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第十二話 六人目の転生者

 ――咲耶さん、そろそろ次の転生者が覚醒されますのでよろしくお願いします。


 神様からいろいろ聞かされた翌日、アマネが新しいメンバーの追加を知らせてきた。


 この異世界転生には法則がある。

 転生した順に名前を挙げると『アマネ』『華菜』『咲耶』『タクロー』『ナギサ』と、頭文字がアカサタナの順に並んでいるのだ。

 その為、次に転生する人物は『ハ』で始まる名前なのかと以前アマネに聞いてみたら『そんな訳無いじゃないですか』と言っていた。


 つまり次は『ハ』で始まる名前ではないということらしい。


「ピンポーン」


 今のは発声練習だ! それを聞いていたナギサちゃんが思わずビクッとする。


「もぉ〜、サクヤおねえちゃん、ビックリするからそういうのはやめてほしいニャ」


 ナギサちゃんが涙目で頬を膨らませながら訴えてきた。ああ、怒った表情も可愛い。


「あはは、ゴメンね。ナギサちゃ――」

 私が言い終わる前に玄関のチャイムが鳴る。


『ピンポーン』


 突然鳴ったので私も思わずビクッとなってしまった。


 それを見ていたナギサちゃんが優しい笑顔になる。


 私は赤面した顔を思わず両手で隠す。そんなやり取りをしていると華菜が玄関に応対してくれた。


「は〜い、どちらさまですか〜?」


「こんにちは〜。宅配便をお届けに上がりました。」


 あ、私が昨日ネットで注文した商品だ。もう届いたのか、思ったより早かったなぁ〜。


 私はいそいそとハンコを持って玄関に向かう。

 私が宅配便を受け取っていると後ろで見ていた三人が呆れ顔で見ていた。業者が帰ると華菜が口を開いた。


「咲耶ちゃん〜、なんで宅配便が『亜空間』にある家に来れるのかな〜? とか、召喚魔法を使ってアイテムを直接手に入れれば良いんじゃないの〜? とか、いろいろ突っ込みどころが多いんだけど

 ……これって一体どういうことなの〜?」


「あれ、説明してなかったっけ?

 あのね華菜、昨日此処がアマネの内部の世界(心の中)じゃないってわかったから、とりあえずこの家の玄関内側にワープゲートを取り付けて他の世界と自由に繋がるようにしてみたんだよね。

 あとネット回線も引いたから試しに通販サイトで買い物してみたの。これで皆んな私のスキルに頼らなくても良くなるね」


 私が自信満々に言うと華菜が溜息を一つ吐いて言う。


「でも〜、此処では咲耶ちゃんのスキルが無くても『形のある物』は誰でも自由に手に入るから、ネット回線も宅配便も全く使う意味がないよ〜」


 ……そうだった。私のスキル、此処では形の無い物の召喚くらいしか使い道が無いんだった。


「まあ、さっきのは実験ってことで……。とりあえずこれでどんな世界でもこの部屋から行けることになったよ。

 さすがに一度死んだ私たちが転生前の世界に戻るのは倫理的にダメかなと思うけど、さっきみたいに前世で関わりの無い人に一時的に来てもらう分には良いと思う。

 数多(あまた)の世界に繋がるから、多分アマネのいる世界にも繋がってると思う。

 要するにこれはアマネを此処に呼んだり私たちがアマネの居る所に身体ごと行けるようにする為の新しい移動手段なんだよ」


 私の話を聞いていた皆んなが感心する。まあ嘘八百なんだけど実際に出来そうな気はしている。


「さてと、六人目も未だ来ないみたいだし、とりあえず皆んなリビングに戻ろうか……」


 私たちは玄関を後にし、リビングに向かった。


 ◆  ◆  ◆


 リビングに戻った私たちは知らない男が知らない女の首筋にキスをしているのを見て固まった。

 否、よく見るとキスというより男が女性の血を吸っているように見える。

 もしかするとこの男は吸血鬼なのだろうか。


「あの――」私が恐る恐る声を掛けようとすると男が右手を挙げてそれを制止し、ハンカチで口元を丁寧に拭き取りこちらに向き直る。

 一方、血を吸われていた女性は恨めしそうに私たちのほうを見たかと思うと、男の唇に軽く接吻をしてから姿勢を正した。


 二人がこちらに向き直ると、男の方が話し始めた。


「フン、随分遅かったではないか。下等生物どもよ。吾輩は(かつ)て異界の地にて魔王をしていた偉大なる吸血一族の王『ハゲテール』である。

 魔王業を三千年程続けていたが飽きたのでな。此処の神に転生させたのだ。

 今はただの吸血鬼に過ぎぬが(やが)てはこちらの世界を統べる王となるつもりだ」


 吸血鬼に続いて先ほど血を吸われていた女性が話し始める。


(わらわ)淫魔(サキュバス)の国の元皇女『マリエル』と云う者じゃ。

 国を追われていたところをハゲテール様に助けられてからは侍従をさせてもらっておる。

 主人様(あるじさま)が転生される際に妾も一緒に転生してきたのじゃ」――


「要するに吾輩の嫁だ。」とハゲテールが補足した。


 うーむ、ハゲテールにマリエル……。アマネはああ言っていたけど、どう考えてもアカサタナの延長だった。


「さて、下等生物どもよ。貴様らには吾輩の空腹を満たすほどの価値も無いが、幸いオスが一匹とメスが三匹居るようだ。

 人間の赤子の血は美味である(ゆえ)、貴様らは吾輩のために死ぬまで子を産み献上し続けろ。

 そうすれば貴様らの命は奪わないと約束しよう」


 ハゲテールがとんでもない提案をしてきた。


「い、嫌よ。なんで私がタクローなんかと……」

「赤ちゃんを食べられちゃうなんて死んじゃうほど悲しいです〜」

「えっ? えっ? どういうことニャ?」

「ダメです。僕は妻以外の人とは浮気しないと心に決めています。ましてや娘とだなんて……」


 私、華菜、ナギサちゃん、タクローが口々に不満を述べる。ナギサちゃんは状況をよくわかってないだけみたいだが……


 タクローの言葉にマリエルが反応した。


(うるさ)いのじゃ。主人様の御言葉は絶対なのじゃ。

 とっとと黙って子供を孕ませよ。もしその気になれぬと言うのならば、妾が力を貸してやろう。

 おぬしが眠っている間に子供を作らせてやるから安心するがよい」


 うわ〜、なんか本格的にヤバイよ。絶体絶命のピンチだよ。此処には消滅スキルの使えるアマネも居ないし、このままだと十八禁な展開になっちゃうよ~~っ。


 すると、華菜が落ち着いた態度で提案する。

「だったら、こうしましょう〜。此処(ここ)にいるナギサちゃんと、其処(そこ)の元魔王さんが対決して、もしナギサちゃんが勝ったら『今回の話は無し』ということで〜」


「うむ、そこの幼な子ごときが吾輩に勝てるとは到底思えぬのだが、もしそれが出来るというのならばその条件呑んでも良かろう。

 そうだな、その暁には吾輩とマリエルは貴様らの下僕となってやっても良い」


 ハゲテールが余裕綽々(しゃくしゃく)で提案に応じる。


「では、交渉成立ということで良いですね〜。

 さあ、ナギサちゃん。思いっきり魔王さんを倒しちゃってくださいね〜」


 華菜の言葉にナギサちゃんは意気軒昂(いきけんこう)たる表情で応えた。


「まかせてほしいニャ。この『ねこみみまほうしょうじょナギサちゃん』が、『まおう』さんをやっつけちゃうニャ」


 こうして、ナギサちゃんと魔王の一騎討ちが始まるのだった。

魔王「禿げてないですよ」

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