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第十三話 ナギサちゃん負ける

 ナギサちゃんと元魔王ハゲテールが戦うには家の中では流石に狭すぎる。


 私がゲートを開こうとしたら魔王がパチンと指を鳴らし、突然周りの光景が荒野と化した。


「ククク……。今のはただの転移魔法だ。あの空間ではお互い存分に戦えぬだろうからな」


 ハゲテールがそう言って余裕の態度を見せる。名前の割にイケメンだから少し惚れそうになるのをグッと堪える。きっとイケメンに見えるのは吸血鬼の特徴の一つ魅了(チャーム)の魔法でも使っているんだろう。


 私は決して同性愛者では無く『単に男より女の子の方が好きなだけの』普通の女の子なのだが、そんな私でもこれだけ魅了されてしまうのだ。

 華菜やナギサちゃんが心配になって二人の方を見ると……あれれ〜? なんか華菜の目がハートマークになってるんですけど〜?


「ああっ華菜、そいつの姿に惑わされないで。そいつは敵よ」


 私は二人を抱き止める。その直後予測しない事態が起きた――


 ああ〜、二人とも私と同じシャンプーの筈なのになんだかとってもいい匂いがするぅ〜。ダメよ私、今は非常事態……なんだけど、これはどうしても抗えない〜ッ。私が二人を抱きしめながらクンカクンカと獣のように匂いを嗅いでいると、いつの間にか二人とも正気に戻っていた。


「もう咲耶ちゃん〜。変態行為はやめて欲しいんだけど今回は助かったみたい。ありがとう〜」

「サクヤおねえちゃん、ありがとうニャ」


 華菜とナギサちゃんがお礼を言う(・・・・・)


「ぱらりら・るりるり・めたもるちぇ〜んじ!」


ナギサちゃんが私のハグから解放されると、呪文を唱えて魔法少女に変身した。


今日は場所が広いから転移した直後に設置しておいたビデオカメラで三百六十度全方位から変身シーンを撮影してみたけれどやっぱり謎の光さんには勝てなかった。


「えっとえっと〜、あっこれだニャ! 『あまた(数多)? の世界の悪を ()? ち、美少女達を まも()? るため、今日も戦う銀の ほのお()? 、まほうしょうじょナギサちゃん、 かれい(華麗)? に 参上(さんじょー)?』……ふぅ、なんとかいえたニャ」


 ナギサちゃんは、昨日私が転生祝いに作ってあげた『名乗り口上を書いた紙』を頑張って読んでくれた。うんうん、やっぱりこれが無いと魔法少女っぽく無いもんね。


「フン、随分とたどたどしい口上だが、そんなことで吾輩に勝とうなど笑止千万。まさか此度の戦いが初めてという訳ではあるまいな」


 ハゲテールが尋ねるとナギサちゃんが堂々と答える。


「今日が初めてだニャ。でもぜったいわたしが勝つニャ」


「フン、大した自信だな。良かろう、ならば貴様から先に仕掛けるが良い」


 ハゲテールはそう言うと先制攻撃をナギサちゃんに譲ってくれた。


「ナギサ、チャンスやで」――ミケにゃんがナギサちゃんを促す。


「じゃあ、いきますニャ――――ふぁいなるあろーッ」


 ファイナルアローとはナギサちゃんの切り札である。火・水・風・土・光・闇の全属性の最強魔法を一本の矢に凝縮して放つオリジナルの魔法だ。

 この魔法は、敵に当たると同時に探知魔法が発動し、相手が耐性を持っている属性は自動的に他の属性に切り替わるようにしてあるので、当たった者はひとたまりも無いはずだ。


 アマネが暴走した時の対策として用意した必殺技だけど、まさかこんなに早く使うときが来るとは……


 ファイナルアローは、ハゲテールに当たると眩い光を放って消滅した。


「やったか?――」タクローがベタな負けフラグを発する。


「あっ、バカっ!」

 私がタクローを止めようとしたが既に遅かった。


 ハゲテールは傷一つ負っていない。


「フン、なかなかの魔法だったが吾輩には効かぬ。それでは吾輩も攻撃させて貰おうか。覚悟するが良い」


 ハゲテールはそう言うと無数の蝙蝠に姿を変えた。そしてあらゆる角度からナギサちゃんに向かって突撃する。

ナギサちゃんの全身に徐々に蝙蝠が群がって行く。手に、足に、頭に、ナギサちゃんの幼い身体全体に無数の蝙蝠がまとわりついて離れない。


「いやぁあああっ、こないでえぇぇえっ」


 ナギサちゃんは始めのうちは悲鳴をあげて抵抗していたが、その声は次第に呻き声に変わって行く。


 そして、ナギサちゃんは遂に気絶して声を発することすら出来なくなってしまったようだ。


 すると蝙蝠たちは一斉に攻撃をやめて、ナギサちゃんから離れて行き、一つ所に集まると、ハゲテールの姿に戻って勝利宣言をする。


「フン、他愛無い。吾輩の敵ですらなかったわ。さあ、約束通り貴様らには永遠に子作りをし続けてもらうぞ。貴様らの負けだ」

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