第十五話 温泉旅行その一
ハゲテールとマリエルが仲間になってからは、私たちの生活は安定していた。
「サクヤ様、有名パティシエのケーキ店で一日二十個限定のケーキを買って参りました」
執事服に身を包んだハゲテールがテーブルにケーキを置きながら言う。
「はぁ? 私が頼んだのは一日五個限定のスイーツよ。こんないつでも買えるような物を持ってこないでくれるかしら。これは要らないから捨ててきて頂戴」
私が怒鳴りつけるとハゲテールは『くッ、なんで吾輩がこんな事を……』とブツブツと文句を言いながら姿を消した。
ハゲテールと入れ替わるように、メイド服に身を包んだマリエルが晩御飯を持ってくる。
「サクヤ様、食事の準備が出来たのじゃ」
私は一口食べると皿ごと床に放り投げる。
「何これ、全然美味しく無いわ。作り直してきなさい」
マリエルは『妾の自信作だったのに……』と目に涙を浮かべながら部屋を後にした。
「全く、あの二人は文句ばかり言ってマトモに仕事もできないのかしら。明日からもっと厳しく躾けないといけないわね……」
私が二人の態度に苛立って文句を垂れているところに華菜とナギサちゃんがやって来た。
「サクヤおねえちゃん、なんだかイジワルなおじょうさまみたいニャ」
ナギサちゃんがおかしなことを言ってくる。
「ん? ナギサちゃん、私は別に意地悪な事なんてしてないわよ。」
私はナギサちゃんにそう言いつつその隣にいた華菜を見る。華菜は私のことをなんだか変な目で見ている。
「どうしたの華菜? 私とエッチなことでもしたくなった? 私ならいつでも大歓迎だよ」
私がそう言うと、華菜はナギサちゃんと何やらヒソヒソ話し出した。一体どうしたっていうの?
暫くすると、華菜が口を開いた。
「サクヤ、あなた疲れてるのよ」
……私はモ○ダー捜査官かッ! 私が心の中でツッコミを入れていると、ナギサちゃんが声をかけてきた。
「あのね、サクヤおねえちゃんが、さいきん何だか、つかれてるみたいだったから、みんなでオンセンに行こうっていう話になったんだけど、いっしょに行ってくれますかニャ?」
「えっ? 温泉? 行く行く。絶対行くッ! ナギサちゃんの裸が見たいッ!」
私は即答した。
「あっ、やっぱりさっきの話はなかったことにしたいニャ――」
ナギサちゃんが取り消そうとするが私はそれを許さない。
「そうと決まったら、早速出かけましょう。みんな、今から行くから今すぐ準備して!
今すぐだよ! 四十秒も待ってられないからね!」
私はそう言うとカウントダウンを始める。
人間というのは不思議なもので突然カウントダウンをされると勝手に焦り出し、『例えやりたくなかったことでも』従い始める……ような気がする。
「三十九、三十八、三十七……」
私はワザと少し早めのペースで数える。
すると、ナギサちゃんは慌ててカバンに服を詰めたりしはじめた。他のみんなは呆気にとられているようだ。
「……十、九、八、七、六五四三二一、零」
最後は足早に数えた。
まだ誰も準備が終わってないようだが、私は構わず玄関を開く。
我が家の玄関は、とある高級ホテルの玄関に直接繋がっていた。今日はこのホテルに泊まる予定だ。
ちなみに家とホテルを繋いだゲートは家からの一方通行なので他の人間が家に入ってくることはないし、家の中の様子を見られる心配もない。
ホテル側に入ってからゲートのほうを見ると、目の前には立派な温泉街が広がっていた。
私はフロントに行くと最上階のスイートルームと三階のツインルームの二部屋のキーを受け取る。
部屋がすぐに取れたのではなく、先ほどカウントダウンしていた四十秒の間にインターネットで一年前のホテルに接続して予約を入れていたのだ。
部屋を二部屋に分けたのは男女別々に寝るためだ。下僕夫婦はダブルにしてあげても良かったんだけれど、下僕ごときにそんなことしてあげる道理はない。
そんな訳で私たちの温泉宿一泊二日の旅(?)が始まった。
その一としてみたけれど、次話がどうなるか未定です。もしかしたら短くなったりするかも?
あと、モ○ダー捜査官が分からない人はゴメンなさい。




