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籠の鳥の王女は恋をする  作者: 新道 梨果子


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第二章 3.第五王子と第四王女

 絵を描いている最中に、第五王子がやってくることもしばしばだった。

 もうすぐ嫁いでしまう妹と、少しでも長く過ごしたかったのかもしれないし、自分自身も堅苦しい執務室を抜け出したかったのかもしれない。

 二人での会話は弾むようで、王女の表情はとても和やかだ。ころころとよく笑う。

 手を動かしながら、思わず言った。


「仲がよろしいんですね」


 ふいに湧いた声に驚いたのか、二人は同時に口を止め、こちらに振り向いた。


「あ、申し訳ありません、不躾なことを」


 たじろいで、頭を下げる。

 王子の方が、いやいや、と手を振った。


「そうだね、私たちは王族の中では仲が良い方かな。第一王子と第二王子はあからさまに仲が悪いしね」


 そう言って、いたずらっ子のようににやりと笑う。隣の王女が、お兄さまったら、と咎めたが、強く止める気はないらしい。


「母は違うけれど、私とエイラは年が近いからかな、割と仲が良い方だよ。母親が違ったり同じだったりするけれど、皆父上の血を受け継いだ兄弟だから仲良くすればいいのだろうが、こればかりは人の感情だから」


 そう言って肩をすくめる。


「こんな風に仲がいいのは、珍しい?」


 真顔でそう言うから、嫌味とか皮肉とかそういう類ではなく、本気で一般的な兄弟のことを訊いているのだろう。


「どうでしょうか。ただ、うちはこんな風ではないですね。仲はいいですが、毒づいたり喧嘩したりすることがしょっちゅうです」


 苦笑しながらそう言う。故郷の妹が思い出される。そんな風に喧嘩ばかりだったが、私が王城に出るときには、涙を浮かべ、それを隠そうとしていた。


「そうか、やはり普通とは違うのかもしれないね。今は考えられないけれど、昔は兄妹で結婚なんて普通にあった一族だしね」

「ああ……」


 それは、王の系図を見れば一目瞭然だ。血の尊さを求めた結果なのだろう。今では兄妹での婚姻などはないが、従兄妹くらいならば婚姻は普通に見受けられる。


「まあ、当時はそれが普通だったんだろう。私たちはその血をひいているし、王城にずっといるから、なにがしかおかしいのかもしれないな」

「そんなことは」

「アレスお兄さま」


 そこで、王女が口を出してきた。


「そろそろお口が過ぎてきていてよ」


 珍しく厳しい表情で、王子を睨んでいる。


「ああ、そうだな」


 言われて王子は肩をすくめる。


「アイトンの前だと安心してしまうのかな。つい喋りすぎてしまった」

「そのお気持ちは分かりますわ、お兄さま」

「おや、そうなのか。ずいぶん信頼されたのだな、アイトンは」


 そう笑顔で言われて、光栄です、と頭を下げる。

 どうだろう。確かに最初の頃よりは、かなり打ち解けてきているとは思う。

 けれど、王子といるときの王女の表情は、私といるときには決して見せない穏やかで美しい表情で、王子がいると私の筆は進む。


「邪魔したね。ではまた」


 王子がそう言って立ち去ったあと王女の顔を見ると、やはりどこかぎこちなくて、心の中でそっとため息を漏らした。

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