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遭遇情報

 訓練が続く。

 須藤と香織が固有スキルを使い、トロルやミノタウロスを殲滅。

 続く次の戦闘では、良治がスレッドスキルを使用するという流れだ。

 交代しながらの訓練という形で続けられていくのだが、剣術士達からの報告が夕方近くになっても書き込まれなかった。


(また、駄目だったのか?)


 視界の半分を埋める掲示板を見つめながら、そう思う。

 午前と比べれば慣れたようだが、文面を考えている間に攻撃されてしまうので、書き込める余裕がない。

 香織の方は、スキルの使用に自信がついてきたようで、作りだした分身を相手にハイタッチすらして見せた。

 須藤はと言えば、相も変わらずジャンプ突きにスキルを使用しているが、槍を持つというよりも、担いでいるように見えてしまう。本当にそれで良いのかと不安は残るが、須藤なりに頑張っているのが分かり、誰も口を挟む事はなかった。


 洋子がフォローする形で3人のスキル訓練が続けられ、その日の終わりを迎える事になる。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 先日話された解放条件の事が気になり、自宅へと帰るとテレビをつけた。


『現在17階へと進む事が出来た方々もいるようですが、知られている情報集計による平均階は12階との事。未だ多くの被害者の方々が……』

「……ん?」


 話しの途中で、テレビ画面の横から手が伸びアナウンサーの声が止まると、リモコンを手にしたまま見ていた良治が腰を下ろした。


『……新しい情報が入りました。15階で確認されていた通称ミミックと呼ばれるモンスターについてですが、14階でも見かけた方がいるようです』

「14階?」


『匿名希望者からの情報な為、真偽については確認できませんが、このミミックと呼ばれるモンスターは特殊な道具を所有している事が判明しており……』


(銀色の鍵の事だな。確かに、あれは有った方が良いけど14階って本当か?)


 須藤が持っている鍵の事を思い出し何度か首を頷かせた。

 良治達がいるグループにおいて話された事が無い為、他のグループで起きた出来事だと推測は出来る。


『しかし、この匿名希望者からの情報によりますと、遭遇はできたものの討伐は出来ず敗北してしまったようです』

「あぁ、負けたのか!」


 結果を知るなり、まるで自分の事のように頭を抱えてしまう。

 思えばミミックとの戦闘に良治達も1時間ほどかけている。その間に他の敵までやってくる事もあるのだから簡単に勝つ事は出来ないのだろう。


 だが同時に逃亡されたわけでは無いと言う事も知った。


(洋子さんのブログに俺の考えは書かれていたし、こんな情報をテレビ局に流すプレイヤーなら知っていると思うんだが……)


 どこの誰なのかは知らないが詳しい話を知りたいと思い、追加情報がないかと家にあった残りもので夕飯を済ませる事にした。


 迷宮ニュース関連が落ち着いて来た頃、洋子から電話が入る。

 流れたミミック情報について話しをしている最中、雑談へと切りかわった。

 その雑談を少し楽しんだあと、最後になって、


『今週の土曜日もですか?』

「続きが気になるし、また行ってもいいか?」

『もちろんです』

「そうか。楽しみにしているよ」

『私もです』

「じゃあ、おやすみ」

『はい。おやすみなさい』


 そんな事を話しあってから電話をきった。

 楽しみにしているのはゲームの続きのはず……である。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



――大剣術士が用意したチャットルーム


棍術士:

ミミック情報が出たのは助かるが、ああいうゲームの攻略情報的なものまでニュースで流すか?


467:

今更じゃないか?

宝箱が高く売れる事だって流れたし、プレイヤー達が助かるような情報は、積極的に流す方針にしたんだと思うな。

しかし、14階にも出現するとかいう話は初耳だが、あれって本当だと思うか?


大剣術士:

本当だとしたら何故、俺達は見つけられなかったんだ?


名無しの支援者:

ランダム的なモンスターじゃないんですかね?

15階での発見報告も、そんな感じがしましたよ?


弓術士:

真偽についてもそうですが、せめて係長の推測通りの事をやっていたのか知りたかったですね。


467:

ところで、名無しの支援者さんは、何を武器にしているんだ?


名無しの支援者:

槍なんだけど、槍の派遣社員と同じイメージをされそうなので、こうしています。


大剣術士:

あいつの事が嫌い?


名無しの支援者:

嫌いというより、苦手かな?

迷宮掲示板の方でコテハンを使っていないので、こっちでもそうしようかと思っているんだけど駄目?


大剣術士:

それは良いが、もし係長達の支援が嫌になったら言ってくれ。


名無しの支援者:

それなんですけど、支援って何をする気なんです?


467:

今のところは掲示板問題への対処と、どこかのPTが係長達と合流出来るようにする事か? 今問題になっているのはドラゴン攻略だし、それは迷宮掲示板で話しを進めるべきだと思う。


名無しの支援者:

ドラゴン攻略については分かりますけど、掲示板問題って?


467:

前に現状維持派の連中がいただろ。

ああいう面倒な奴らがでてきたら、俺達でなんとかしようぜって話だ。


棍術士:

今日、誰かが20階に到達すれば全員が解放されるかもって話をしていたが、あれも不味いよな?


467:

それな。

すぐに鎮静化したからよかったけど、また見かけても触れない方が良いと思う。


名無しの支援者:

何故です?

係長達にプレッシャーをかけたくないというのは分かるけど、賛同者を増やすのには良いんじゃないかな?


467:

その賛同ってさ、解放されるっていう思い込みが最初にあるわけよ。

もし違っていたら、そいつらが係長達を逆恨みする可能性もあると思わないか?


名無しの支援者:

そんな人っているもの?


大剣術士:

十分にありえる。

現状維持派の中に、八つ当たり気味な連中がいたのを覚えていないか?


名無しの支援者:

あぁー…。あれは、見ていて関わり合いたくないと思ったなぁ……。

しかし467さんって、向こうじゃ馬鹿っぽいのに、こっちじゃ違うんですね?


467:

馬鹿っぽい!?


大剣術士:

いや、まぁ……

誤解されやすいが、467は馬鹿ではない。

下ネタが好きなだけだ。


467:

それ、フォローになってねぇよな!


弓術士:

そうやってすぐに反応するから誤解されるんですよ……。

大剣術士さんも、土日に励まされた事を忘れたんですか?


大剣術士:

……そうだな。悪かった。

おかげで、大分立ち直れたよ。


467:

そう思うなら、しっかりしてくれよ。

係長達は、後続を待つ方針のようだし、誰かが行かないと先に進まないと思うぞ。


大剣術士:

そうしたいとは思うが、あのボスを攻略するのは難しいぞ。

というか、467もそろそろ16階にチャレンジできるんじゃないか?


467:

出来るが、話しを聞くかぎり実力不足だと思う。

言いたくはないが、情報頼りであがってきた弊害だろうな。

俺より遅れてきた連中も同じじゃないか?

木人形を使えば勝てそうならチャレンジするつもりだったけど、それも駄目ってなったら俺達じゃ無理ゲーだよ。


棍術士:

物理的に破壊されるとは思わなかったぜ……。


名無しの支援者:

凄いボスみたいですよね。

燃やされるかのと思ったら物理攻撃で粉砕されたというのは、びっくりです。


棍術士:

鱗の色が変わるまでは良かったんだが、そっからは本当に別物だな。

動きが遅いから、宝箱を持っていない部分を狙われるとやられる。

あれって、前半のうちにパワー型融合魔法を使って片付けたほうが良いんじゃないか?


467:

サイクロプスの時のようにか?


棍術士:

そう。

変化されたら本当に手が付けられない感じだし、その方が良いと思ったぞ。


名無しの支援者:

それで、倒せるんですかね?


467

分からないが、この話の続きは迷宮掲示板の方でやった方がいいんじゃないか?


棍術士:

それも、そうだな。


大剣術士:

棍術士は元気そうだが、剣術士のやつは平気か?

俺のように落ち込んでいないか?


棍術士:

あいつなら大丈夫だと思うぞ。

大剣術士が落ち込み過ぎなんだよ。

なんで自分の責任だと思うんだ? 背負い込み過ぎだろ。


467:

言ってやるな。それが大剣術士だ。


名無しの支援者:

棍術士さんは、落ち込みませんよね。

ヌンチャク課長と会いたかったんじゃないですか?


棍術士:

……言うなよ。

あいつ、絶対、色々と迫ってんだろ!!

ちくしょううう―――!!!


名無しの支援者:

棍術士さんは、向こうとほとんど変わんないね……。


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