5 パパ、ちょっと大きくしすぎる
どうやら、私がハゲテール夫妻に『エッチしてるところを見せろ』と要求しているところを、パ……お父さんに見られていたらしい。ちょうど私がハゲテールにそう言っているときに、お父さんがリビングに入って来たのだそうだ。
お父さんは、私が『サクヤ姉に命令撤回してもらう』と言ったところを見て、『教育方針間違えたかも』と言って、落ち込んでしまったみたいだ。
私のお父さん――櫻川タクローは生前は高校教師で、バレー部の顧問をしていた。
私は、ママが『パパは女生徒にすごくモテるのよ』って自慢してたのを今でも覚えてる。その時、ママは『私のほうがパパのこと一億倍は愛してるんだけれどね』って言っていた。
一昨年、カナ姉から、『私が死んだことがキッカケでパパとママは離婚したらしい』という話を聞かされたのだけれど、今でも全く信じられない。カナ姉が嘘を言うはずがないというのは重々承知してるんだけれど……。
それで、ママと離婚したお父さんは、失意のあまり自殺しちゃったから、この亜空間に転生してきたんだってカナ姉が言ってた。
転生したお父さんは、サクヤ姉とカナ姉と一緒に、『死ぬ直前の私』を、この世界に連れてきてくれたらしい。
その後、神様が私を正式に転生してくれたおかげで、今の私がここに居られるようになったのだ。
だから、私はお父さんとサクヤ姉とカナ姉には、他の人の何十倍も感謝してるし、三人とも特別に愛してる。
そんなお父さんに落ち込まれると、私もすごく寂しくなってしまう。
私は、元気を失ったお父さんの頭を優しく撫でる。
「パパ……、私は元気なパパが……大好きだよ。だから元気出して……」
ちょっと恥ずかしいけれど、私はそう言って、一生懸命にパパを撫でる。
よいしょ、よいしょ……と手を何度も動かして、私は只管パパを撫で続ける。もちろん優しい言葉をかけてパパに元気になってもらえるように頑張るのも忘れない。
私に何度も優しく撫でられたパパは、だんだん元気になってきたみたいだ。
「パパ、私、パパのこと……愛してるから……」
私は、すごく恥ずかしいセリフを吐く。パパが元気になってくれるのが一番大事だから……。
さっきまであんなに小さくなってたパパは、今は、もうね、なんというかね、すごく……大きいです。
私、パパがこんなに大きくしちゃってるの初めて見るんだけれど、これ、大丈夫なのかな。
私は大きくしすぎちゃってるパパに苦言を呈する。
「ねえ、パパ、ちょっと、大きくしすぎなんじゃないかな? 私、こんなに大きくしてるパパ、ちょっとやだな。
だから、もうちょっとだけ……ちょっとだけでいいから、……小さく出来ない?
私、こんなに大きくしてるパパ、見たくないよ。見てるこっちが恥ずかしくなるから……。
だから、もうちょっとだけ、小さくしようよ……。
ねえ、パパ。いくら何でも大きすぎると思うんだけれど……パパの……その……態度が……」
「ハッハッハ……。ナギサの性教育をしたのは僕だ。だからナギサがエッチなのは僕のおかげなのだ!」
そんな『わしが育てた』みたいに威張って言わなくても……。まあ死んでから得た知識は全部、パパに教えてもらったんだから、間違ってはいないんだけどさぁ〜。
こういう時、カナ姉の白魔法を使えば、あっという間に心を落ち着かせられるんだけど、なんか私がブルーレイ見てるうちに、カナ姉は何処かに行っちゃった。
だから、私は、ちょっと態度が大きくなりすぎちゃったパパをハリセンで叩く。
「もう、パパのばかぁ〜。私、そんなにおっきくしてるパパなんて大っ嫌い」
私はパパに向かって大声で叫んだ。この一言はパパに相当効いたみたい。パパ、また落ち込んじゃった……。なんかパパって態度が極端すぎて扱いが難しいなぁ〜。
――ガチャリ。
私の大声を聞いて慌てて駆け付けたらしい人物が、リビングのドアを開けると私に声をかける。
「ナギサ、大丈夫か?」
あ、なんかややこしい事になりそうな予感が……
私、最初っから『頭を撫でる』って言ってるから大丈夫だよね。変な誤解とか無いよね。




