発見できず
翌日となり、探索が開始された。
この日の朝、探索範囲の分業化に剣術士と467のPTが参加する事が掲示板で話され、未探索部分は北東部と南東部がわずかばかりとなった。
南東部は剣術士達と467が探索中なので、良治達と大剣術士達は北東部へと向かうのだが、そこでも絵が発見される。
額縁に納められた状態なのは他の2枚と同じ。
柱の一本に何気に設置された絵に描かれていたのは、良治や須藤が扱うタイプの風牙。
「魔法を描いてどうしたいんだ?」
「もしかして、キーアイテムとかじゃないっすか?」
そう言ったのは須藤であった。
洋子が同意するかのように頷いてみせる。
良治は今一つ分かっていない様子を見せると、須藤が話しだす。
「次のステージに進むとか、話を進める為のアイテムって事っすよ。鍵だけじゃなくて、青いリボンや置物だったり……まぁ、色々っすね」
「……そういえば、昔……」
思い出したように良治がつぶやく。
彼が小学生時代にやったゲームの中に、あるアイテムを取っておかないとラスボスで詰むというものがあったのだが、良治と友人達はその事を知らないまま、何とかなるはずだとコンテニューを繰り返した事がある。
結局は諦めたのだが、その数日後に攻略方法を知ると、再度集まって挑戦しクリアを果たしたのは懐かしい記憶だ。
しかし、その後発覚した裏技にステージセレクト等と言うものが有るのを知り、悔しい思いをしたのだが……。
そんな話を良治が言うと、洋子と須藤が驚いたかのように目を大きく見開いた。
「係長がゲームの話を!?」
「やった事があるんすか!?」
「……俺を何だと思っているんだ」
そこまで驚かなくてもいいだろう。と良治は思う。
子供時代は家庭用ゲーム機で遊ぶだけではなく、ゲームセンターにも行ったのだ。
(……ん? 洋子さんに話した事がなかった?)
ふとした疑問が頭に浮かぶが、そう言えば無かったと思い出す。
その洋子と言えば、もっと聞きたそうにしていて子犬か子猫のように見えた。
(そんなに面白い話でもないだろうに……まぁ、洋子さんらしいが)
自分の昔話を聞きたそうにしている洋子を見つめ思う。
悪い気はしないのだが、何故嬉しそうなのか分からなくて戸惑いもした。
そういえば、前にレトロゲームがどうこう言っていたなぁー…。
そんな事まで思い出した。
(……もしかして持ってるか?)
自分の記憶に強く残っている1本のゲーム。
もしあるなら、ちょっとやってみたい気もする。
そんな気持ちが湧いてきた時、邪魔をするモンスター達が現れた。
良治が剣を抜くと、苛立ったように洋子が氷結を放つ。
標的は無論ラミア。
何かをさせようという気なぞ一切ない。
ラミアを凍らせた後は、すぐにバジリスク討伐を開始し、それが終わるとラミアを女2人で処分。管理者でなくても、哀れに思える光景であった。
良治は湧き出した気持ちを静め、柱にあった絵を入手してから探索を続行することにした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
さらに探索を続けていくのだが新しい発見が無く、昼食前に一休みいれる。
さっそく迷宮スマホを取り出し掲示板を見た所、南東部を探索していた剣術士達が全く違う絵を見つけたらしい。
「今度は、水弾か……」
掲示板に書かれた情報ではそうらしい。
実際に見てみなければ分からないが、書き込まれた通りだろう。
それも後で入手しておきたいものだと考えていると、467の方から『土+』の入手情報が舞い込んできた。
「おっ!?」
やっぱりあったか。
良治がそう思うと同時に、大剣術士が書き込んだ。
11階から、属性付与系の魔法がボス部屋以外で入手できていたのだから、この階で『土+』が入手できる事は予想されて当然。現実の予想スレでも話されている。
この土+を467が取得したところ、金剛鎧というものと、木人形という魔法を得られたらしい。
金剛鎧は身体の防御力と、火や氷のブレス攻撃からも守ってくれるようなイメージらしいが、効果は微々たるものとの話。『名前負けじゃないか?』と、467が書き込んだ。
木人形の方は、木で出来た2mサイズの人形が出現し手助けをしてくれるらしいのだが、今現在分かっている情報はそこまでのようだ。
宝があった場所について聞いてみると、南東部の北の方にあるという。
まだ北東部の探索が終わっていないので、取りに行くのは探索が済んでからとなるだろう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――おかしい。
15階探索を進めていた面々が、そう思った。
洋子が代表として3PTの面々とあい、探索済みの地図を複写してみると、すでに15階の地図が完成していることが分かった。
それは良いのだが……
「階段がない?」
「この地図だとそうなります」
「誰か見逃したとかじゃないっすか?」
「あるいは隠されているとかじゃない?」
「他の人達はなんて?」
「たぶん、絵に関係しているんじゃないかとは言っていました。私も同感です」
「……やっぱりキーアイテムだったんすかね?」
「須藤君の読み通りって事?」
「キーアイテムだとしたら、どこで使うんだ?」
良治がそう言うなり、3人が考える。
今までそれらしい場所を見たことが無い。
それぞれの絵があった場所ですら違和感があり過ぎた。
そこに戻す? と言う事も考えたが、それではキーアイテムでも何でもない気がする。
「とりあえず、土+と、最後の絵を取りに行くか」
「ですね!」
「洋子さん嬉しそうすね……」
「そりゃ、そうでしょ。新しい魔法を得られるんだし」
「それは、俺達もなんだが……」
良治が言う通り『土+』の魔法は他の3人も得られる。
しかし、この属性付与効果を行いパワー+スラッシュを試したが、追加効果については不明だった。
衝撃波の色が赤茶に変わるらしいが、それだけしか確認出来ていないとの事。
まさか色が変わっただけと言う事はあるまいが、管理者の事を考えれば不安を感じずにいられなかった。