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第五話 召喚魔法の使いかた

「で、タクローの娘さんって名前はなんていうの?」

 私がタクローに尋ねると、彼の娘さんの名前が判明した。


「ナギサと言います。享年十歳でした」

 十歳かぁ〜、さぞかし可愛い盛りだったろうに……


「よしっ、じゃあ私たちでナギサちゃんを助けましょう」

 私がそう言うと、華菜が嬉しそうにしていた。


「咲耶ちゃん、なんだかんだいってタクローさんを助けるのね〜。良い子良い子(いいこいいこ)……」


 そう言うと私の頭を撫で出した。ちょっと恥ずかしい。


「じゃあ、先ずはナギサちゃんの魂を容れる器を決めましょうか。最近のフィギュアは可動式のものもあると聞くし美少女フィギュアで良いと思うんだけど、どうかな?」


 私が言うと、華菜が異を唱える。


「美少女フィギュアなんてアニメっぽい見た目で人間味が無さ過ぎてダメだよ〜。球体関節人形にした方が良いと思うの〜。可愛いし……」


 球体関節人形なんて見た目怖すぎて、それこそ人間味が無いと思うんだけど……と不満を言おうとしていると、


「じゃあ、此処は間をとってダッチワイ――」タクローが別の意見を出そうとし始めたので私がすかさず止める。


「ちょっと! あんた父親でしょう。実の娘の身体を性欲処理の道具にしようとか頭おかしいんですか? ああ、そういえばロリコンでしたね。でも実の父親でも許しませんよ! ナギサちゃんが復活したら私のモノにするんだから……」


「えっ? 咲耶ちゃんってやっぱり変態さん……」

「あああぁっ、違うの華菜。私は華菜一筋だよ」


 華菜にあらぬ誤解を受けそうになり私は必死に弁明する。そんな私を華菜は蔑むように見ている。ああっ、この視線が堪らなく気持ち良い……


 そんな私たちのやりとりを見ていたタクローが感心したように私を見つめる。


「成る程、サクヤさんは僕とは違って本物の(・・・)変態でしたか……」

 ついに此処にいる全員が私のことを変態呼ばわりするようになってしまったのだった。


 さて、ナギサちゃんの身体は少し未来の技術を取り入れて『限りなく人間に近い容姿の等身大可動式美少女フィギュア』にすることで決まった。

 すごく私好みのボディだしタクローも生前の娘に似てると喜んでいるから大丈夫だろう。


 しばらく待っていると、タクローが死ぬ寸前のナギサちゃんの魂を見つけたようだ。


 私は召喚対象を『タクローが見つけた魂』に定めてスキルを使う。


 召喚された魂(目には見えない)を華菜が感覚を頼りに等身大フィギュアに封じ込める。

 すると魂を込められた等身大フィギュアが動き出し、声を出した。


「にゃ〜」


 ……あれ? 失敗した? 華菜のほうを見ると、華菜はふるふると首を横に振った。やっぱり失敗だったのかと思ったら、等身大フィギュアが喋り出した。


「あれ〜? パパがいるニャ。パパぁ〜、今日はバレー部の試合じゃなかったのニャ?」


 えっ? 失敗じゃなかったの? でもなんか変かも……と思ってるとタクローが涙目で喋り出した。


「ナギサ? ナギサなのか? 逢いたかった……」

「えっと、パパ? ここ何処ニャ?」


 親子の感動? の再会のようだ。


「ナギサ、その語尾の『ニャ』ってのはどうしたのか言ってごらん」


 先ほどから気になっていたナギサちゃんの語尾についてタクローが聞いてくれるようだ。


「えっ? わたし『ニャ』なんて言ってないニャ。……あれ? なんかおかしいニャ」


 ナギサちゃんが(ようや)く自分の語尾がおかしいことに気付いたようだ。


「えっと、ナギサはさっきまで(・・・・・)何をしてたのかな?」


 タクローが尋ねるとナギサちゃんは死ぬ直前の出来事を話し出した。

「えっとね、ねこさんがいたのニャ。それで道路に飛び出しちゃったから助けなきゃと思ったら大きいトラックが来て、轢かれると思ったら此処に居たニャ」


 どうやら助けたネコも一緒にフィギュアに()れちゃって、ナギサちゃんとネコが融合してしまったようだ。

 当のナギサちゃん本人はネコと融合したのを割と喜んでいるみたいなので、とりあえずこのままにすることになった。


 せっかくネコと融合してるのならばと、私は等身大フィギュアに猫耳を装着してあげた。

 因みにこのフィギュア、私の好きな魔法少女アニメのヒロインを模した服を着ている。


 ナギサちゃんが魔法を使えるようになれば『ネコ耳魔法少女』が爆誕するのだが……


 私はテレビの外にいるアマネにダメ元で聞いてみた。

「ねぇアマネ、ナギサちゃんには特殊能力って無いの?」


 ――タクローさんの娘さんは転生者じゃないので特殊能力が備わることは無いです


 そうだよね、普通ならそうなるよね。だけどそれじゃあ可哀想――――っと、私は凄いことを思いついてしまった。


 先ほどナギサちゃんの『魂』をフィギュアに移植できたんだから、『魔法という概念』だって移植することも不可能じゃ無いはず! そうと決まれば早速実践あるのみだ。


「華菜、私がこれから概念を召喚するから、それをナギサちゃんの身体に封じ込めて……」


 そう言うと、私は魔法という概念を召喚した。

 華菜が透かさずそれをナギサちゃんに定着させる。これで魔法少女の完成だ。


 しかし魔法少女には使い魔と魔法のアイテム(ステッキ等)が必要だと思い直し、それらを即席で用意した。


魔法のコンパクトには魔法少女に必要不可欠な変身魔法の概念を、

魔法のステッキには攻撃魔法の概念を、

魔法のスマホには召喚魔法の概念を、先程と同様の手段で次々と入れていく。


最後に適当にイメージしたエセ関西弁のネコっぽい使い魔を召喚して全ての作業が完了した。


『ネコ耳魔法少女ナギサちゃん』爆誕である!


「そういえば気になってたんだけど――」

 華菜が何かに気付いたようだ。


「ナギサちゃんが死んだのって、結局私たちが魂を抜いちゃったからなんじゃ無いかなぁ〜」


 ……うわぁあああ、それって私たちが殺したってことじゃん。


 これは気がつかなかったことにしよう。この場にいる全員がそう思ったのだった。

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