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留置場 22日間の記録  作者: 神尾 旭
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2日目② 平成29年10月12日(木) 新入り

 二日目にして隣の部屋に新入りが入ってきた。ここの先輩として、私は早くも威厳を出さなければならなくなったようだ。

 しかし、新入りは結構若いようなのだが、肝が座っているのか、すぐに私以上の大物っぷりを発揮した。

 彼は部屋に入れられるなり、すぐさま大きなイビキで寝始めたのだ。本当にすぐさまだ。

 こっちは寝るまでにどれほどの時間を費やした事か。


 だが、そんな私は、寝不足な状態であるはずなのに、緊張や不安で神経が休まらないのか、全く眠くはなかった。


 そして昼食。

 昼はパンと決まっているようで、8枚スライスの厚さのパンが4枚と、パンに塗るマーガリンとチョコとみかんジャム。ブリックパックのジュース、とても小さなプラパックに茹でたマカロニ数本と一粒の謎の揚げ物。


 もう丸一日以上何も口にしていなかった。

 ここの最高年齢であろう担当さんは、「少しずつでも食べなよ、食べないとぶっ倒れちまうぞ。こうなったのは仕方ないんだから。ミミ取り除いて中だけ食べてもいいし」と、食事を取らない私に言ってくれた。

 パンのミミが嫌いな子として扱われてしまった私は、何故かそれまで反抗していた気持ちがすっと心から消え、食事をするようになった。


 ほんと、こうなったのも自業自得だし、仕方ない事。

 食べないからって、どうにかなる訳でもないし、悩んだり不安になる事と食事は別物なのだ。


 夕食も食べたが、何故かご飯が毎回冷えきってるのが気になる。

 そしておかずにならないおかず。いわゆる副菜でこんもり盛られたご飯を食べるのは、大昔の人が、濃い味付けの少ないお新香で食事をしてた頃の時代で止まっているのでは、と考えさせられた。


 就寝前、私が歯を磨いていると、担当さんから大物新入りに注意が入った。

 イビキがかなり大きいから、寝ている時にあまりにうるさかったら起こすから、と言われていた。

 歯を磨き終えた私は、顔を洗いながら『そんなのしょうがないじゃん笑』と、頭の中でつぶやいていた。


 21:00、就寝の時間が来ると、すぐさまイビキが周囲に鳴り響く。

 留置場は防犯の為なのか、小さな音でも壁に跳ね返って遠くまで届くような構造になっている。

 消灯して薄暗くなった留置場内に響き渡るイビキの方へ、担当さんの足音が向かう。そして番号で呼ばれ起こされた新入りは目が覚め、イビキが止まる。


 担当さんは、イビキの監視も大切な仕事の一つなのだった。

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