第二十話 この咲耶はいつでも変態です
私は、ナギサちゃんにシッポが生えていることを無事確認出来たので、旅行をもう続ける意味がなくなっていた。
他の皆んなに聞いてみても特に用がなさそうだったので、私たちはホテルをチェックアウトし、自分たちの家に帰ってきた。
「ふぅ〜っ。やっぱり我が家が一番落ち着くね〜」
私がそう言うと、皆んなも頷く。
特にナギサちゃんは、ヘッドバンキングをしてるかの如く激しく頷いている。
「ナギサちゃんは、温泉旅行楽しくなかったの?」
私がそう聞くと、ナギサちゃんは私の傍まで来て小さな声で話しかける。
「サクヤおねえちゃんだけは知ってるから言うけど、わたし、シッポ見られるんじゃないかと思って、ずっとキンチョウしてたニャ」
耳元で囁くナギサちゃんの声に私は蕩けそうになる。ナギサちゃん、いつの間にこんなテクニックを……
私はナギサちゃんのお尻をまさぐり、それを確認する。うん、やっぱりちゃんと生えてるんだね。
突然わたしに触られたナギサちゃんは身をよじりながら、
「もう、サクヤおねえちゃん。あんまりさわらないでニャ」――と言った。
ほんの少し前までは『お触り禁止』だったから、触られることに対して随分と抵抗が無くなってきているようだ。
きっとこのままいけば来週あたりには『ずっと触っててくれないと死んじゃう』とか言い出すに違いない。
私はナギサちゃんとの関係がそうなることを確信し、頭の中で最適なルートをシミュレートする。
そんな私の様子に気づいたナギサちゃんは、頬っぺたをプク〜っと膨らませながらこちらを見ている。
ナギサちゃんは私より背が低いから、どんなにキツイ顔で睨んできても必ず上目遣いになり、結果的に愛くるしい表情を私に見せていることになるのだが、本人は気付いていないようだ。
私は無言でナギサちゃんの頬っぺたを両手で押さえ込んで膨らんだ空気を抜く。
『ぷふぅ〜』と音を立てながらナギサちゃんは普通の顔に戻る。
私はナギサちゃんの頬っぺたを押さえ込んだまま、抵抗できないナギサちゃんの唇に自分の唇を近づけていく。
あと五ミリでキスできるというところで突然――――
『でんぱじゃ〜っく』
……くっ、いいところだったのに神様に邪魔をされた。
「咲耶ちゃん、邪魔しちゃってゴメンね。
でもナギサちゃんがあたいに助けてって願ってたから助けに来たの。だから、あんまりイジメないようにしてあげてね。
あと、華菜ちゃんが泣いてるよ。咲耶ちゃん、最近華菜ちゃんの事あんまり相手してないでしょう」
神様がそんなことを言う。
「えっ? 華菜が泣いてる?」
私は華菜のほうを見る。
華菜は私の視線に気づくと、にこにこと笑いながら手を振った。
私は手を振り返しながら、先ほどまでの華菜の表情を思い返す。確かに少し元気のない表情だった。
私は華菜を抱きしめて、ひたすら謝る。
「ゴメンね華菜。華菜のことも大好きだけど、ナギサちゃんがあまりにも可愛すぎるから、ついつい吸い込まれちゃうの。
あっ、もちろん華菜だって物凄く可愛いからね」
そう言うと私は、華菜の顎に手を添えてクイッと持ち上げる。いわゆる顎クイというやつだ。
「咲耶……ちゃ……」――――
顎クイをされた華菜は、私に何かを言おうとして、そのまま失神した。
えええぇーっ? 華菜って、このあいだ靴下脱がされただけで気絶してたけど、ここまで耐性なかったのぉ〜?
私はポカンとした表情のまま、神様のほうを見る。
「大丈夫なの。咲耶ちゃんの変態性が以前より何十倍も強くなってるだけなの。
今の咲耶ちゃんなら声だけでも華菜ちゃんを倒せると思うよ」
神様はそう言うと親指を立ててみせる。いや、そんなことされても意味わかんないから……。
華菜が気絶しちゃったので、私は神様に話しかける。
「ところで、神様は何か用があってここに来たんでしょう?」
神様はそれを聞くと首を横に振り答えた。
「違うよ。ナギサちゃんを助けに来たのも違うけど……」――
私が首を傾げていると神様はさらに続ける。
「面白そうだったから見に来ただけなの」
くだらない理由だった。そんな意味もない理由でナギサちゃんにキスするのを止められたの?
「もう、神様ひどいですよ。罰としてナギサちゃんの代わりに、私とエッチなことして下さいよ」
私は神様に無理なお願いをする。この神様、幼い見た目だけれど私好みの美人さんなのだ。
神様がこんな無理なお願いでも叶えてくれるようだ。
「うん、いいよ。咲耶ちゃんとエッチなことしてあげる。
あたいは神様だから、大人にだって、男の人にだって、人間以外だって、どんな姿にもなれちゃうから、ちゃんと覚悟しといてね、咲耶ちゃん」
えっ? なんか嫌な予感がするんですけど……
神様は、みるみる姿を変えてゆく。そっ、その姿はッ――
「おっ、お父さん?」
なんと、神様は私のお父さんの姿に変身したのだった。
お父さんの姿に変わった神様が、お父さんの声で私に言う。
「咲耶、実はずっと前からお前を抱きたいと思っていたんだ」
そう言ってお父さ――神様は服を脱ぎ始める。
「わあああぁ〜っ、やめてえぇ〜っ。私のお父さんの姿でそんなことしないでエェ〜」
私は神様に必死に懇願する。
お父さんの姿をした神様は下着姿のままで私の顎をクイッとやって――
「咲耶、俺はお前とエッチなことしたいといつでも思っている……」
ひいぃーーっ。やめてええー、お父さんの姿でそんなこと言うのはホントにマズイってば……
「……咲耶ちゃんはあたいとエッチなことしたかったんじゃないの? あたいはいつでも大歓迎だよ」
神様は、そう言いながら幼女の姿に戻った。
神様こわい。私は必死に謝りながら、二度と神様にこんなお願いしないと心に決めたのでした。




