教会にあったもの
以前から気になっていた建物がある。
ジャンプを使い街を上空から見た時、発見できた教会だ。
探索を進ませ、その教会近くまでやってきた良治達が足を踏み入れた時、
「ヘイト・シールド!」
最後尾にいた満が、固有スキルを発動させ逃走を開始。
満が良治達から離れていったのは教会を破壊されるのを避けるため。
火竜と水竜が満の後を追う。
遅れて出現した土竜は良治が受け持ち、場所を移動しはじめる。
空から攻撃をしかけてくる風竜には紹子と美甘が対応。
満を追いかけた火竜と水竜には徹、香織、須藤の3人が立ち向かった。
「土鎧!」
戦場を決め足を止めた良治の体が黄色い光に覆われる。
追いついた洋子が土鎧をかけた光だ。
良治は盾をつけた腕を軽くあげ、親指をつきたてる。
感謝の気持ちを示してから、徹達の方を指さした。
何を言いたいのか分かった洋子が、ニコリと微笑み徹達の支援に向かう。
空にいる風竜が美甘の雷光によってやられた頃、水竜が絶叫をあげ倒れた。
残りは、火竜と土竜。この時点で勝敗が決まる。
満、徹、香織、須藤、洋子の5人で火竜を。
良治、美甘、紹子の3人で土竜を。
先に倒れたのは火竜。
少し遅れて土竜が倒れるが、そこに深緑色の尻尾の先端が出現していた。
「あれ? 係長が尻尾を切ったんすか?」
「そんな余裕があったの?」
あるわけがないと、香織の尋ねに首を横にふって返しながら近づく。
内心で『竜の鱗が何かに使えないだろうか?』と思った事ならあるがと考えつつ、尻尾の先端を手に持ち鑑定虫眼鏡で覗き見た。
――――――――――――――――――
竜の尻尾
属性をもつ竜たちを討伐した証。
これをある場所に持っていくと……
――――――――――――――――――
「最後まで説明文を用意しておけ……」
良治の本心に、まったくだと全員が頷いた。
「ある場所……それは、前に発見した隠し部屋では?」
「徹。また、顔が二ヤついているわよ」
「たまに出ますよね」
「隠す必要ないだろ。徹もアレぐらい素直になったらどうだ?」
満が腕をあげ、その指先を良治へと向けた。
「こういうのが欲しかったんですよ! なんでしょうね!」
「それは分からないが、ある場所というのは、隠し部屋のことだと思うか?」
「分かりませんね。もし、そうだとしたらドロップアイテムが無いと駄目なわけですし……うーん、どうなんでしょ?」
「洋子さんでも判断が……ん?」
視線に気づき徹達を見る。
彼等は、何でもないと手を左右に振っていた。
「(あの2人は分かりやすいな)」
「(徹は、徹なんだし、別にいいと思うけど? 私も洋子さんのようにはなれないし)」
小声で話す彼等の様子は怪しげなもの。
何を話しているのか気にはなったが、笑われているわけではない様子。
発見された竜の尻尾については、すぐに掲示板で報告を済ませた。
いつものように騒ぎが始まるのだが、それをジっと見ている時間ではない。
彼等の目的は、入りかけていた教会。
大きさだけなら大聖堂と言えるほどに巨大な建築物であり、ステンドグラスも嵌められた味わいのある建物だ。尻尾についても気にはなるが、まず先に教会の調査を開始することにした。
入ってすぐの場所に長椅子が並び、奥には少し古びた教壇がある。
中へと入った彼等が少し散らばりながら見て回ると、左と正面の壁に奥へと続く通路を発見。
「係長。また2手に別れ調べてみないか?」
「そうですね。じゃあ、俺達は正面の方を調べてきます」
「分かった。こっちは左の方を見てくる。係長の声は聞こえるようにしておくから、何かあればスキルで知らせてくれ」
「はい。じゃあ、また後で」
話が決まると、徹達と別れ教壇の奥へと進んだ。
良治達が調べに向かった部屋には、4つの長テーブルと椅子が並んでいた。
床下に転がっている瓶や皿等からは生活の匂いが感じられ、集まって食事をする場所のように見える。
さらに奥へと進むと鍋などが置かれた部屋があり、壁には料理で使うような、お玉などもぶら下がっていた。
「厨房か?」
「だと思いますけど、やっぱり他の建築物と違ってしっかりしていますね」
「やっぱり、この建物って何かあるんすよ」
「そうだといいんだが……」
期待はしてみたが、それ以上何もない。
奥へと続くような場所もないし、洋子のMAPスキルで見ても特になかった。
気にはなるが、諦めて入り口へと戻ると、まだ徹達が戻ってきていない。
「何か見つけたのでは?」
「そうだな。ちょっと掲示板を見てみるよ」
洋子の言う通りかもしれないとスキルを使い掲示板を覗いてみたが、それらしい書き込みがない。
自分達の状況を伝える為に書き込みをすると、すぐに『大きな絵画を見つけた。とにかく、こっちに来てくれ。18階に進むには、この絵画を通じていくらしい』という返事がされた。
「……絵画を通じて進む? また絵がキーアイテムということか?」
「ちょっと違う気がしますけど、どうなんでしょ?」
「何でもいいわ。それより早く行かない?」
「そうっすよ。これでようやく18階に進めるっすからね!」
意気込みよく言う須藤の声に後押しされるかのように、良治達も向かいだす。
進んだ先には、柔らかそうな薄紫のソファや埃が溜まった木製机等があり、仕事部屋のように思えた。
(この教会だけ凝った作りにしているのは、18階に進める道があることを示したかったのか?)
そんな事を思いつつ、さらに奥に続く通路を進んでいくと、今度は大きな広間に出る。
床は良く磨かれた大理石になっており、6本の大きな柱が立ち並んでいた。
部屋の奥には徹達がいて、良治達に気付き手を振っている。
その彼等の背後に、問題となる大きな絵画が壁に掛けられていたのだが……。
「……王様?」
「そうみたいですけど……」
「もっと近づかない? 絵の下に何か書いてあるみたいよ」
香織の言う通りだと、徹達へと近づいていく。
彼らが発見した絵画に描かれていたのは、西洋風の城にあるような謁見の間。
黄色で縁取りされた赤いカーペットが道を作っており、甲冑姿の兵や文官たちが左右に並んでいる。中央奥には、玉座に座る王冠をかぶった王の姿が描かれていた。
その絵画の下には金色のプレートがあり……
『18階へはここから進めるよ。ゆっくり休んでくれたまえ。もちろん僕に感謝してね! by 気の利く神様』
そんな言葉が書かれていた。
素晴らしいアマゾンレビューを頂きました。
web版を読んでくださっているかどうか分かりませんが、本当にありがとうございます!
また、誤字報告をくれた方もいまして助かりました!





