第二十二話 神界の入り口で
突然ですが、咲耶編の続きになります。
時計を見ながら私の話を聞いていた神様が、時計から目を離し、私に話しかけてきた。
「じゃあ咲耶ちゃん、そろそろ時間だし、行こうか。神の国へ……」
どうやら、別れの時が来てしまったようだ。
とても名残惜しいのだが、私は、ナギサちゃんに別れの言葉を告げる。
「それじゃあナギサちゃん、元気でね。バイバイ……」
ナギサちゃんが泣き噦る姿が目に焼きつく。
……ゴメンねナギサちゃん、もう二度と会えないかもしれない。
私は、神様と共に、神界へと赴く。
『特A級危険分子、依田咲耶の処遇に関する決議事項』と書かれた一冊のノート――これには、私の運命を決定づける重要なことが記されていた。
どうやら神様の間では、私の『何でも呼べる便利な召喚魔法』の性能を『相当ヤバいもの』と捉えているようで、このノートには『私の能力を全て奪った挙句、私の存在そのものを封印するという計画』が書かれていた。
これを見せられた時、『そんな計画を私に見せるなんて神様も甘い。ハッキリ言って私のこと舐めすぎでしょ』なんて思っていたのだが、この幼女神様は、どうやら神界で決定した計画を反故にしたいらしい。
「あたいは、咲耶ちゃんの味方だよ。一緒に他の神々をやっつけちゃおうね」
なんて、とんでもないことまで言ってきた。
まあ、神様から『相当ヤバいもの』と思われてる私のスキルと、ここにいる幼女神様の力があれば、もしかしたら他の神々も倒せちゃったりするのかもしれない。
私は、幼女神様と一緒に、神界の入り口にある門扉の前までやってきた。
「そういえば、神様のこと、なんて呼んだら良いのかな? ここから先って、神様だらけなんでしょう?」
私がそう尋ねると、幼女神様が頭をポリポリ掻きながら言った。
「そうだね〜。ここから先には、あたい以外の八百万神が住んでいるから、あたいもそろそろ自己紹介しないとダメだよね。
自分の名前を言うのって恥ずかしいから、今まで名乗ってなかったけど、仕方ないね。
あたいは、春の月を司る神『弥生・エイプリル・MAY』って言うの。改めて宜しくね、咲耶ちゃん」
……なるほど、『三月と四月と五月』を司る神様か。でも、それだと『春』じゃないような気も……
「そこまで厳密に考えなくても良いんじゃない?
……それで、あたいの名前を聞いた咲耶ちゃんは、これからあたいのことを、どう呼んでくれるのかな?」
う〜〜ん、弥生もエイプリルもメイも、どれも名前っぽいから呼びづらいなあ〜。いっそのこと、『春』の神様だから『ハルカ』っていうのは――
「問答無用で却下だよ」
神様に即断で却下されてしまった。
「じゃあ……う〜んと、どうしようかなぁ〜。……ところで、エイプリルってのはミドルネームで良いの?」
「まあ、間違いでは無いかな……」
「じゃあ、これからはエイプリルちゃんって呼ぶことにするね」
「そ、そう……」
エイプリルちゃんが少し照れ臭そうにホッペを掻いている。か、可愛い……
「……じゃあ、エイプリルちゃん。神界でひと暴れしちゃおうか?」
私がそう言うと、エイプリルちゃんが制止した。
「とりあえず、まずは決められた通り、最奥にある『神殿』で他の神様とお話ししようよ。そこで力が奪われる直前に、他の神様をやっつけちゃおう」
う〜ん、その方が敵性勢力も分かるし無難なのかな?
「じゃあ、そうしようか。……エイプリルちゃん、一緒に他の神様をぶっ殺しちゃおうね」
「いや、殺すことは多分できないけど……。まあ、がんばろっ!」
こうして、私たちは神界の門をくぐるのだった。




