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留置場 22日間の記録  作者: 神尾 旭
17/20

7日目① 平成29年10月17日(火)矛盾点を突け

 朝食は目玉焼き。目玉焼きのみで、ご飯を食べなければならない。

 この目玉焼きは何でできているのか不気味な代物で、白身に醤油をかけるとあら不思議、醤油が白身の中にスーッと吸収されていった。食感もなんだか不思議だし。

 何を食わされているんだ私達は。怖い。


 午前10:00

 ちょうど一週間前の今頃、家で逮捕された。

 その時の出来事が次々と蘇えってくる。


 全裸で寝ている私を、数人の警察が囲みながら見ている事。

 強盗に入られたようなゴミ部屋の中から、一生懸命証拠品を探す警察の姿。

 かかりつけの病院へ行った数日後に、手錠をはめて再び登場した事。


 どれを取っても思い出しただけで恥ずかしい。思わず全身から変な汗がブワッと吹き出してくる。


 まだ、ここにいなければならない半分の日数も消化していない。

 手元に何もなく、何もやる事がなく、何も見るものもないという事が、こんなに苦痛で、とてつもなく時間の流れを遅くするんだと、ここに来れば誰もが感じ出すのではないだろうか。




 昨日告げられた通り、取り調べに呼ばれる。

 しかし、売人の事を聞くためではなく、今までの流れを最初から説明させられる。

 刑事さんが言うには、最初に供述した内容の詳細を聞き、肉付けをする作業だそうな。


 そんな中、いつも私を取り調べをしている、30代になったばかりの女性刑事さんに、質問をしてみた。

「今回自分を逮捕しにきた皆さんって、結構覚せい剤の事件は扱ってるんですか?」


 すると帰ってきた答えは

「私達は覚せい剤をメインに仕事をしているんですよ?」


 あとで考えればそうだよなと思った。

 子供の頃から『日本列島 警察24時』みたいな番組で、見せしめのように散々犯人や捜査の内容を流してるのに、なんという素人目線な質問。取り消したいくらい恥ずかしい。


 なぜ私がこんな質問をしたのかというと、一つ引っかかることがあった。

 私の逮捕状に書かれていた「0.03gを12000円で譲った疑いで…」という部分だ。

 0.03gがどのくらいなのかというと、塩をソフトに摘んだ量がだいたいそのくらい。

 あまりにも少量すぎるし値段も高い。


 私はさらに質問する。

「この覚せい剤の量に、この金額は疑問に感じませんでしたか?」


 すると30代になりたてだが、すでに結婚を諦め始めている女性刑事さんは

「あまり使用したことがない人だったら、納得して買うんじゃないかと思った」

 と答えた。


 それはおかしい。私と友達の関係の長さは既に知っているだろう。しかも他の人とのやりとりで芋づる式に捕まったのなら尚更だ。

 もしかして、ここの部分をほじくれば私は早くここから出られるのではないだろうか。


 だが、やりたい職を諦め、一つくらいは親孝行をと感じて公務員になる道を選んだ、30代になりたての女性刑事さんは、一番最近のLINEのやりとりが私だった事が逮捕の決定的な決め手になったと教えてくれた。はいチュドーン。


 昼食のため一度休憩。

 いつものパンジャムセットに、小さな揚げ物とインゲン数本、ピーチジュース。ボソボソのなんのこだわりも感じられない、やっつけ仕事的なパン。

 ここの留置場の食事全部に言えるが、犯罪者がいる限り、税金とはいえ食いっぱぐれない提携先と言えるのではないか。


 今日は病院の先生が来て、診察をしてもらえるそうだ。

 一人一人呼ばれるが、診察はすぐ終わる。

 廊下で椅子に座り待っていると、私の順番が来て部屋に案内される。


 お尻に大量にできているデキモノの具合が少しずつ悪化しているので、その状態を診てもらった。

 胸を出し、聴診器で音を聞き、お尻を軽く診られる。

 今持っている薬が効かないのと、以前処方されてた効いた薬を告げると、その薬を出しておくいう、さらりとした内容だった。

 この"内科"の先生も食いっぱぐれないと思った。

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