わかるか?


 その研究の完成形、あるいは成功例、それがそのドラゴン娘の飼い主だ」


 リムは、肩車されているゴンスケを見ながら続けた。


 「だから、呼ばれたんだよ。ドラゴン娘の飼い主姉弟(きょうだい)は。

 いや、呼びたかったのは弟のほうだと思うけどな。

 なにしろ、弟の方はいまだ成功していないと表向きにはされている、死者蘇生(命題)の成功例だ。

 資料、もしくは材料としてはピッタリだろ」


 クリスは、そこでようやく合点がいった。


 「なるほど、そういうことか。

 だから、あのクエスト報酬の欄が変だったのか。

 そういうこと、か。

 それで、俺とリムがここにいることにも繋がるのか。

 お前がここにいる理由は、本当はあの人の差し金か?

 言い方はアレだが、一度死んだ人間を、それも本来なら蘇生不可能な状態の存在を生き返らせるなんて芸当、あの人しかできないだろ。

 あの人は、確実に失敗する死者蘇生を成功させることができる存在だからな」


 「正解。

 本来なら、弟の存在は秘匿されていて、表に出てくるのはもう少しあとの予定だった。

 その予定が狂ったんだと。

 どこかで弟の存在を嗅ぎつけられたらしい、そして狙われた。

 あの人は、別の方向で動いてる。

 こんな話、表に出す訳にはいかないからな。

 それに、本来の魔法は現実に弱いからな。

 現実を知れば、魔法は解けるものだ」


 ゴンスケには、話が難しすぎてよくわからない。

 命題とはなんだろう?

 あの人とは誰だ?

 話の流れからするに、テツのことを言っているのはわかる。

 テツには、何かの魔法が掛かっていて、その魔法を解かせないためにこの白髪の青年がここにいるのは、なんとなくわかった。

 でも、本質が見えてこない。

 わからない。

 だから、ゴンスケはまた尻尾でクリスの背をぺちぺちと、叩いた。

 説明してくれるのだろうと、思った。

 しかし、説明はなかった。

 クリスは呟いた。


 「あの人は、残酷だな。それとも優しさかね」


 「さてね、でも、同情はあったと思う。

 いつだって、人に甘く囁いて優しくするのは悪魔だろ。

 神でも、天使でもない。悪魔だ。

 そういうことだろ、たぶん」

 

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