12 激突! 魔法少女 vs アイドル
私がゲートを設置するや否や、クソビッ……アリサが部屋に入ってきた。
「バカナギサ! 何で私を亜空間に戻したのよっ!」
アリサが開口一番、私に文句を言うもんだから、いつものように口喧嘩が始まる。
「あっ、ゴメーン。ボタン押し間違えちゃった。テヘッ☆」
私がわざとらしくそう言うと、アリサが激昂する。
「ボタンって何よ! あんたの魔法でしょっ!」
「全くアリサは細かいことまで、イチイチうるさいなあ。これだからクソビッチだって言われるんだよ」
私が努めて冷静にそう返すと、アリサが、とんでもないことを言い出す。
「クソビッ……って、そんなこと言ってるの、あんただけでしょ〜が、クソババァ」
カチーン! 頭に来た! このクソビッチ、自分の方が年上のくせに、私のことババァとか言いやがって……
「私の方がアリサより若いでしょ? この年増!」
「年増……って、あたし十七歳だから、そんな『年増』っていうような年齢じゃないでしょ〜が!」
――アリサは、十五歳でアイドルデビューしてトップアイドルまで上り詰めたものの、十七歳になったある日、ソータとのスキャンダル発覚でアイドル転落、そのまま自殺したのだそうだ。
そのトップアイドルの突然の死に、ソータは当初、かなり世間から叩かれたらしい。
しかし二週間くらい後に、そのスキャンダルが週刊誌の記者による『でっち上げ』だったことが発覚したことによって、標的はソータから雑誌社に変わり、ソータも無事プロデューサー業に復帰できたのだそうだ。
そんな事情もあって、ソータはアリサのことを今も避けているのだが、アリサは『当のでっち上げ』とは裏腹に、実は本当にソータの事を好きだったらしく、死んでなお、ソータに付きまとっているのだ。
そんなビッチでストーカーのアリサが自分のことを『年増じゃない』と反論するのなら、私だって返す言葉は同じだ――
「だったら私だってまだ十五歳なんだよ。全然ババァじゃないからねっ! というかアリサより若いんだからね!」
「そうかもしれないけど、あんた、ソー君と同い年なんでしょ? だったら私より『一回り年上』じゃない」
「アリサって、ひょっとしてバカなの? 一回りって十二歳差の事だよ。ソータとアリサの歳の差って、たしか十歳だったでしょ?」
私は、思ったことを口にする。すると――
「うるさい、バカって言った方がバカなのよ。バカ〜っ!」
……ププッ。自分で言ったそばからバカって言ってるよ。この子……。
「じゃあ、やっぱりアリサがバカなんだ……。
どうやら今回も、私の勝ちのようだね。というか、私に口喧嘩で勝とうなんて、十年早いよ」
私がドヤ顔でアリサを見ると、アリサはアイドルモードに移行してソータに助けを求めだした。
「うわあ〜〜ん。プロデューサーさん、助けて〜」
アリサは胸の前で手を組んで、上目遣いでソータを見ながら、キモ……普段より甘えた声で懇願する。
しかしソータは咄嗟に逃げ出して、私の『影』に隠れてしまった。比喩的な『陰に隠れる』ではなく、自分の変身能力を利用して、文字どおり影に隠れたのだ。
私の影に同化しているソータが、アリサに言う。
『アリサ、俺はナギサが好きだ。だから、お前の味方にはなれない』
おお〜っ! アリサがみるみる落ち込んでいく。
落ち込むアリサを見ていると、私の怒りも次第に治まってくる。いいぞ! ソータ。もっと言ってやって……
「……って、あたしがそんな簡単に落ち込むとでも思った? ソー君がナギサを好きなのは百も承知よ。だけど……ナギサ! ソー君の初めては、あたしが貰っちゃうから、覚悟しときなさいよね」
アリサがそんなことを言い出した。これはもしかして、ソータ貞操の危機?
「……えっと、アリサ? 一応聞くけど、その初めてって何のこと?」
私がそう聞いてみたら、アリサが応えた。
「それは、も、もちろん、キ……キ……キスのことに決まってるじゃない!」
……あっ、そういえばこいつバカだった。
「ふーん、そっかぁ〜。キスなら私、もうソータに何十回もされちゃってるんだけど、まあ、精々頑張って『ソータのファーストキス』を奪ってね」
私は手をヒラヒラとさせながらそう言ってやった。
「ムキーッ!」
アリサが顔を真っ赤にして悔しそうにする。これで本日二回目の勝利だ。実に気持ちがいい。
部屋の中を見回すと、ゲートから雷太くんが出てくるのが見えた。そういや、彼を呼び出そうとしてたんだったっけ? すっかり忘れてた……。




