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第二十五話 串焼き

 私たちは、神殿最奥部にある部屋の扉を開けると、その中に足を踏み入れた。


 私たちが部屋に入ると、扉が閉まり、同時にあらゆる角度から無数の槍が飛んでくる。ただの槍ではない『ロンギヌスの槍のような物(・・・・・)』だ。たとえ神であろうとも刺されば死ぬ……んじゃないかなぁ〜と思う。

 もっとも、見た目がそう感じるだけなので、実際のところは、どうなのかはわからないのだけれど、当たって死んだら元も子もないので、私たちは必死に逃げ――グサリ


「ぎゃああああっ」


 思わず悲鳴を上げてしまうほどの痛みが私の全身を駆け巡る。


 どうやら、一本の槍が私の身体を背中から貫いたようだ。お腹から槍が生えているのが見える。


 痛みを堪えながら周りを見ると、残りの槍が私に向かって進路を変えて、こちらに飛んできた。どうやらホーミング性能がある槍だったようだ。


 何万本もの槍が私の身体に次々と刺さっていく。


 ものすごい寒気を感じる。きっと体温が下がり、唇が青くなっているのだろう。


 私の意識が次第に薄れてゆく。なんだったっけ、私……ここに……何を……し……


 全ての槍が身体に刺さったところで、私は煙のようなものに包まれて消失した。


 ◆  ◆  ◆


「ククク、なんと他愛無い……。神々にとって脅威になり得ると言われた『俗称・ヨダサクヤなる人間』も所詮、この程度だったようだな」


 部屋の主と(おぼ)しき、男神(おがみ)がそう言いながら現れた。

 男神の身体は、十五メートルはあろうかというほどの巨大さで、彼は『サンタクロースのように伸ばした立派な白い顎鬚(あごひげ)』を指で()きながら、私の消失した場所を満足そうに眺めていた。


「ふむ、これほど容易(たやす)(たお)せるとは思わなかったが、我の勝利だ。今宵は宴を開くとしようかのう――」


 白鬚(しろひげ)の巨大な男神が、勝利の余韻に浸ろうとした次の瞬間、私が消えた場所で『ドロン』という大きな音がした。


 男神が何事かと慌てて辺りをキョロキョロと見回し、やがて無傷の私が立っているのを見つけた。


「――なっ、貴様、先ほど死んだ筈では……」


 男神が驚いて私を睨みつけてきたので、私はニヤリと不敵な笑みで返してやった。


 何が起こったのかというと、最初の槍が刺さった際に『忍者の神様』が持っていたスキル『影分身の術』を使ったのだ。

 このスキルは、たとえ四肢切断されようが毒ガスを蒔かれようが無傷で復活できる自動復活魔法(オートリカバリー )のような代物(しろもの)だ。

 以前、ナギサちゃんにかけた『カウンター機能が付いた自動復活魔法』とは違い、こちらは復活後に別の場所にテレポートするタイプだ。


「私のこと殺せなくて残念だったわね。……というか部屋に入って早々殺されるとは思わなかったわ。全く、あなた本当は神様じゃなくて悪魔なんじゃない?」


 私が部屋の主らしき男神にそう言うと、エイプリルちゃんが口を挟んできた。


「咲耶ちゃん、あの人は、あたいのパパで、名を『サンクタロース』と言います」


 えっ? ホンモノのサンタさ……あっ、サンタクロースじゃなくて『サンクタ(・・)ロース』か、紛らわしいなぁ〜。よく見ると、この男神、ドワーフのような緑色の衣装で全身を包まれている。


 エイプリルちゃんが、サンクタロースを問い詰める。


「パパ、なんであたいの(・・・・)可愛い咲耶ちゃんを殺そうとするのですか?」


 か、可愛いだなんて照れるなぁ〜。


 ……っと、サンクタロースが、エイプリルちゃんの問いに答える。


「我が娘――弥生・エイプリル・MAY――よ、汝が育てし『俗称・ヨダサクヤなる人間』を生かしておくのは危険なのだ。汝もそれはわかっておろう。現に、この神界のほぼ全ての『女神』が此奴に隷属しておるではないか。このままでは神が絶滅の危機にさらされるであろう――」


「あっ、それは大丈夫ですよ。私、男の神様はたとえ頼まれても(・・・・・・・・)絶対に召喚神(使い魔)にしませんから」


 私は、サンクタロースの言葉に口を挟んだ。だって、男とキスなんて死んでもしたくないからね……。


「そう言う話ではないのだ。女神がいなくなると、我々男神が困ると言っているのだ」


「え〜と……もしかしてなんだけど、男の神様は『子作りが出来なくなるから女神を消さないで』って理由で、私を封印しようとしてたの? ってゆーか、そもそも神様って子作りするものなの? 私、神様っていうのは『人々の信仰心が生むもの』なんだと思うんだけどなぁ〜」


 神様が何を困るのかが良くわからない。


「ぐぬぅ……忌々しい。これだから『意識高い系』は嫌いなのだ」


 ムキーッ! 誰が、意識高い系カッコワライですって〜?


「咲耶ちゃん落ち着いて、『カッコワライ』なんてパパ言ってないから……。カッコワライがついてなくても同じような意味だけど」


 エイプリルちゃんが(なだ)めてくれてるのか、そうじゃないのか、どちらなのか良くわからないことを言う。


「エイプリルちゃん、今から、あなたのパパをブッ死ろします!」


「咲耶ちゃん、本当に落ち着いて! 日本語オカシクなってる!」


 エイプリルちゃんが止めようとするのを遮って、私はサンクタロースに必殺の一撃を放つ!


「ファイナル咲耶パーンチ!」


 私のパンチが時空間を切り裂く。


 グァキーンッ! という金属音が辺り一帯に響く。


 その瞬間、周りの景色がガラスのように砕け散り、コックピットのモニターが、今までとは違う世界を映していた。


 見ると、私とエイプリルちゃんが乗る『コノハナサクヤロボ』が、ナギサちゃんたちの乗った巨大ロボを吹き飛ばしていた。


 ――あれ? 今まで私、何してたんだっけ? ……どうやら私、三話分ほど眠っていたようだ。

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