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留置場 22日間の記録  作者: 神尾 旭
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8日目② 平成29年10月18日(水)心の闇

 この日から、毎日のみすぼらしい料理に興味を持ち、出されたメニューを書き始めている。


 ちなみに本日のメニュー


朝食

 蒸したチキン

 白ごま数粒

 のりたま

 インゲン


昼食

 いちご

 チョコ

 ピーナッツ

 ウインナー1本

 カレー味パスタ

 グリーンピース


夕食

 餃子

 シャケ

 ほうれん草

 シーチキンの和え物

 肉じゃが(肉抜き)


 朝食の白ごま数粒は、掛けるふりかけを間違え、途中で気づいたことによると思われる。

 昼食は、文字だけだと豪華に見えるが、必ず昼は8枚切りの食パンの4枚分が出される。

 マーガリン+甘い系ジャム2種類が配られて、とても小さなプラスチック容器に一口分なにかが入っているだけ。

 今回はウインナーの下に、油を吸わせるようにあるようなパスタが敷いてあった。

 マーガリンと飲み物が書かれていないので、いちごは、パックのいちごミルクだったかもしれない。

 夕食の『肉じゃが(肉抜き)』と書いてるのは、不満の現れだろう。



 私が寝泊まりしている留置場の部屋を閉じ込める檻の部分は、真ん中の部分が目隠しするようにプラスチックで覆われていて、さらに細かい網目状のフェンスで覆われていた。


 ふと、檻の裏側に目をやると、黒い塊がコロコロと転がっていた。

 よく見ると、それは髪の毛を丸めた物だった。その数27個。

 掃除機でも吸い出せない、指でも取ることが出来ない。そんな場所に今までここへ留置された人々が、怨念というか闇というか、時間を持て余して抜けた毛を集め、塊にして、自分の生きた証をここに残していったのだ。

 ただ単に気持ち悪い。


 午後、前日に出した洗濯物が、業者からふかふかの柔軟剤の匂いに包まれて戻ってきた。

 百均で売ってるようなゴザの上に置かれたネットの中身を確認して、その場でネットを開けて服を畳み持っていく。

 私はこの時に毎回、『伊藤家の食卓』で覚えた早業で洋服を畳む方法を、誰も求めていないのに披露して、華麗に素早くキレイに仕舞っていた。が、誰もがスルーするのだった。


 お尻の炎症に塗る薬の為に、ガーゼの代わりとして、大人用オムツがあるからどうかと言ってくれた。


 毎日鏡もない状態でお尻に薬を塗るのに時間を掛け、その位置にガーゼをテープで止めなければならない。しかもその間は、ずっとお尻を…いや、その様子を監視されている。

 断然オムツの方が楽だし、いい考えと思い、明日から採用させていただくことにした。



 再び取り調べに呼ばれた。

 午前の取り調べの内容が書かれた調書をプリントされ、確認して終わった。


 取り調べから戻ると、すぐ弁護人が面会に来た。覚せい剤で5回逮捕された人の裁判の帰りだという。

 取り調べで聞かれた内容を伝えると、どうやらハッパ掛けられているのではと感じているみたいだ。

 明日の夜、また面会に来てくれると言ってくれた。


 この女性弁護人とは、この後も色々と私の過去の話をするようになる。

 心理カウンセラーの資格を取ったばかりだそうで、どうりで気持ちや感情の例えを物などに例えて表現するのが上手だなと感じていた。


 今まで人前で泣いたことがほとんどない私が、彼女の前で過去を思い出し、何度も泣かされることになる。

 この日の日記の最後にも、『いつも泣かされそう』と書かれている。

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