予想スレ
467に驚かされた後、迷宮探索へと戻った。
14階のモンスター達は、建築物の影や、頭上から音もたてずに襲ってくる。
注意しながら歩いてはいるが、先制攻撃を受けやすい。
苛立つ気持ちを抑えながら探索を進めていくと、宝箱を4つ見つけた。
「「「「おおぉ!?」」」」
まさかの4つ。
普通の宝箱より1サイズ大きい。
それだけで嬉しい声を上げてしまうのは、これ1つで20万になるからだろう。
――ただし。
(もう、ガチャはやらないけどな)
すでに良治以外の3人が蘇生魔法を習得済みであるし、掲示板で自重する事も言ってある。
洋子には悪いが、後々になって騒動の種になるのは御免こうむるといった気持ちなのだろう。
宝箱だけは回収し、売るつもりであるが。
「全部。毒蛇ですね」
「同じ階だと罠も一緒になる?」
香織が顔を少し傾けさせながら、宝箱に近づいた。
足を止め宝箱に両手を伸ば……いや、そこで動きを止めてしまう。
「……これ、中身って羊皮紙じゃないわよね?」
「でしょうね」
「人数分あるってことは、防具じゃないっすか?」
「ん? いや、前に防具を手に入れた時は、俺と洋子さんのが一緒に入っていたぞ」
「え?」
「えっ、てなんだ?」
良治の声に、須藤が疑問の声をあげた。
香織も振り向いて、自分の記憶を確認するかのように、額をトントンと叩いている。
「私と須藤君の時は違ったわよね?」
「そうっすよね? こんな感じで2人分あったっすよ?」
「どういうことだ?」
何故、自分の時と、須藤達の時は違うのだろう?
迷宮そのものが違うと、細かい所が違うのだろうか?
そんな事が頭に思い浮かぶが、洋子が推測を口にした。
「宝箱に入りきらないからでは? 武器の宝箱も2つにわけられていましたよね」
「限界サイズがあるって事か?」
「だと思いますが、本当にそうなのかは分かりませんよ」
そういう洋子であったが、口にした推測に自信がある様子。
可能性が高いなと良治は考えた。
「とりあえず開けない?」
「そうだな」
喉を小さく鳴らした。
もし防具だとしたら、今度は何だろう?
期待で胸を膨らませたとき、洋子がツンツンと良治の腕を突いた。
「香織さん1人に任せる気ですか?」
「「あっ!」」
言われるなり男2人が動き、宝箱を転がし始める。
中身は予想どおり防具だったようで、若干重い。
サイズで言えば、武器が入っていたものより1サイズほど小さい。
ガランゴロンという物音をたて転がされると、中に入っていた防具と毒蛇が数匹でてきた。
毒蛇達にとってみれば、住処を奪われたような気分だったと思える。
入手出来た防具は、鋼で出来た胸当てセット。
膝当てもしっかりと入っていた。
これが3セット分あり、そのうちの1つは女性用。
香織用だろうと考え渡す。
その3人とは別に、洋子の分も当然あった。
以前装備していたのは、黒いローブであったが、今回は紫の魔導士のローブというもの。
若干、足元が短くなっているようで動きやすそうであるが、良治にとってみれば目の毒である。
(……ほんと勘弁してくれ)
自覚してしまったせいか、以前よりも気になる様子。
そんな事を内心で呟きながら、自分の胸当てに手を置いた。
「重さは変わらない気がするが……須藤君はどうだ?」
「大丈夫っすね」
「動きが鈍らなくて助かるわ」
「ここにきて、また、蹴りを頻繁に使い始めたっすよね」
「11階や12階の敵を蹴っても、しょうがないでしょ」
「……アラクネはもっと蹴っていいですよ」
ボソっと最後に呟いたのは洋子であった。
少し黒い靄みたいのが見えたが幻覚だろう。
そんな面々が昼前あたりまで探索を続けると、残り3割ほどといった感じとなった。何事も無ければ今日中に探索を終える事が出来そうだ。
(14階は、色々あったな)
迷宮の面積は広がっているようだが、ガチャでの蘇生魔法や新たな防具。
それに風+を入手する事によって洋子が魔法を2つ入手できた。
宝箱も拾っておいて損が無かった事も分かり、結果的に考えれば良い事が多かった気がする。
――アラクネだけは、別の意味で困ったが。
(15階はどうだろう? 予想スレだっけ? あれを見たら何かわかるか? ……まぁ、明日から週末だし見てみるのもいいか)
そんな気持ちが湧きだすと、良治の口元が自然と綻んだ。
週末という事は、また温水プール。
であれば……
そう考えた時、洋子を横目で見た。
「?」
「……」
洋子が、視線に気づき顔を傾けた。
良治は、悟られないように、口元を引き締める。
ほんの少しだけ見た洋子に、彼女の水着姿を投影したが為だろう。
気恥ずかしさを覚えてしまった良治は、退社時間が来るまで気を引き締める事にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
自宅に戻りテレビを見てみると、やはり迷宮関連の話が流れている。
昨日に続いてガチャ関連の話がネタにされているようだ。
(またこれか。メシでも買ってくるか)
しばらくニュース番組を眺めていたが、着替えてから近所のコンビニへと向かった。
アパートからコンビニに向かう道が、少し薄暗い。
設置された街灯が点灯していないが、帰る頃には灯りが付いているだろう。
緩やかな坂道を降りていくと、遠くにコンビニの光が見えた。
店内に入り、弁当コーナーへと進む。
カレー弁当を見るなり手を伸ばしたのは、迷宮内で食べる事が出来ないからだ。
ついでに、良治の手が肉じゃがにも伸びたのは、大好物の一品だから。
弁当を食べ終えたら、それをツマミにし、ビールでも飲もうという気なのだろう。
買い物を済ませて帰宅。
レンジで温められた弁当を食べてから茶を入れた。
ほっとした息を吐きだした後、テレビをつけて見るが、気になるようなニュースは無かった。
迷宮関連の事は知っているものばかりだし、いない間に起きた事件の類は、あまり流れていない。
野球の時間まで時間も少しあるし……
(意見対立の報告書でも作っておくか)
会社の方から来てくれとは言われていないが、気にしていたようだし報告はしておこう。
そう考えた良治がノーパソを開き、嫌な事を思い出しながらキーボードを叩き始めた。
報告書を書き終えたは良いが、まだ野球の時間までは時間が残った。
さて、どうしたものかと、肉じゃがをツマミにし、缶ビールを飲んでいると予想スレの事を思い出す。
何か分かるかもしれないと、覗いてみると、こんな事が書き込まれていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
俺達の予想は神の上を行く! ベーシックダンジョン(仮)予想スレ part54
1 名前 名無しの予想人
このスレは神を名乗るものが作ったベーシックダンジョン(仮)というゲームの先々を予想するスレです。
今までの情報から先々を予想して、ピーな神を悔しがらせてやろうぜ!
……
……
……
276 名前 名無しの予想人
15階は、出現モンスターがまた蜘蛛系だと思うな。
277 名前 名無しの予想人
系統別にしていないのは、11階と12階で分かっただろ。
追加要素も、迷宮スマホじゃなくて施設のほうだったしさ。
278 名前 名無しの予想人
それよりピーな神が、何でこんな事をしているのか予想しないか?
大分前に論議されてから止まったままだぞ。
279 名前 名無しの予想人
それはもう出尽くしたんだよ。
映画や漫画からネタを拾ってきて話もされていたけど、どれもこれも確定できる情報不足って事で終わった。
280 名前 名無しの予想人
だいたい会社員を拉致ってどうすんだよ。
無職の人間の方がいいだろ。
281 名前 名無しの予想人
なんでだよ?
282 名前 名無しの予想人
俺が無職だから。
ダンジョンゲームをやって金もらえるとか最高じゃね?
283 名前 名無しの予想人
自分が参加したいだけじゃねぇか!
予想しろよ!w
284 名前 名無しの予想人
>>283
じゃあ、ご立派な予想を立ててみろよw
285 名前 名無しの予想人
んじゃ、思いつきな。
神の視点から見たら、俺達なんかゲーム上のキャラみたいなもの。
自分達が作った箱庭に、勝手に増える自立型AIを搭載したキャラを配置して、色々干渉して楽しんでいたっていうイメージ。
そんなシュミレーションゲームがあったけど知らないか?
今になって大体的に干渉してきたのは、つまらなくなったからとか?
プレイヤーが会社員なのは、その方が世の中混乱するから面白そうとかじゃないか?
話を聞けば、嫌がらせが好きそうな奴だしさ。
289 名前 名無しの予想人
つまり、この世界は神様が作った仮想世界みたいなもので、今までも知らずに嫌がらせを受けていたと……なるほど!
俺がモテないのも嫌がらせだったのか!
290 名前 名無しの予想人
そうか! 俺が無職なのも嫌がらせなんだな!
291 名前 名無しの予想人
FXで失敗したのも嫌がらせか!
俺の4百万を返せ!
292 名前 名無しの予想人
>>289-291
それは自業自得というものだ!
293 名前 名無しの予想人
というか、その予想ってかなり前に出たような気がするな。
294 名前 名無しの予想人
無限ループに突入かな?