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第四話 和解

 いつまでも変態男を殺し続けていると、華菜と二人きりの時間(愛を育む時間)が全然取れなくなるので、私は、変態が死んでいる間にテレビ画面(モニター)越しにオモテの世界にいるアマネに話しかけた。


「ねえアマネ、流石にこの変態男はそっち(オモテの世界)に居ても、こっち(人格控え室)に居ても厄介だと思うんだけど……」


 ――タクローさんですか? 私は特段、彼のことを変態だとは思っていませんが……。もしかして何かされましたか?


 アマネは予想外の見解を述べてきた。


「え? いやいや、こいつ変態でしょう。ロリコンでマゾヒストで透視能力まであって、おまけに考えてることまで分かっちゃうって言うんだから……

 私たち、さっきからずっとこいつが復活するたびに殺し続けてるんだけど――」


 華菜が私の言葉に続けて言う。

「あと〜、最初会った時にパンツ舐めたいって言ってたよ〜」


 そう、これだけ状況が揃っているのだ。こいつが変態じゃないわけがない。


 ――でも、それはタクローさんが言っただけ(・・・・・)で、実際には何かされた訳じゃないですよね。少なくとも今のところはまだ……


 確かにアマネの言うとおり、まだ何もされてはいないし、実際に見られているのかどうかは私たちには分からない。でも、それで納得することはできない。


「でも――」私が反論しようとするとアマネが遮る。


 ――タクローさんは男性。男性が女性を好きなのは極めて普通です。

 ロリコンというのも、より確実な子孫を残したいという生物の本能が若い相手を求めているだけと捉えれば普通だと言えます。

 マゾヒストというのは良く分かりませんが少なくともあなたたちにとっては脅威でもなんでもないと思います。

 下着を舐めるのはさすがに変態的だとは思いますが、したいと言う程度ならそれ程問題視しなくても良いのでは無いでしょうか。

 実際にされそうになった時に対処するようにすれば良いかと……。

 あとは『何でも見える超視力(透視と読心術)』ですか。これは正確には『アカシックレコードを読める程度の能力』なので、どちらかと言うと占い師や預言者のような微妙な存在であると言えます。

 普通の方は占い師に出会っても気持ち悪いとか怖いとかはあまり思わないでしょう。

 でしたらそれも変態とは言えません。

 こうしてみれば、タクローさんが変態だとはとても言えないのです。

 むしろ私は、咲耶さんの華菜さんに対する想い(同性に対する性的興奮)の方が変態的だと思うのですが……


 アマネの言葉を聞いていた華菜が言う。


「う〜ん、そう言われてみたら咲耶ちゃんも変態だし、もしかしたら人間ってみんな変態なのかも〜? それだと、この人を殺すのは間違ってるのかなぁ〜」


 え? もしかしたら華菜も私のこと変態って思ってる? 少しショックを受けた。

 でも『みんな変態』だというなら華菜もそうなのだ。

 私は、華菜と一緒だったら、それでも良いかなと思い直すことでなんとか立ち直る。


 そんな訳で、この変態男もといタクローの話を一旦聞いてみようということになったため、私は華菜と二人でタクローが復活するのを待つことにした。


 この世界(人格控え室)で死んだ人間が復活するまでは大体五分くらいなので、もうそろそろタクローが復活するはずだ。


「んん……うぅ……」

 タクローが目覚めた。


「おはよう、タクロー……」

「おはようございますぅ〜、タクローさん」


 私と華菜が声をかけると、タクローは首を捻りながら応える。


「? おはようございます……」

 先程まで自分を何度も殺してきた少女二人がいきなり普通に接してきたのだ。タクローが不思議がるのも無理は無い。


 そんなタクローの様子を見ながら『やっぱり、こいつそんなに変態じゃ無いのかも?』と思いつつ、私はタクローに『一旦事情を聞くことにした』と伝えた。


 タクローは最初、事情を(かたく)なに喋ろうとしなかったため、聞き出すのに苦労した。


 それでも私と華菜が必死に(殺意を堪えて)聞こうとする態度に心を打たれたのか、やがて少しずつ話をしてくれるようになった。


「僕には愛する妻と娘が居たんだ。しかし娘が交通事故で死んだことがきっかけで妻とは別れた。

 もう僕は女性を信じられない。

 おかしいだろう? 三十四歳にもなった男が、女の子を怖いと思っているんだ」


 え? この人、結婚して子供まで居たの?

 じゃあロリコンというのは嘘かもしれないってこと?

 それとも奥様に逃げられて女性恐怖症になったから、より安全な子供を付け狙う犯罪者になったのかな?


 どちらにしても、ここで私たちが女性恐怖症を取り除いてあげるのは何かが違う気がする。


 別れた奥様の気持ちを彼に向かせてあげるのが一番問題を解決してくれそうだけど、それは無理そうだし、どうすれば良いかな……


 私はこのことをアマネに相談してみた。


 ――そうですね、奥様はまだご健在のようですので無理ですが、亡くなられた娘さんを其処(人格控え室)に呼んでみるというのはどうでしょうか? 


「えっ? そんなことが出来るの?」


 私は思わず聞き返した。


 ――あなたたちの能力なら可能でしょう。

 先ずタクローさんの能力で『死ぬ直前の娘さんの魂』を探してもらい、

 咲耶さんの能力で『魂だけそちらの空間に召喚』すれば良いと思います。

 あと、華菜さんの能力で『魂を何らかの器に固定する』ことで娘さんを其処に留めることも出来るのでは無いかと思うのですが……


 アマネの案に食いついたのはタクローだった。


「ええっ? 娘に会えるのですか? それならば是非やって頂きたいです」


 タクローは必死の思いで懇願していた。


 こうして、タクローの死んだ娘さんを救出する作戦が始まった。

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