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身勝手な神様

 ――良治の視点。


 みんなに具体的なことを聞かれたが、俺だって困る。

 細かい理屈なんて分かっていないんだから。


 固有スキルを発動したあと、とにかく大量の情報が一気に流れてきた。

 それがベーシックダンジョンに関係している事だと分かるまで少しかかってしまい、最初の話についてはあまりよく覚えていない。たぶん、その後に知った情報と同じく、すでに知っていた事が大半だったと思う。


 18階の屋敷で出迎えるNPC達のことや、遠藤君が魔人との戦闘中に消された理由についても分かったが、両方ともみんなが推測していた通りだった。

 杉田さんの固有スキルが、俺や峯田さんに通用しない理屈について言えば、スキル効果の変動が関係している。峯田さんが言う引き金の部分について問題があったみたいだな。


 たとえば俺のスキル。

 洋子さんへの想いが引き金になっているけど、じゃあ、他の人が同じように彼女のことを想えるかと言えば違うだろう。

 これは峯田さんのスキルでも同じようなことが言えるわけで、こうした気持ちの違いからスキル・リンクの効果が現れなかったようだ。


 それはともかく、俺達にとって大事なのはこれからだ。

 情報の中には20階攻略に関係したこともあって、洋子さんには話してある。

 それを皆にも言わないといけないが、掲示板はもちろん迷宮内でも駄目だ。

 俺が洋子さんに伝えたことについて言えば、もう知られている可能性が高いが、その情報を元にどう戦うのかについてまで教えてやる必要はない。


 だから、洋子さんと一緒に峯田さん達も休憩所に集めることにした。

 情報によれば、休憩所の中だけは、あまり覗く事が無いらしいから。

 どうしてなのかまでは知らないが、今はその情報を信用するしかないだろうな。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ――少年の視点。


 どうやら、ゲーム情報が流出したようだね。

 20階での戦闘についても知られたようだし、ちょっと痛いかな?


 でも、ほとんどは予想どおりだ。

 係長もそうだけど、管理システムの応答も正常なようだし一安心したよ。

 たぶん係長がとった行動を、僕に対する攻撃手段として管理システムが認めたのだろう。僕と彼等の戦いは既に始まっていて、先手を打たれた形になるのかな?


 思う事はあるけど仕方がない。

 なにしろ20階に登場する僕のキャラクターは、固有スキルが()()しないかぎりダメージを受けない。それなのにプレイヤー側が唯一もつ攻撃手段を、キャラクターを通してではなく直接的な方法で邪魔するのは駄目でしょう。

 だから管理システムはああいう応答をしたのだと思う。


 まぁ、いいんじゃない?

 遅かれ早かれ知られた事だしさ。

 前後が逆になっただけの話だよ。

 戦って情報を得るか。

 それとも、戦う前に情報をえるのか。

 それだけの違い。

 先行しているプレイヤー達が掲示板経由で攻略情報を教えているのと一緒だ。


 ……もしかしてネタ晴らしをされたような気分でいるんじゃないかな?

 だとしたら、ちょっと休憩所の中を覗いてみたいけど、あそこは彼等専用のプライベート空間。システムに関係した事以外は、あまり見たくないんだよね。


 彼等が楽しんでくれないと、ゲームのテストプレイをさせている意味がない。

 最初は大変だっただろうけど、今ではかなり違っているはず。

 楽しんでくれていることは“順応値”で確認しているし、僕的には満足がいく数値だ。


 現実と等しい外見であったとしても。

 現実と変わらない痛みがあったとしても。

 彼等は仲間達と共に楽しんできた。

 僕が欲しかったのは、その反応データだ。


 でも、まだ足りない。

 最初に比べれば大分楽しめているようだけど、係長と彼女の影響が多く出ている。あの2人がいなかったら、これだけの数値は出せなかったはずだ。


 彼と彼女がクリアして、いなくなったらどうなるんだろう?

 今までどおり上昇し続ける?

 それとも下降していく?

 もしそうなったら計画の見直しも考えるべき?

 いや、もう遅い。

 出来れば、彼と彼女の協力が欲しいね。


 そういえば彼女の固有スキルの変化は少し面白い。

 迷宮内転移の縮小版とでも言えばいいのか、集団転移ではなく個人転移だった。

 基本的に自分だけのようだけど、手を繋いでいればその相手も転移できるみたいだね。

 魔力もあまり減らないようだし、休憩所に入る必要もないのはメリットだと思うけど、残念なことに迷宮スマホを使わないといけないのは従来どおりだった。


 迷宮スマホが関係している限り、20階では使えない。

 仮に使えたとしても、スキルの使用中は魔法や他のスキルが使えないし、歩く事だって束縛される。もっと早く気が付いていれば、利用価値があったのかもしれないけど、ほんと残念な結果だったよ。


 でもそうなると、何を考えて挑んでくるつもり?

 そりゃ16人という数だと、僕が操るキャラにだって制限がかかる。

 部下達の数だって最低限だし、十分対処可能な範囲だろう。

 それが分かったから本気で勝つために作戦を練るつもりなんだろうけど、だからといって初見で勝てるようなステータスにはしていない。


 情報を得たから勝てると思った?

 その理屈が通るなら、ドラゴンを突破出来ていない人達はどうなるのさ。

 実際に経験するのと、情報を聞いただけではかなり違ってくる。

 それは君達自身が知っているはずだろ?


 それとも情報にはない攻略方法を試すつもりかな?

 自分の固有スキルについても知ったようだし、あり得ない話じゃない。

 掲示板にはアクセスできないけれど、僕のキャラを通せば管理システムだって狙えるはず。18階で僕と接触した時に起きたことを再現するつもりでいるのかな?


 でも、僕がソレを許すと思った?

 いくら君達に楽しんでもらわないと困るからといって、システム介入を再度許すつもりはない。当然対処はさせてもらうさ。


 この計画は、僕の自己満足からはじまったもの。

 気に入らないことがあるから、始めたものだ。

 僕の性格は分かっているよね?

 なにしろピー神なんて呼んでいたくらいだからさ。


 僕は、君達が思うとおり身勝手な神様だ。

 だから、管理システムを掌握するような真似は許さない。

 君達との戦いは、僕自身が操作して戦ってあげる。

 オートモードなんてつまらない真似は君達にはしないから、安心してくれ。


 さて、僕も戦う準備をするとしようか。

 君達が何を考えたのか、楽しませてもらうよ。


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◆現在この作品の書籍版が発売中となっています
web版とは【異なる部分】が幾つかあるので、是非手に取って読んでみて欲しいです。
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