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0.とある日記の切れ端

 最初の数ページのみが焼却をまぬがれた、とある革表紙の日記から抜粋。閲覧後は重要保管庫に厳重に再保管を願う。


 

 ーー私は、竜だ。

 それ以外の何者でもない姿をしている。小山と遜色のない体躯を持つ、所詮は羽の生えたトカゲだとも割り切っていた。無駄に黒光りした鱗は夜闇にこそこそ紛れるためであり、口の中に象牙のような牙が並ぶのも、ただ獲物を食いやすくするためのはずだ。

 この世界で竜という生物は珍しいらしいが、その中でも私はヒエラルキーの最下層に位置するだろう。誰に聞いたからというわけでもない。すべて私の自己評価であり、雑魚竜としてのんびり生きていこうとした。なにしろ外の世界に出れば殺されると思ったから。

 私は誰でもない。眠りから覚めてみれば突然、竜として意識があっただけのハリボテの存在だ。眠る前や竜としての記憶すら残っていない、ただ漠然と元は竜ではないナニカであったとだけ思える、単なる臆病者の高尚じゃあないヒト......じゃなかった、竜である。もしかしたら私は人間だったのかもしれないな。

 ともかく、こんな臆病な野生動物として生まれた私は、幸い目覚めた巣が山奥だったのをいいことに引きこもりになろうとしたのだった。働け? 住処だった山にある建物といえば、ハローワークじゃなくて怪しい魔法使いの爺さんの家だけだったよ。それに働かなくとも飲まず食わずで生きていけた。生きることだけならば不便なぞ感じない生物に変わっていたから。

 ーーフゥ! これで自由に怠惰を(むさぼ)れるぜ! ハーレムとか財宝とかよりとにかくニートだニート!

 そう思っていた時期が、私にもあった。

 もう一度言う。

 私はただ、静かに暮らしたかっただけだ。

 思えば私の完璧引きこもり生活が崩れたきっかけは単なる気まぐれだった。魔王や不死者や人間や悪魔や天使のクソ野郎の影がちらつき始めてきたのは、まさに単なる気まぐれと些細な優越心に浸れる親切さが原因だったのだ。

 ここに記すのは日記のようなもの。信じようが信じまいが勝手にして欲しい。それを承知で私は書き連ねよう。

 すべての始まりは、私が一人の少女を助けてしまったことからだーーーー。

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