第九話 観戦
私、華菜、タクローとナギサちゃんの『現控え室組四人』はリビングでケーキを食べながら、オモテの世界で活動中のアマネを観察していた。
アマネは現在、冒険者ランクCになっているようだ。
あちらの世界の冒険者ギルドのことは詳しくわからないけれどアマネの話によるとEランクからSランクまであるらしいので、おそらく平均的なランクなのだろう。
……いや、アマネの現在の年齢がまだ十五歳である事を鑑みるとかなり成長が早いのかもしれない。
暫く様子を見ているとアマネは冒険者ギルドで一つのクエストを受けたようだ。
そのクエストとは――『スライム討伐』
「んん〜っ? スライムって雑魚モンスターじゃないの?」
私は疑問に思ってテレビの向こうにいるアマネに問いかける。
するとアマネからの回答がテレビのスピーカーから流れた。
――咲耶さん、それはとんでもない誤解です。
あなたたちの遊んでいるゲームでは最弱モンスターとして登場するようですが、こちらの世界では『見つかったら最期』とまで言われるほどの凶悪なモンスターとして恐れられています。
何しろ、触れた瞬間に武器は溶け出し、生きている物ならば腐り出してしまうため、物理攻撃をするのは不可能ですし、こちらのスライムは魔法耐性が非常に高すぎて、魔法が全くと言っていいほど効きません。
さらに、あらゆる物を取り込んで増殖するという恐ろしい特性まで持ち合わせています。
炎で燃やすというのが唯一の対処法なのですが、洞窟内で遭遇した場合は自殺行為となる為、スライム討伐は高ランクパーティ向けのクエストに認定されています。
なるほど、それは厄介だ。私たちはアマネがどうやって戦うのか興味が湧いた為、今回のクエストを観戦させてもらうことにした。
「そういえば、アマネっていつ見てもソロでクエストしてるみたいだけど、知り合いとか居ないの?」
私はふと思った疑問をアマネに投げかけた。
――いえ、他の人間に関わるとあなたたちがこちらに出て来づらくなると思うので、仲間は作っていません。
成る程、アマネは私たちの為という名目で敢えて仲間を作らないのか。素晴らしい考えだなぁ〜。
私はアマネの言動の奥深さに思わず涙を零すのだった。
アマネの受けたクエスト――スライム討伐――は、どうやら鉱山の中で行われるらしい。この中で火を使えば当然酸欠になるだろう。
更に今回のクエストは『鉱石を出来るだけ損壊させないで欲しい。』という無茶苦茶な条件まで付いていた。鉱石だってスライムに触れられたら立ち所に溶けてスライム化するのに……。
これ普通に考えたらSランク級の騎士団とか軍隊でもない限り無理なんじゃないかなと思うのだけれど……
アマネは黙々と魔法でスライムを消していく。
えっ、ちょっと待って。確か魔法は効かないんじゃなかったっけ?
私はもう一度アマネが何をしているのか確認する。
「……あっ、もしかしてこれ魔法じゃなくて『天使のスキル』なの?」
私がアマネに問いかけると想像通りの応えが返ってきた。
――良くわかりましたね咲耶さん。これは生態系操作スキルの一つ『消滅』です。
生きているものなら大抵の物の存在を無かった事にできます
ひえぇ〜っ! チートとかいうレベルじゃない程の恐ろしいスキルだった。アマネさんマジ怖い。
私たちは天使の蹂躙劇が終わるまで、ひたすら目を瞑って時がすぎるのを祈り続けるのだった。




