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暴走

5章を開始します。


――大剣術士のチャットルーム


467:

聞きたい事があるんだが、周りで変な事って起きていないか?


名無しの支援者:

平日に迷宮に連れて行かれてる。


棍術士:

うちの社長が、新しい麺づくりに挑戦しだしたせいで、朝早くに電話で起こされた。


弓術士:

大剣術士さんがマズイです。何とかして下さい。


467:

あー…変わった事はないようで良かった。


棍術士:

あるわ!

休日出勤とか、うちの会社だと珍しいんだぞ!


弓術士:

ありますよ! 467さんも、大剣術さんと話しあって下さい!


467:

棍術士へ。頑張って稼げ。

弓術士さんへ。あなただけが頼り。


棍術士:

お前は、何が言いたいんだ!


名無しの支援者:

係長達の事も、掲示板の方で何か言っていたよね?

トラブルがどうとか。


467:

あれは、管理者のやつが係長達に何かしでかすんじゃないかと不安だったんだよ。


名無しの支援者:

直接的にという事?

何故、係長達に?


467:

むしろ、何故係長達に何もしないと思うんだ?

宝箱の件の時からゲームバランスを崩すような発見をしているんだ。

そんなプレイヤーが、管理側に目を付けられない訳が無いと思うんだが?


名無しの支援者:

でも、あれってテストプレイなんだから、助かるんじゃない?


467:

だからだよ。

テストプレイで問題を見つけてくれるプレイヤーって大助かりじゃないか。


棍術士:

つまりスカウトしたいって事か?


名無しの支援者:

それなら、係長達だけじゃない?

私達にも聞く理由が分からないんだけど?


467:

そう思うが、一応聞いておこうと思ってな……。


大剣術士:

俺は分かった。何をテストしたいのかという事を。


467:

お? 立ち直ったか?


弓術士:

いえ……逆です。


名無しの支援者:

え?


棍術士:

なにが?


大剣術士:

管理者はゲームバランスをテストしたいんじゃない。

ゲームに使っているシステムをテストしたいんだ。

そのテスト結果から、何をしようとしているのか分からないが進むしかない。


何しろ神だ。

全てを見透かす相手に対して、何が出来るというのだ。

人間なぞ無力に等しい。神の前では、俺達なぞ裸同然。

心を守る鎧も無きに等しいだろう。


分かるか?

抗う術がないのだ。

俺達は手のひらの上で踊る小動物でしかない。

ならば、どうするべきか?

黙って頭を垂らし、命じられるがままに行動するべきなのだろうか?


467:

おい?


棍術士:

やばくないか?


大剣術士:

しかし、だ。

それでは人間とは言えないのではないのか?

神の僕として、ただ黙って行動するのであれば、それはもう自我を放棄しているようなものだろう。そんなのは神話に登場するような天使達にでも任せておけばいい。


俺達は人間という存在。

その存在意義はなんだ?

悩み苦しみ生きながら何を求めている?

他者へ服従し、考える事を止めて命を長らえる事なのか?


否だ。

断じて否だ!


弓術士:

お願いだから、落ち着いて!


名無しの支援者:

語り始めちゃった……。


大剣術士:

武器をとろう!

俺達が作り出してきた世界を守るため、武器を手にし、神に抗う時がきたのだ!

幾多の困難があろうとも、俺達が守らずして誰が守る。


それが例え神との決別を意味しようとも、俺達にとって必要な事なのだ!

子はいつか親を超えるために存在しているのではないのか!


467:

……弓術士さん。

大剣術士のやつ、どうしてこうなった?


弓術士:

だから、マズイって言ったじゃないですか!


467:

こんなの分かるわけ無いでしょうが!


棍術士:

色々言っているけど、結局ゲーム攻略を進めるってだけじゃないか?


名無しの支援者:

もしかして、この状態のまま係長達と明日会うの?


弓術士:

もう今日になるわ。

どうしたらいいのよ……。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 事件発生から48日目。

 土曜は洋子の部屋で。

 日曜はゲームセンターでスポーツを。

 それぞれの場所で、洋子との仲を深めた良治であったが、その気持ちを破壊されるようなショックを受けた。


「躊躇する必要なぞない。俺達の力を神に見せる時がきたのだ!」

「すいません、すいません。本当にすいません」

「「???」」


 今後の話し合いをするつもりで、洋子と一緒に大剣術士や弓術士と16階で合流したが、その時の第一声がこれであった。


 以前はきっちりとした印象が見受けられた大剣術士こと、峯田 徹の様子が一変。

 眼鏡は相変わらずのようだが髪が整っていない。

 力強さを感じる瞳であるが、同時に近寄りがたいものを感じてしまう。

 落ち着き払ったような私服姿は、赤を基調としたものへと変わっていて非常に目立っていた。


 隣にいて、頭を下げまくっている弓術士こと佐伯 紹子からは、強い疲労感を感じるが、その理由を問うまでもないだろう。


「……これは一体?」

「もしかしてスキルを使用中?」


 アルティメットチェンジ。

 それが峯田 徹が得た固有スキルの名称。

 効果は基本能力を増幅するものであるが、副作用として理性の歯止めが消える。

 本人がそう言っていたし、理由はそこにあるのだろうと、良治達は思ったようだが……。


「スキルは使用していないです」

「じゃあ、なんでこんな風になったんですか?」


 こんな風というのは、大剣を手にしながら騒ぐ徹の事だ。

 良治に尋ねられた紹子は、今にも泣きだしそうな顔を見せている。


(これは洋子さんに任せた方が良さそうだな)


 (はた)から見ると、良治が紹子の事を泣かせているような光景。

 事情が分からなければ、洋子が般若の面をつけていたいかもしれない。 

 その洋子が、紹子に近づき何があったのか尋ね始めだした。


(俺は大剣術士さんの方―――へ?)


 徹を何とかしようと彼を見ると、大剣の剣先が17階へと続く階段へと向けられていた。


「何を迷う必要があろうか! いざいかん! 俺に続けぇええ――――!!!」

「ちょっと待てぇえええ―――――――――!!!」

「徹さん!?」


 徹が奇声をあげ、17階へと通じる階段目掛けて疾走する。

 良治達を置き去りにし走り出した彼を、すぐに紹子が追いかけ始めた。


「まずい! 洋子さん、魔法を!」

「え? 私にPKをしろと?」

「なにそれ? また新しい言葉? ――って、それどころじゃなくて、足止め! 氷結かなんかで!」


 良治が言うと同時に、洋子が氷結の魔法を放つが、


「小賢しい!」


 放たれた氷結の魔法効果が広がる前に大剣を一閃。

 その一振りで広がりかけた氷が砕かれ、走り抜けた。


「なんだと!?」

「嘘!? なら、これで!!」


 再度アカシアのスティックを向け、次なる魔法を放つ。


「雷光!」

「それは駄目だろ!?」


 良治が気付いた時は遅かった。

 隣にいる洋子が放った魔法は、折り曲がる光を描き徹へと向かった。

 通常の雷光状態ではあるが、それでも直撃したら……。


「甘い!」


 今度は大剣を地に突き刺し飛びのく。

 その大剣に洋子が放った雷光が吸い込まれるように命中し、床下へと消えていった。

 弓を手にもつ紹子が迫ると、彼女の前で大剣を抜き去り、堂々と胸を張り言い切った。


「いくぞ紹子! ついてこい!」

「こんな時にだけ呼び捨てにしないでよ!」


 問題はそこなのだろうかと思いながら後を追っている良治に、洋子が迷宮スマホを取り出し言う。


「係長。スキルをつかって掲示板で連絡を。17階についたら、須藤君達と合流して、彼を捕まえましょう!」

「分かった。その方が良さそうだな」

「場合によっては力づくで気絶させた方が良いかもしれませんね」

「……まったく面倒な事に」


 この日、良治達は17階へと再度足を進める事になったが、まったく予想していなかった理由からになってしまう。

5章からの変更点を一つ。

アイテムポシェット > アイテムポーチ。


1章から4章については修正しました。

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◆現在この作品の書籍版が発売中となっています
web版とは【異なる部分】が幾つかあるので、是非手に取って読んでみて欲しいです。
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