掲示板の違和感
雑談スレ Part38
586 名前 槍の派遣社員
こっちもようやく6階だけど、リビングアーマーとデュラハンはちょい強めな感じがしたな。
スラッシュも間近じゃないと今一つだし、剣持ってるから結構危ないぞ。
接合部分を狙うと弱い感じがするから、そこが狙い目だろう。
587 名前 Y
そうなんですか?
魔法で援護はしましたが、係長だったら1人で戦えそうな感じがしました。
588 名前 槍の派遣社員
係長もやるな……
出来なくはないと思うけど、1人で相手はしたくねぇな。
ヌンチャク課長なら、平気でやれそうだけどよ。
589 名前 名無しの迷宮人
モンスターも気になるけど、見つかったパワーとかいうスキルも気になる。
休憩所にベッドが設置されたのは、そっちかよ! って思うが。
590 名前 467
PT募集からのベッド環境。
意図的としか思えん。
591 名前 名無しの迷宮人
何か言った? ここってそういう所じゃないわよ。
だから、男って……
592 名前 名無しの迷宮人
それ用意した奴に言ってくれよ。
俺も意図的なように思える。
593 名前 弓術士
考えすぎでは?
それよりもパワーのスキル情報有難うございます。
私達も6階にいったら取りにいってみます。
594 名前 大剣術士
パワーって聞く限りだと貯め技攻撃のようだし、弓術士さんに最適じゃないか?
595 名前 弓術士
全身鎧という事は私の攻撃は通じそうにありませんからね。
パワーを早めに取りに行って、弓矢の威力をあげたいです。
596 名前 大剣術士
援護射撃が通用した方が、やりやすくなるからね。
597 名前 弓術士
頑張ります。
足を引っ張るのは嫌ですから。
598 名前 名無しの迷宮人
……なんだろう、この疎外感。
やっぱり男同士より女の方が良かった。
599 名前 名無しの迷宮人
言うな。
男同士で組んだPTのなんと味気ない事よ。
つか、募集リストにでる人数少なすぎね?
やっぱり掲示板を利用して、予約しないと組みづらいのか?
600 名前 槍の派遣社員
>>599
その事で一つ気になる事があるんだよな。
この掲示板って、本当にテストプレイヤーの全員が見ていると思うか?
601 名前 名無しの迷宮人
どういう意味だ?
何か分かったのか?
602 名前 槍の派遣社員
分かったというか違和感があってよ。
ニュースだと、確認できているだけでも、テストプレイヤーって数十万人いるらしいじゃねぇか。
掲示板はこれだけっていう状態なのに、書き込む人数って少ないと思わないか?
最初はスレの流れが速すぎたし、誰が誰かも分からなかったが、募集が始まってからの流れを見る限りだと、そこまで多いか?
それで、一つ思いだしたんだけどよ、ネトゲでサーバーの負荷を下げるためにプレイヤーを分散させる事があるじゃねぇか。
それと一緒な感じで、俺達も分けられていて、それぞれ別の掲示板を見てるんじゃね? って考えたんだけど、この推測どうよ?
603 名前 名無しの迷宮人
ちょうどいいから、俺も言わせてくれ。
実は、同じ会社のやつが俺達同様、迷宮にいるらしいんだが係長の事を知らないらしい。
604 名前 名無しの迷宮人
はぁ? どういう事だ?
あれだけ、騒ぎになっているのに分からないっておかしくないか?
605 名前 名無しの迷宮人
悪い。言い方がおかしかった。
係長とYさんの事で世間が騒いでいるのは知っている。
だけど、Yさんがブログでまとめている事は知らなかった。
掲示板は何度も読んでいるらしいが、そこで係長やYさんの書き込みを見た事がないっていうんだよな。
606 名前 Y
>>605
意味は分かりますが、それは何時分かったのですか?
607 名前 名無しの迷宮人
つい昨日だよ。
PTを組もうとして電話をしたら、そんな事を言われたんだ。
608 名前 弓術士
まだ6日目ですからね。
土日を挟んでも8日目。
そういう事は、考えていませんでした。
609 名前 短剣術士
まだ始まったばかりという事だよね。
秘匿されているシステムとかありそう。
610 名前 名無しの迷宮人
そういう事こそ業務連絡しろよと言いたい。
611 名前 名無しの迷宮人
そうだよな。テストしてほしいなら、もっと説明しろよと言いたいぜ。
ところで俺と誰か組んでくれない?
こちら棍術士。
612 名前 名無しの迷宮人
ハンマーだが、いいか?
613 名前 棍術士
もちろん。
俺も前衛だけど、後ろから援護してみるよ。
興味あるんだ。
614 名前 名無しの迷宮人
なんだかバランス悪そうな気が……
でも槍とヌンチャクもそうか。
しかもヒーラーなし。
それに比べたらマシなのか?
615 名前 名無しの迷宮人
だが、課長はチャイナ服だ。俺なら癒される。
616 名前 槍の派遣社員
誰にも渡さん! 課長の足は俺のだ!
617 名前 名無しの迷宮人
>>616
お前のせいで、ヌンチャク課長の突破速度遅れたんじゃないのか?
618 名前 名無しの迷宮人
あり得る。
槍の派遣社員の視線が気になって、思う存分戦えないとかな。
619 名前 槍の派遣社員
お前らじゃねぇんだよ! ガン見するか!
……勝手に目が向くだけだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「足…ねぇー…」
洋子は休憩終了間際になり自分の足を見たが、油汚れのついた上下一体の作業服に隠れて素足が見えなかった。
「ここで汚れても現実にもどったら元通りだし、たまには……」
マットレス型ベッドに腰かけながら、自分の部屋にあるタンスの中身を思い出す。買ってから、ほとんど着た事がない、あれやこれやを頭に浮かべていくのだが……
「……やっぱり止めよ。今更な気もするし」
頬をかすかに朱に染めて言うと、そのままベッドへと顔を隠した。
そうした仕草からは、良治に見せていたわざとらしい演技さが感じられない。
――良治と言えば。
「はぁ……掲示板が読めないと暇すぎるぞ……隠れてみたら……でも、せっかく心配してくれたんだしなぁ……」
愚痴をこぼしながら新しく追加されたベッドの上でゴロゴロ転がっていた。
話し合いで決めた休憩時間を堪能はしているが、休憩所にはテレビ等と言ったものが無い為、彼は暇で仕方がないようである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
良治と洋子が発見したパワーというスキルは、30秒ほどの時間を使い、力を貯めるスキルの事だ。
これを今の良治が使い剣を振るうと、全身鎧すら断ち切るという離れ技をみせる事が出来る。ただし、これを使っても宝箱は断ち切れず、ますますもって謎素材となってしまうのだが。
このスキルも含めて6階について報告した後、さらに探索を行ったが、12:00の昼時までには何も見つからなかった。
地図の方で言えば、2人の連携が徐々によくなり、6階の地図も6割を完成するに至った。
残った4割の場所に宝が有るかどうかは不明だが、今日のうちに7階に挑むかどうか判断に迷う所だ。
新たに出現したリビングアーマーとデュラハンと言えば、前衛として戦う良治の活躍が目覚ましく、洋子は内心で舌を巻いている。
(やっぱり1人でも戦えそう……剣と盾の使い方が上手過ぎる……)
すでにデュラハンが倒れている状況なので、洋子は黙って後ろから良治の動きを見ていた。
元々良治の戦闘スタイルは、盾ありきで試行錯誤したものだ。
3階に上るなり盾が壊れ、別種の戦闘スタイルを身に着けたが、盾を使う術を忘れたわけではない。
元々の基本的な戦い方。
そして、盾がない状態で覚えた戦闘スタイル。
その両方が、良治の中で融合したのが今の状態。
理屈で言えば、そういう事なのかもしれないが、当の本人は一切考えていない様子。
盾ありと、盾無しで覚えた実戦経験が、体を勝手に動かしている。
簡単に言えば、そういう事なのだろう。
そうこう考えているうちに、良治がリビングアーマーの剣を強くはじき、隙を狙ってスラッシュを放った。
石床すら破壊する衝撃波は、全身鎧の上下を分散させ金属音をだしながら床へと散らばせた。
「ふぅ。しかし、こいつら中身が空洞なんだな。魔法で動く操り人形か何かなのか? 肉を切るような感触がないから凄くやりやすい」
(……係長、楽しそう。実はバトルマニアだった? ……イメージが違うんだけど)
剣を鞘に納め、やり遂げたような顔をみせる良治に対し、洋子はそうした感想を抱いた。
「洋子さん、地図の方はどう?」
「もう、8割ほどできましたよ。この分なら夕方前には完成すると思います」
「おぉ、早いね! 5階の時より早くない?」
「ええ、早いです。敵は強くなっていますが、遭遇率は若干下がっているし、係長も動けていますから……他の人達も同じく早くなっているんでしょうか?」
「それは無いだろ。俺達の場合、5階で戦っていたのは洋子さんだけだぞ。ホントなんで槍の派遣社員さん達が一番のりじゃなかったのか不思議だ」
「……あぁ、それですか」
良治が気にした点について言えば、昼食時間に覗いた掲示板で判明していた。
話によれば単純に迷っていたらしい。
槍の派遣社員も地図作りをしているが、ヌンチャク課長の事が気になって途中で道の記載を間違えてしまったようだ。
「ヌンチャク課長と槍の派遣社員さんか――上手くやっているだろうか?」
「どうでしょう?」
「掲示板の方では?」
「色々言われていますね。槍の派遣社員さんの書き込みだけなので、色々突っ込まれていました」
「槍の派遣社員さんか……相手の課長さんはチャイナ服の……」
そこまで口に出した時、良治は気付いてしまった。
自分を見る洋子の目が、現場仕事をしている時の様に吊り上がっている事に。
「係長……」
「さぁ、行こうか! また何かあるかもしれないしね! 今までのパターンだと宝箱はもう1個あるはずだ! 頑張ろう!」
前衛である良治が先を歩くことは間違っていない。
間違ってはいないが、別の意味で歩き出している様子であった。