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四月朔日 エピローグ その2

マルチエンディング パート2です。

第二十五話の続きになっております。

 アマネたちの機体は、私のパンチをまともに食らい吹き飛んだ際、壁に打ち付けられた衝撃でバラバラに壊れた。


 そんな脆い機体だったのかなと思ったら、コノハナサクヤロボの右手には相変わらず、ミョルニルが握られていた。夢の中ではパンチを放ったつもりだったが、どうやら実際のところは、ミョルニルで殴っていたようだ。


 機体が壊れた際に、アマネたちの同化も解除されたようで、みんながゾロゾロと機体から這い出してきた。


「うふふ〜。ナギサちゃん、見ぃ〜つけたっ!」


 ナギサちゃんの姿を見つけた私は、ロボから降りて、彼女のところへと駆け寄った。


「サク……ヤ……姉……どう……して」


 私がナギサちゃんを抱きかかえると、ナギサちゃんが苦しそうな顔で私に話しかけてきた。


「どうして私がナギサちゃんに酷いことするのかって? 

 酷いのはナギサちゃんだよ。私、ずっとナギサちゃんが来てくれるの待ってたのに、私が居ない間にカレシなんか作ってイチャイチャしちゃって……。

 ナギサちゃんは魔法少女なんだよ。魔法少女はカレシなんて作っちゃダメなの。

 だから、今すぐソータ君と別れてっ! もし拒否ったら、ナギサちゃんの全能力は返してもらうからね」


 私がそう言うと、ナギサちゃんが渋々ソータ君と別れてくれ――


「私、サクヤ姉の言ってること、よく分かんないけど絶対間違ってると思う! 魔法少女でも恋愛してる人って、いっぱい居るよね。それに、私がソータと何処で何しようが、サクヤ姉に関係ないじゃない! 私、絶対ソータと別れないから……」


「ひ、酷い……ナギサちゃん。私のことは、遊びだったのね」


 私、ナギサちゃんのこと、信じてたのに……。愛してるのに……。裏切られた……。


「いけないっ! また咲耶ちゃんが暴走し始めたお!」


 エイプリルちゃんが、何か慌てふためいている。


「やだなぁ〜、私が暴走なんてするわけないじゃない。……ちょっと、ナギサちゃんをブッ殺したくなっただけだよ……。だから、ナギサちゃん、邪神の名において命じます。『ナギサちゃんに宿りし全てのスキルよ、消滅せよ!』――」


 私がナギサちゃんの能力を『神の奇跡』――いや、邪神だから『呪い』の方が適切か――で消し去ると、ナギサちゃんはその場にへたり込んだ。


「うううっ……魔法……使えなくなっちゃった……」


 私は落ち込んでいるナギサちゃんに再び問う。


「さあナギサちゃん、これが最後のチャンスだよ。『今後、私と一緒に二人きりで生きる』か、『ソータ君と一緒に私に殺される』か、どちらか好きな方を選びなさい」


 ナギサちゃんは迷っているようだ。きっと、私とは一緒に居たくないがソータ君を殺したくはないのだろう。


「……」


 沈黙が続く。


「あの……ナギサさん」


 沈黙を破ったのは、アマネだった。何やらナギサちゃんにヒソヒソと耳打ちをしている。


 ナギサちゃんの顔がパアッと笑顔になる。何をしようというのだろうか……


「では、皆さん、行きますよ〜」


 アマネが他のメンバーに声をかけると、ハゲテールと、新メンバーの……えーっと確か前田雷太だっけ? が、アマネの手前側に、ナギサちゃんとマリエルが後ろ側に集まって陣形をとり始めた。


 ん〜? どうやらアマネの『言霊魔法』を使おうということみたいだけど、何する気なんだろう……


「では、行きます! ハゲテールさんの『ハ』、ライタ・マエダさんの――」


 あああっ、マズイマズイ……何か対策練らないと……。そうだ! 時間停止を――


「邪神の名において命じ――」


「――『ハライタマエ』っ!」


 アマネの詠唱の方が終わるのが若干早かった。私の身体から、邪神の力がどんどん消えてゆくのを感じる。


「くうっ……、まだ残っている能力で何か対策を――」


「無駄です、咲耶さん! ……行きますよ〜! ナギサさんの『ナギ』、ハゲテールさんの『ハ』、ライタさんの『ラ』、マリエルさんの『エ』で……『ナギハラエ』っ!」


「ああああぁぁぁ〜〜っ!」


 私の身体から、転生の時に得た召喚魔法も含めた全ての特殊能力が、一気に無くなってしまった。


「そ、そんな……。これじゃあ、私、ただの普通の人間じゃない」


 私がガクリと肩を落とすと、エイプリルちゃんが私の肩をポンポンと叩く。


 えっ? 肩ポンポンって、もしかして私リストラされる? 私は、恐る恐るエイプリルちゃんのほうを向く。


「……咲耶ちゃん。能力を完全に失った咲耶ちゃんとナギサちゃんの二人は、もうここに居られないんだけど、これからどうしたい?」


 エイプリルちゃんがそう聞いてきた。


「私……、私は、ナギサちゃんと一緒に居たい」


 私の答えを聞いたエイプリルちゃんは、ナギサちゃんにも同じ質問をした。するとナギサちゃんは、『私は、ソータと一緒がいい』と答えた。


 それを聞いた私がガックリと項垂(うなだ)れると、同じように話を聞いていたソータ君が、聞かれもしないのに『俺もナギサと一緒がいい』と言い出す。


 すると、ソータ君を追いかけていたアイドル(桃山アリサ)が『ソー君と一緒がいい』と言いだし、その追っ掛け(前田雷太)が、『桃山アリサと一緒がいい』と言いだした。


 その一連の流れを見ていた華菜が『私は、咲耶ちゃんと一緒がいいかなぁ〜』と言うと、ハゲテールとマリエルが『吾輩たちは、二人一緒ならどこへでも……』『そうじゃな……』と言ってキスをしはじめた。


 すると、アマネがいつの間にかタクローを連れてきて『彼はナギサちゃんと一緒がいいそうです。そして、私は、皆さんと一緒がいいと思ってます』と締めた。


 全ての発言を聞いていたエイプリルちゃんが、私たち全員に話しかけてきた。


「じゃあ、満場一致っていうことで、今からここにいる全員は、普通の人間として(・・・・・・・・)咲耶ちゃんが居た元の世界(ニッポン)に転生してもらいます。さようなら、私の可愛い子たち、どうか来世では幸せな生活を……」


 そう聞こえたかと思うと、世界が急激に真っ白になった。


 ◆  ◆  ◆


「――ちゃん、咲耶ちゃん、早く起きて……」


 私を起こす声が聞こえる。


「ムニャムニャ……なに〜? どしたの?」


 私が目をさますと、其処には、私を必死に起こしているクラスメイトの姿があった。


「あ、おはよう、渚ちゃん」


 私がその同級生にあいさつすると、後ろからパコンッと、頭を叩かれる。


「痛っ!」


 私が振り向くと、先生がすごい形相で私のことを睨んでいる。


「依田ぁ〜、俺の授業で寝るとはいい度胸だな? 後で職員室に来い」


 あっちゃあ〜、よりによって、こいつの授業だったか。この『前髪が禿げたポニーテールのイケメン教師』は、怒らせると怖いことから、生徒の間で『魔王ハゲテール』などと呼ばれている。


 後ろの席の華菜がクスクスと笑っている。


 部屋の端っこに座っている『渚ちゃんの双子の兄――颯太――』と、その友人の雷太が、私のことをバカにしたようなジェスチャーをしている。あいつら、後で覚えてろよ〜。


 前の席の女子が、彼らの様子を見ていたらしく私のほうをキッと見る。えーっと誰だっけ? 確かアイドルをやってていつも不登校の娘だ。


 私が、とりあえず愛想笑いをすると、そのアイドルは『ふん……っだ!』と言って前を向いた。


 突然、教室の前にある扉が開いたかと思うと、隣のクラスで授業をしていたはずの女教師がツカツカと入って来た。


「あなた! いつもいつも他の女に触れるのはやめて下さいって言ってるでしょう」


 女教師がそう言うと、ハゲテールが


「済まなかった、マリエ……愛してるのは君だけだ」


 と、女教師に謝る。それを聞いた女教師が、


「あなた、私も愛してるわ」


 と言い、いつものように教室でキスをしだす。この夫婦が教室でキスをするのは、まあいつものことだ。


 私たちが、またかよ〜と呆れていると、後ろの扉がガラリと開いて


「先生がた、あなたたちは、いつもいつも所構わずフシダラなことを……。二人とも後で校長室に来なさい!」


 と、校長先生が二人の教師を注意した。これによって、私が注意されることが無くなった。本当、ラッキーだ。


 この校長先生は実は渚ちゃんのお父様らしい。先日、クラス委員の天音さんがそう言っていた。


 そんなわけで、私たちはいつも、なんだかよくわからない日常を過ごしている。


 この四月一日から、私たちに新しい人生をくれた神様には、本当に感謝しないといけないよね。


 学年が変わって新しく出来たクラスメイト、まだ全員の名前を覚えきれていないけど、私はこれからの二年生の生活も、うまくやっていけそうな気がする。


 教室から先生が出て行ったことで自習となったため、クラス中が騒がしくなっていった中、私は机に伏して、夢の続きを見れますようにと祈りながら、眠りにつくのだった。


 おしまい。


 ―― エンディング№2 再転生(もしかして夢オチ?) 〜 完 〜 ――

マルチエンディングはまだ終わらない?


六時間後に、エピローグ その3があります。 お楽しみに

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