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11 九人目の転生者

 私がゲートを開いて呼び出そうとしているのは、十人目(・・・)の転生者、前田雷太くんだ。


 彼は、十七歳の高校二年生で、運動、勉強、容姿のどれもが、あまりパッとしない『割と何処にでも居そうなモブキャラタイプの人間』だ。


 彼の瞳はいつも前髪で隠れているので、私たちには彼が何を考えているのかが全く読めない。多分、彼の考えていることがわかるのは、アカシックレコードが読める能力を持つパ……私のお父さん以外には居ないだろう。


 そんな彼が転生の際に授かった能力は、彼(いわ)く『ラノベ主人公みたいになりたい』だそうだ。


 それを聞いたときは、みんなよく意味が分からないのでポカーンとしていたが、のちに女性陣のみ、その能力を身を以て知ることになった。


 彼の能力は私たちの推測では『ラッキースケベを引き起こす能力』だろうという結論になっている。


 まず、彼はいつも何もないところでよく転ぶ。そして、転ぶたびに偶然近くに居合わせた女の子と何らかのトラブルを起こしている。


 そのため、私たち亜空間に住む女性陣は全員、彼に胸を揉まれたことがある。他にも、女性全員が風呂の脱衣場で着替え中に彼にエンカウントされていたりする。


 こんなことは、本来なら簀巻きにして東京湾に沈めてやりたいほど許せない行為なのだけれど、彼はラッキースケベが発生した後に必ず、捨てられた子犬のような哀しい表情を見せてから『俺が成りたいのは、こんなハーレムラノベじゃなくて、異世界冒険譚の主人公だったのに……』と嘆く。


 どうも彼の変態行為は、彼の意志とは無関係に起きているようなので、誰も彼を咎めることが出来ず、今ではみんなが、彼に遭遇しないようにと距離を置くようになっている。


 これが、私たちが彼の能力を『ラッキースケベを引き起こす能力』と認定した所以(ゆえん)だ。


 そんな彼だが、ソータとは仲が良いようで、二人でコソコソと何かをしているところを時々見かける。


 彼を此処に連れてくることで『私がソータのことを好きになれるのか』という点については、(いささ)か疑問があるものの、彼なら何とかしてくれそうな気がするから、きっと大丈夫だろう。


 そんな訳で、私は彼『前田雷太くん』を此処に呼び出すためのゲートを開いた。


 ゲートが亜空間に繋がると、ドアが向こうから開いて、中から勢い良く飛び出してくる人物があった。


 その少女(・・)は、『プロデューサーさ〜ん』と叫びながら、ソータに向かって全力疾走して行く。


 私はソータの目の前に、そっと『亜空間に送り返すためのゲート』を設置して、彼女が亜空間に消えた瞬間に二つのゲートを両方とも閉じた。


 ……ふぅ、あぶないところだった。あいつを此処に入れたら何が起こるか分からない。


 今、通り過ぎて行った彼女は『桃山アリサ』と言う、元トップアイドルだったらしい九人目の転生者だ。


『らしい』というのは、彼女がアイドルデビューしたのは、ソータが二十五歳の頃で、それはつまり私が死んでから十五年も後の事だからだ。


 デビューした当時の彼女の年齢はちょうど十五歳なので、私と彼女には生前の接点が全く無い。


 それなのにやたらと彼女が私に突っかかってくるのは『彼女がソータのことを好きだから』のようだ。


 彼女の態度を見ればそんなことはバレバレなのだが、ソータはそれに全く気付いていないみたいで、いつも私に猛アピールしてくる。そんなソータを見ている彼女が、私のことを良く思わないのは当然だろう。


 ……そうそう、ソータは生前、芸能事務所でプロデューサーをしていたそうで、彼女は、ソータが育てたトップアイドルの一人だったそうだ。


 そんな彼女は、転生の際に『テイミング』スキルを取得している。彼女のスキルにかかれば、モンスターはもちろんのこと、人だろうが神だろうが、生きてさえいれば全てが彼女の言いなりになってしまう。曲解此処に極まれりといった感じの、とんでもスキルだ。


 彼女が手なづけた生き物は、彼女の召喚獣となって、いつでも何処でも自由に呼び出すことが出来るようだ。


 もっぱら、私と彼女は戦争状態にあり、彼女の召喚獣を私が倒すという日々が続いている。


 元トップアイドルだか何だか知らないけど、私にとっては『生活を脅かすだけの敵』でしかないが、彼女は私を『恋のライバル』と思っているようだ。


 私のことをライバル視する彼女は、私の魔法少女衣装に対抗するためか、いつもアイドルのステージ衣装を着ている。


 もちろん、そんな彼女も、雷太くんのラッキースケベの被害に遭っている一人だ。

 雷太くんは、生前、彼女のファンだったらしく、割と彼女の周りをウロチョロしていることが多い。


 やっぱり、雷太くんを此処に呼ぶには、彼女の召喚も避けられないのだろうか。


 私は溜め息をついて、再びゲートを設置するのだった。

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