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第一話 転生〜十五歳になりました

 アマネは比較的貧しい村の領主の娘に転生し、両親と兄に可愛がられすくすくと育った。


 十二歳になったアマネは、華菜の記憶が覚醒したため、メインの人格を華菜と交代した。

 普通に考えると周りからは少女の性格が突然変わったように見えたはずなのだが、アマネの生真面目な性格から華菜のおっとりとした性格への変貌は、あまり違和感が無かったため、周りの人は全く気付かなかった。


 ある日、アマネ(※中身は華菜)は自分の才能を活かす為に冒険者になりたいと家族に告げた。


 今の領主の娘という立場から見て、冒険者という死と隣り合わせの不確定な生き方は、危険すぎると家族から当然のように猛反対された。


 そのため、アマネは、華菜が転生の際に授かったスキルを実際に使って見せ「この能力(ちから)で人々を助けたいのだ」となんども訴えた。


 アマネが家族に見せた『華菜の転生スキル』というのは『白魔法』――人間の治療や『死霊系の魔物(アンデッドモンスター)』の浄化(討伐)などが出来るスキルだ。


 このスキルは、普通なら高い魔力を必要とする上級魔法にあたるのだが、アマネの身体が天使の生まれ変わりのため、白魔法と親和性が非常に高いこと、そしてアマネ自身の基本性能が全てにおいて人間より遥かに高スペックであることから、魔力不足になることは特に無く、何度もポンポンと連発することすら出来た。


 この魔法を見た家族は『医者か神官にでもなれば良いだろう』と言ったが、それでは咲耶が覚醒した時困るだろうと考えていた華菜は、冒険者の道を目指すことを曲げなかった。


 一応アマネ自身にも能力が有るのだが、天使の羽を出して空を飛べることや、一度行ったところにテレポート出来る事など、人間として生きるにはあまり使い道が無さそうなものばかりだった。


 やがて、幾度にも(わた)る説得の甲斐があったためか、考えを曲げる様子がなかったためなのか、ついにアマネは両親より、条件付きではあるが了承を得ることができた。


 その条件というのは『冒険者ギルドに入れる十五歳になるまでは、村の道場へ通うこと』という条件と、『冒険の目的を花婿探しとすること』という条件の二つだった。


 アマネは、一つ目の条件は冒険者になるために必要な物だったためしっかり守ったが、二つ目の条件については全く守る気が無かった。


 ◆  ◆  ◆


 やがて、アマネは十五歳の誕生日を迎えた。


 メイン人格である華菜の様子を、別人格として影からひっそりと見守っていたアマネは、現在の人格である華菜の頭に直接語りかけた。


 ――華菜さん、ついにこの日がやってきました。間も無く咲耶さんの意識が覚醒します。


 それに対し華菜が心の中で尋ねる

 ――え? ああ、咲耶ちゃんが目覚めるのですね〜。わたしはどうすれば良いのでしょうか〜?


 そう問うと、アマネは華菜に語る。

 ――一度、メインの人格を私に戻しますので、その間にお二人で話し合ってどちらがメインの人格になるかを決めてください。


 アマネがそういうと、華菜の意識は現実から離脱し、お茶の間からテレビを観ているような状態になった。


「ふわぁ〜、初めて入ったけど、ここが別人格の控え室(・・・・・・・)なのですね〜。なんだか普通のお家みたいですぅ〜」


 この控え室は室温も快適、なんでも欲しいものが手に入るという物凄く過ごしやすい空間だった。

 しかも、お腹が空いたらご飯が出てくるし、お風呂もベッドもあるという、どこからどう見ても普通の家だった。


 華菜が家の中を色々見て回っていると『ピンポーン』と玄関のチャイムが鳴った。

「は〜い。今開けま〜す」


 ガチャリ。


 華菜が玄関のドアを開けると、そこには最後に会ったときと同じ姿の咲耶が居た。


「あ〜咲耶ちゃんだぁ〜。いらっしゃい〜、……じゃ無くて、おはよう〜かなぁ?」


「おはよう。……えっと、覚醒した時に今までの出来事はすべて把握したつもりだったんだけど、……なに此処?」


「なんか〜、メインで動いていない人格の控え室みたいだよぉ〜」


「……そう、覚醒した時に、身体(あちら)で起こったことはすべて把握できたけど、どうやら此処での出来事(心のなかまで)は把握できないみたいね」


「それでね〜、アマネさんが言うには〜、私たち二人のどちらかがメインの人格(あっちの世界)に出て欲しいんだって〜」


「そうなんだ……。じゃあ今まで(あちら)で私の為に頑張ってくれてた華菜なら、私が華菜の為にしようと考えていることも分かってるよね……」


「うん、咲耶ちゃんならそういうと思ってたよ〜」

 咲耶の結論は最初から決まっていた。


「アマネ、聞こえる?」

 咲耶がリビングの壁にかけられたテレビモニターに話しかけるとアマネが応えた。


 ――はい、咲耶さん。聞こえています


「私たち、二人とも此処にずっと住むから。後は適当にやっといて……」

 私は固い意志をアマネに伝えたのだった。

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