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第二十一話 依田咲耶という人物

 ―― ■ 華菜視点 ■ ――


 私が目を覚ますと、咲耶ちゃんが私の顔を覗き込んでいました。

 私は……え〜っと確か、咲耶ちゃんに顎を撫でられてキスされそうになったんだっけ?


 その時のことを思い出して赤面している私に、咲耶ちゃんが話しかけました。


「華菜、ゴメンね。華菜のことはナギサちゃんと同じくらい好きだけど、これからは華菜が気絶しないよう大事にするね。

 でも、その結果、ナギサちゃんのほうがスキンシップが多くなっちゃうけど、それは許して欲しいな」


 そうでした。咲耶ちゃんがナギサちゃんに構いすぎているので、嫉妬……なのでしょうか? ――をしてしまった私は、その後、咲耶ちゃんに迫られて気を失ったようです。


 私は咲耶ちゃんが、私よりナギサちゃんのほうを構いすぎていることは、別に気にしていません。


「大丈夫〜。私も咲耶ちゃんとナギサちゃんは、同じくらい好きだから〜。

 ちゃんと咲耶ちゃんの重すぎる愛(・・・・・)も受け止められるように頑張るね〜」


 私がそう言うと、なぜか咲耶ちゃんが落ち込んでブツブツ言い始めました。


 何をブツブツ言ってるのかな? と思って、治癒魔法で聴力の感度を極限まで高めると、咲耶ちゃんのブツブツが明瞭に聞こえてきます。


「……すぎる。私の愛が、重すぎる。私の……」


 どうやら咲耶ちゃんは自分の愛情表現が過激だということに気づいていなかったみたいです。

 さっき私がうっかり言ってしまった『重すぎる愛』という部分が相当ショックだったのでしょう。

 この様子だと今さら訂正しても意味がなさそうです。

 私は咲耶ちゃんに気づかれないようにこっそり治癒魔法で心の傷を癒してあげました。


 少しすると、治癒魔法の効果で、咲耶ちゃんは落ち着いてきたようです。

 咲耶ちゃんは私に一言だけ言います。


「じゃあ華菜、本当にゴメンね。」


 そしてそのまま咲耶ちゃんは神様と話を始めました。

 いったい何の話でしょうか? 私はそのまま聞き耳を立て続けます――――



 ―― ■ ナギサ視点 ■ ――


 サクヤおねえちゃんは、目をさましたカナおねえちゃんとのお話が終わったら、今度は神さまとお話を始めました。


 それにしても、さっきのサクヤおねえちゃんにはビックリです。

 私がキスされそうなところを助けに来てくれた神さまとお話をして、そのあとすぐにカナおねえちゃんにキスしようとして、カナおねえちゃんがキゼツして、それから神さまとキスしようとしました。


 もしかしたらサクヤおねえちゃんは、だれでもキスするのかもしれません。

 えっと、こういうのはユダンタイテキ……って言うのかな? とにかくサクヤおねえちゃんのすることには気をつけないとダメです。


 わたしは、サクヤおねえちゃんが神さまと何のお話をしてるのか気になって、サクヤおねえちゃんに気づかれないように、そっと近づいて行きました――――



 ―― ■ 神さま視点 ■ ――


 あたいは、咲耶ちゃんに今回訪れた本当の目的を伝えるため、あるノートを渡した。

 華菜ちゃんとナギサちゃんが聞き耳を立て始めたのは気づいているが、別に聞かれて困るからノートで伝えるという訳ではない。これが決定事項だったからだ。


 このノートは、他の神々との会議で決まったことが書かれている、いわば議事録である。

 普通ならこんな重大なものを人間に見せるものではないのだが、それだけ咲耶ちゃんにとって重大な内容なのだ。今回は特例という形で他の神々に許可してもらった。


 ノートを見終えた咲耶ちゃんは神妙な表情をして、あたいにノートを返してくれた。


「もう、分かってくれたかな?」


 あたいがそう聞くと、咲耶ちゃんは少し戸惑いの表情を見せたあと、あたいに答えた。


「神さま、少しだけ時間をくれませんか?」


 咲耶ちゃんが何をしようとしているのか、あたいにはお見通しだ。

 本当は、ここで許可をしてはいけないのだけれど、あたいは掟を破って許可をした(・・・・・・・・・・)


 咲耶ちゃんはナギサちゃんに抱きついて、大人のキス(・・・・・)をする。

 ナギサちゃんはいきなりのことでビックリして固まっているが、あたいは止めない。


 行為が終わると、咲耶ちゃんは華菜ちゃんにも同じようにキスをした。

 華菜ちゃんはいつもみたいに気絶してしまうが、咲耶ちゃんは構わず続けた。


 咲耶ちゃんはナギサちゃんに伝える。


「ナギサちゃん、ちょっと用事が出来ちゃったんで神様と出かけてくるね。

 それで、帰ってこれるのがいつになるか分からないから、華菜にはそう伝えておいて。

 あと、何かあったらナギサちゃんが華菜のことを助けてあげてね。それで――」


 咲耶ちゃんはナギサちゃんにだけ聞こえるように、とても小さな声で耳打ちする。――尤も、あたいにはその内容が丸わかりだけれどね。


 咲耶ちゃんがナギサちゃんに話を終えると、ナギサちゃんが涙目になっている。


「サクヤおねえちゃん、もしかして、もう会えないのニャ?」


 すると、咲耶ちゃんはナギサちゃんの問いに答える。


「大丈夫だよ。私、ちゃんと用事が終わったら帰ってくるから……。

 私が帰ってきたら、一緒にナギサちゃんが大好きなケーキを食べようね。

 それで私と華菜とナギサちゃんの三人で毎日パーティしよう。

 私、絶対にすぐ帰ってくるから。私がナギサちゃんを悲しませる筈が無いでしょう?

 だって私、ナギサちゃんの事、ホンキで愛してるから……。

 そうだ、全部終わったら私と結婚しよう。この世界だったら、男とか女とかそういうの関係ないし。

 だから、私が帰ってくるの、華菜と一緒に待ってて……ねっ」


 咲耶ちゃんってば、わざと死亡フラグっぽいことを言ってるね。割と自分に酔うタイプなのかな?


「じゃあ咲耶ちゃん、そろそろ時間だし、行こうか。神の国(・・・)へ……」


 あたいがそういうと、咲耶ちゃんは頷いて、ナギサちゃんに別れの挨拶をする。


「それじゃあナギサちゃん、元気でね。バイバイ……」


 咲耶ちゃんは覚悟を決めた様子でナギサちゃんに精いっぱいの元気な挨拶をしていた。


 そして、あたいは咲耶ちゃんを連れて、この亜空間から消え去った。――


 消える瞬間に、あたいは何かを期待して、亜空間に『特A級危険分子、依田咲耶の処遇に関する決議事項』と書かれた一冊のノートを残しておくのだった。

次回より主人公が変わります。

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