完全に豚化してしまった女子大生達⑦最後の集合画像、動画
玄関を開けて、家に入る。
服と下着を脱いで洗濯機へ入れる。
ふすまをあけて大広間へ行くと、
そこには、3匹の醜い豚が四つん這いでお菓子をムシャムシャと食べながら笑みを浮かべていた。
これが可愛い豚だったら、
3匹の子豚とか言いたいところなんだけど、
3匹とも、というか3人とも丸々と太ってて目つきも悪い可愛げのない顔をしているため、
醜い豚にしか見えない。
声とか口調とか髪型とかで誰が誰だか判別はできる。
後は、細い目や上向きの突き出た鼻も、
元の顔がベースにはなっているので何となくではあるが判別できるんだけど、
やっぱり4日前までとは全然違うわよねー。
「遅いよ!」
「でも良かった、あんたも醜い豚になっていたのね。私も醜いけど、また、よろしくね。」
「一緒にもっと食べよう!」
目の前にいる3匹のことを醜い豚と称していたが、
かくいう私も、目が細くて鼻が上向いて突き出て鼻の穴が丸見えでデブでという、醜い豚なわけである。
「でも遅くなったおかげで有益な情報をもたらしてくれるわよ。
その情報を聞いたおかげで通販で頼んで明日ここに届くはずだった、
伸縮自在で150キロまで着られる服の受取先を変えなきゃって思えたし。」
私を送ってくれた友人が話す。
「それって、どういうこと?」
「それは、聞いてみてね。ほら、さっきの電車での出来事とか話すんだよ。私は受取先変更の手続きをするから。えー、空き家を受取先にして、そこに置いておいてくださいって貼り紙しておくか・・・・。」
そして3匹の醜い豚の視線が私に集中する。
「どんな情報を知っているの?」
そこで私は、
路上で何となく視線を感じた事、コンビニ店員に鼻をつままれていたこと、
電車で近くの客が嘔吐したり、「臭い」と言って逃げ出したことを話す。
「なるほど、あれはそういうことだったのかしらね。」
「だから、受取先をここから変更したのね。」
「たぶん私達が臭いを感じないんじゃなくて、私達の嗅覚が馬鹿になってるのね。」
私「なになに、勝手に納得しないで、どういうことよ!?」
「そこのダンボールの中にある物の臭いを嗅いでみて。」
言われた通りに、ダンボールに顔をうずめる。
中には、茶色くて黒いかたまりが入っていた。
そう、まるで、うんちのような・・・・。
でも臭いがしない、ということは、何かの食べ物かな。
「臭わないよね。じゃあそれに鼻をくっつけてみて。」
言われた通りにその物体を手に取り、鼻にくっつけるが、ほんの微かに臭うかどうかぐらいである。
私「ねー、どうすればいいのよ?」
意味が分からなかったので私は3人に尋ねることにした。
「驚かないで聞いてね。」
私「うんうん。」
「そのダンボールに入っているのって、私達が排泄したうんちなのよ。
食っちゃ寝の豚の生活をしているとさ、トイレに行くのもめんどくさくなってきちゃって、
でも1か所にまとめないと汚いと思うから、そのダンボールにまとめて、
後でまとめて便器で流そうと思っていたんだけど、
でも不思議なことに臭くないのよね。」
私「なんだって!おい、ふざけるなよ! 私にあんたたちのうんこを嗅がせたの!
しかも、鼻に付着させるなんてひどいよ。」
「でも、全然臭くないでしょ。」
「私達もここでうんちをして臭わないからずっと謎だったんだけど、さっきの話を聞いて納得したわ。」
「おそらく私達は豚になることで嗅覚が凄く鈍くなったのよ。」
私「嗅覚が鈍くなったって・・・それじゃあ本当はこのうんちは凄く臭いし、
また、私達の体臭も凄く臭いってことなの?」
「たぶん、そういうことだと思うわ。」
「うちの実家って養豚場が近くにあるから分かるんだけど、人間だった時に、あ、今も一応人間だけど。
車で養豚場の近くを通っただけでも凄く臭かったのよ。それこそ吐き気をもよおすレベルだったわ。」
「でも、当然その中にいる豚達はその臭さのことを何とも思わないというか、慣れるだけの嗅覚の順応性はあるわけよね。だから今の私達もそういうことだと思うの。」
私「そういうことなのか。」
「おそらくね、だからさっき私は通販の受取場所も変えたってわけ。宅配便の人がここに届けに来たら、
あまりの家の臭さに通報しちゃうかもしれないからね。」
「うんちが臭わない理由が分かったら、安心したわ。さぁさ皆で食べましょう!」
そして私を含めて5匹の醜い豚女達は、前方に広がるお菓子や食品にむさぼりついた。
皆、本当に醜い顔で食べている。
4日前まで、そこそこ可愛い女子大生5人組だったころの面影はなく、
今では豚みたいな顔と体型をした醜いデブス5人組である。
そこで私は思いついた。
私「ねぇねー、せっかくだから集合画像撮らなーい?」
「なんでー?」
私「いや、なんかこの状況を共有したら面白そうだからさー。」
そうしてタイマーをセットして、私達は画像を撮った。
その画像にはもちろんのこと、醜い豚が5匹うつっていた。
四つん這いで服も着ていないので、豚と遜色ないレベルである。
私「何か、動画も撮りたいなー。皆、そのまんまでいいから息を大きく吸い込んで。」
そうして動画撮影のボタンを押して、私達は息を吸い始めた。
「フゴッフゴッフゴッフゴッフゴッフゴッフゴッフゴーーーーーーー」
動画にはけたたましい豚鼻を鳴らす、醜い豚が5匹うつっていた。
「あはは、本当に私達って豚なのね。」
「そうね、でも養豚場の豚が、こんな民家の一室にいる光景はシュールね。」
そんな風に楽しんでいると、
予約していた時間になり、テレビが映る。
【緊急特番!! 人間を豚に代えてしまうウイルスの全貌】
私達はお菓子を食べながら、テレビを見つめていた。