2 エンゲージリング
私とカナ姉の左手の薬指には、サクヤ姉が去り際に仕込んでいたらしい指輪が装着されている。
「これって、やっぱりエンゲージリングなのかな」
私が指輪を眺めながらそう呟くと、カナ姉が指輪を見つめながら言う。
「多分そうなんだろうね。きっとサクヤの左手にもこれと同じのがあるんだと思う……」
うん、それは確かにありそうだ。
私がそう思っていると、指輪を眺めていたカナ姉が何かに気づいたようだ。
「ナ、ナギサ。ちょっと指輪のココを見て。何かが書いてある」
私は自分のはめている指輪の同じ部分を確かめる。
「ん? ホントだ。えっと……これは天界語と魔界語のどちらにも似てるけど、ちょっとずつ違うみたい……。
ん〜? もしかして古代文字の一種かな?」
私は指輪に書かれた文字を解読しはじめる。
カナ姉は私を見て感心したように言う。
「すごいねナギサ。いつの間にそんな言語覚えたの?」
「え? お父さんがいろんな世界の言語を教えてくれるし、此処にはアマネ姉も居るし、ハゲテール夫妻だって居るんだよ。
天界語や魔界語程度の簡単な言語なら普通に読めるでしょう」
「そうなんだ……」
私の話を聞いたカナ姉がなぜか項垂れた。
私は落ち込んだカナ姉のことは気に留めず、解読を続ける。
「…………」
「るーるーるるるるるるーるー」
カナ姉が何だか物悲しいメロディを口ずさむ。
なんか聴いてるこっちまで悲しくなるからやめて欲しい。
「……ったくもう、カナ姉、ちょっと静かにしてて!」
私は不貞腐れてるカナ姉の唇を自分の唇で塞ぐ。
「……んっ? …………ぷはぁっ。ちょっとナギサ? いきなりするなんてズルい……」
カナ姉が恍惚の表情で訴える。
「……なら、今からもっと凄いことするよ」
私はカナ姉にそう告げる。
「も、もっと凄いこと……?」
カナ姉が焦ったような、待ち焦がれるような、複雑な表情になる。
私はカナ姉に抱き付くと、耳たぶに息を吹きかけながら、カナ姉の背中に手を回し、ブラのホックに手をかける――
バタリと音を立てて、カナ姉が気絶した。
ふふっ、カナ姉も最近は、フレンチキスくらいまでは耐えられるようになったみたいだけど、相変わらずえっちな事になると気絶するのは変わらないね。
私はカナ姉をそっと寝かせて、解読を続けた。
◆ ◆ ◆
「カナ姉、起きて。解読できたよ」
私はカナ姉の肩をユサユサと揺らして起こそうとしているが、なかなか起きてくれない。
それにしてもカナ姉はホントに美人だ。パパ……じゃなかった、お父さんが惚れちゃうのも頷ける。
ん? でも、もしカナ姉がお父さんと結婚したら、ママになっちゃうのかな?
私はカナ姉がママになってくれても嬉しいけど、そうなると今までの関係では居られなくなるかなぁ〜。
それはちょっと困るかも……
私は、寝ているカナ姉の上に覆い被さると、カナ姉の頬っぺたにそっと両手を触れさせていつもより長めのキスをする。
全身でカナ姉の温もりを感じていると、私はいつの間にか眠りに落ちてしまうのだった。
◆ ◆ ◆
気がつくと、カナ姉の上で眠っていたらしい私の頭を、カナ姉が優しく撫でてくれていた。
「あっ、起きた。……ナギサ、おはよう」
カナ姉が優しい声で私に語りかける。
私も挨拶を返さないと……
「ママ、おはよう……」
「ふふっ、ナギサってば、まだまだ子供ね」
ママが私を撫でながらそう言った。
「ん〜? ナギサ、子供じゃないもん。もう十歳だよ」
私が言うと、ママが微笑む。
「うんうん、ナギサは最近ずっと頑張ってたもんね、ちゃんと見てたよ」
ママは私をさらに撫でる。すごく気持ちいい。
私はママのオッパイに顔を埋めて……あれ? ママじゃない?
私は、ゆっくりとその胸から顔を離して、持ち主の顔をマジマジと眺める。
「…………」
少し長めの沈黙が流れる。
「わわっ、カナ姉? さ、さっきのは寝ぼけてただけで――」
「ふふっ、可愛かったわよ。私のナギサ……」
私は恥ずかしさのあまり、全身から火が出たように真っ赤になった。
カナ姉はそんな私を微笑みながらいつまでも撫で続けるのだった。




