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留置場 22日間の記録  作者: 神尾 旭
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3日目② 平成29年10月13日(金) 犯罪者達の罪状

 掃除を終えて少しすると、地検へ向かう。


 とにかく初めての経験なので、何がどのように行われて、何をされてどのような流れになっているのか自分がどのような状況や立場なのかが全くわからない。

 漠然と私は犯罪者なのだという認識しかない。


 私は、ある東京都下の警察署で逮捕されたのだが、そのある警察署をスタートにして数カ所の署を回り、各地の容疑者を回収して立川地裁へ移送される。

 立川へ着くと、更に他の警察署からも同じように容疑者が、続々と集められてきた。

 どうやら東京都下に散らばる凶悪犯罪者達が、今ここに集結されたようだ。


 身体検査を済ませると、各部屋に振り分けられる。

 自分が呼ばれるのを、硬いベンチ型の木の椅子に座り、何時間も無言で待ち続けなければならない。

 一人ずつ呼ばれ、しばらくすると戻ってきて、他の人が呼ばれる。中には、なかなか戻ってこない人もいる。

 そして、全員が呼ばれて戻ってくるという作業が終わって、やっと留置場に戻る事ができるのだ。


 これがとにかく、待っている時間が長い。余計なことを考えずにはいられないのだ。


 振り分けられた部屋には、最大8人いるのだが、みんながどんな罪でここにいるのかが気にならない人がいるのだろうか。

 私はとてもとても気になってしょうがない。


 あっさりした顔立ちの20代に見える若者。

 顔と照らし合わせて、頭の中で彼の罪を作りあげ、心の中でつぶやく私。


『どんだけオレオレ詐欺で入金させたんだよ!』


 弱々しい、見るからに非力そうな老人。こんな人も何かの罪に問われてここにいるのだ。そして心の中でつぶやく私。


『どんだけスーパーで小倉あんパン盗んだんだよ!』


 一度、ドンキホーテでパンを上着の中にしまいながら外へ出ていく老人を見て以来、老人の犯罪は食料万引きという固定概念が出来上がってしまっていた。


 ポテッとした体型に、いかにもオタク風なメガネの野暮ったい容疑者が部屋にやっと戻ってくると、また心の中でつぶやく私。


『どんだけ児童ポルノ集めまくったんだよ!』


 もちろん実際には、生死に関わるような人が悲しむ被害に遭わせた人もいるかもしれない。

 そんなふざけた想像をしていたのは、私の体調が最悪だったのもあった。


 逮捕される前から、私のお尻には20個ほどのデキモノができていて、触れるだけでも痛いのはもちろん、触れていなくても激しい痛みに襲われていた。

 逮捕されていた時に全裸だったのは、薬を塗ろうと思いつつ寝てしまった状態だったのだ。


 この硬く冷たい木の椅子は、尻を容赦なく襲い、悪化させ激痛を味あわせる懺悔の道具のような代物。

 私がこの痛みから逃れるには、くだらない事を一日中考え紛らわす方法しかなかった。


 こうして見た目だけで判断された罪状が、私の中で一人一人決まっていくのであった。

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