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9 魔王 vs 魔王

 私たちの眼前には、噂の『神に匹敵する強大な魔王』が居た。

 この魔王は、牛の頭をした人型の魔物――いわゆるミノタウロスに似た生物のようだ。


 噂の魔王は、私の後ろに控えていたハゲテールの存在を確認すると、彼に話しかけた。どうやら、ふたりはプリキュ……知り合いだったようだ。


「ほう、そこに居るのは、かつて伝説の魔王とまで(うた)われた吸血鬼の王、ハゲテールではないか。人間ごとき下等生物に負けて下僕に堕ちたと聞いていたが、元・我が(あるじ)も落ちぶれたものだな」


 噂の魔王がハゲテールを見て嘲笑(あざわら)う。


 ハゲテールは、その嘲笑(ちょうしょう)を大して気にもせずに魔王に言葉を返す。


「ほざけ、元・家臣ギガデブルよ。貴様を殺す事など吾輩の小指一本だけでも充分だ」


 どうやら、このミノタウロスっぽい魔王の名前はギガデブルというらしい。

 凄く太っていそうな名前だが、その体躯は一流のボディビルダーも顔負けの、とんでもない筋肉の塊だ。


 もしかしたら、食べると太るという事なんだろうか。

 そんなことを考えていたら、なんだかお腹が空いてきた。


「ねえ、カナ姉。あいつって、やっぱり牛の味がするのかな? あれだけ肉が多いと食べがいがありそうだよね……」


 私が目の前にある肉の塊を見ながら、じゅるりとヨダレを垂らすと、カナ姉が言った。


「じゃあ、後で皆んなで焼いて食べましょうね」


「わーい。じゃあ今夜は焼肉パーティ決定だね。あっ、すき焼きにするってのも良いかも……」


 私とカナ姉の会話を聞いていたギガデブルがハゲテールに文句を言う。


落魄(おちぶ)れた元魔王よ、貴様の主人達(マスター)は既に我に勝ったつもりのようだが、此処が貴様らの墓場だ。貴様もろとも葬り去ってくれよう」


 それを聞いたハゲテールが、私に頼みごとをする。


「ナギサ様、此奴(こやつ)とは、吾輩一人で戦わせて欲しい」


 なるほど、宿敵だから一対一で戦いたいって事なんだろう。私は快く了承する。


「オッケー、一騎打ちは許可するけど、なるべく味が落ちないようにしてね」


「フン、血を吸わないようにという事だな。心得た」


 ハゲテールがニヤリと口元を歪めると、それを合図にしたかの如く、二人の魔王による一騎打ちが始まった。


 ギガデブルが、『トールハンマー』と叫びながら、右手に握られたハンマーを振った。


 その一撃を易々(やすやす)と(かわ)したハゲテールが言った。


「成る程、雷神トールの鎚『ミョルニル』か。『神に匹敵する魔王』と言われる正体がこんな物だったとは、笑わせてくれる。

 先ほど言った通り、吾輩の小指だけで貴様を(なぶ)り殺してくれよう」


 そう言うと、ハゲテールは、右手の小指だけを蝙蝠(コウモリ)化した。


 その蝙蝠は人型になり、見た目五歳くらいの若い男の子の姿になる。


「えっ? あんた、そんなことも出来たの?」


 と、私が驚いているうちに、幼いハゲテールがギガデブルの右腕を手刀で切り落とした。


 ギガデブルが握っていたミョルニルが落ちたので、私はそれを回収しようとしたが、拾う事すら出来ない。


 私は、北欧神話に(なら)って、『ヤールングレイプル』のような手袋と『メギンギョルズ』のような剛力の帯を『創造魔法』で作成する。


 これで、ミョルニルを持つ事が……やっぱり無理。熱さは何とかなったけど、私には重すぎた。


 あの牛、こんな重い物を、よく軽々と振り回せたな。


 私はとりあえず、ギガデブルの右腕を炎魔法で焼き、風魔法で切り分けると、戦闘中の『ハゲテールの小指の少年(・・・・・)』を除く仲間全員で分け合って食べてみた。


 う〜ん、牛肉っぽい味だけど、ヤッパリちょっと違うかな。でも、まあまあ美味しいかも……


 私たちが右腕を平らげた頃には、『ハゲテールの小指の少年』がギガデブルを倒しきっていた。


「ねえ、ソータ。巨大化して、あそこに落ちてるミョルニルを振りまわせない?」


 私がソータに聞くと『やってみる』と言って、ソータは巨大ロボットに変身した。


 どこからともなくロボットアニメの主題歌が流れる中、先ほど私が作った手袋と帯を装備したロボソータがミョルニルを持ち上げる。


「おお〜、ソータくん。凄いね」


 私は、素直に感心すると、ソータに指示を出す。


「ソータくん。ミョルニルの効果『死者蘇生』を使って、ギガデブルを蘇らせてから、生き返ったギガデブルをミョルニルで殺してみて」


 ソータは頭にハテナマーク『?』を浮かべつつも言われた通りにする。


 すると、ギガデブルが生き返って、


「フハハハハ、これで勝ったと思うなよ、降臨せよ。邪神サ――――」


 何かを言いかけたところでミョルニルに打たれて死んだ。


 目の前には私たちが食べた物とは別のギガデブルが横たわっている。


「うん、これなら私たちがどれだけ食べ尽くしても困らないね」


 私が今夜の牛肉パーティに想いを馳せていると、突然、部屋中に荘厳(そうごん)なクラシックが流れてきた。どこかで聞いた事があるこの曲は、モーツァルトのレクイエムより『怒りの日』だ。


 部屋の奥の無駄に広かったスペースにスポットライトが当たり、地面が割れると、地中から高層ビルほどの大きさがあるのではないかという巨大な何かがせり上がってきた。


 あっ、なんかこれって大晦日の晩にテレビで見た事がある、あのラスボスみたいだ……


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