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気づいたらマスターでした。

とうとう魔界に来ました。しかし今回は説明回です。脱線しすぎて結構長くなりました。少し反省です。

数十分の放心の末、なんとか落ち着くことができたメディスです。魔界なうです。どうしてこうなった………。


「それは私がここへ連れてきたからですよ」


「人の思考に入ってくるんじゃありません」


これも魔族の力だというのか………!まぁ冗談はここまでにして。


「どうして俺をここに連れてきたの?」


「メディス様が私のマスターだからです」


「…………マスター?」


「はい!」


そんな眩しい笑顔で言われても……。心なしか蛇の下半身が左右に動いてるような気がする。犬ですかあなたは。


「なんで俺が君のマスターなの?」


「私とメディス様が契約したからですよ?」


「いつそんなことしたっけ?」


「シタじゃないですか」


ポッとミーアの顔が赤くなる。え、シタって何を?まさかナニを!?


「覚えてないのですか?」


「……ナニを?」


「何か今変じゃありませんでした?」


「いや、気にしないでくれ。それより俺たちは何をして契約しての?」


「キス、ですよ」


「………あぁ」


確かにしましたね。キス、または接吻、または口づけなどなど。言い方は色々あるがやることは一つ、お互いの口と口を重ね合うこと。

はい、しました。しましたよ?ほっぺにまでされちゃいましたもんね。でもね、キスっていうのはね………


「合意の元でやることだよね?」


「…………てへっ☆」


「ふんっ」


「あいた!」


全力でチョップをかましてやった。あなたそんなキャラじゃないでしょうに……。


「し、仕方ないじゃないですか!私だって色々考えましたよ!雰囲気はどうしたらいいかなーっとか、走って汗臭くないかなーっとか!」


「考えたのそこ!?」


「でも!我慢できなかったんです!あんなこと言われたことありませんでしたから!好きになっちゃうのも仕方ありません!!」


「いや今は好きとか関係なく……………今なんと?」


「我慢できなかったんです!」


「もうちょい後」


「あんなこと言われたことありませんでしたから!」


「あと少し!」


「好きになっちゃうのも仕方ありません!!」


「はいストップ!はいそこ!」


これはつまり…………どういうこと?


「………あ、好きってあれか。ライク的な意味でか」


「いえ、ラブ的な意味です」


「……………」


……………


「そうか、人間の中ではラブってことなのか」


「いいえ、異性としてラブです」


………ラミアに愛の告白されちゃった。


「いやあの、なんだ………なんて言えばいいんだろう。その━━ 」


「や、やっぱり迷惑でしたよね」


え?


「別にそんなことは……」


「いいんです。無理しないでください。魔族と人間なんて所詮こんなものだったんです」


「いや、ちょっと話を……」


「金輪際貴方の前には現れません。本当に申し訳ありま━━ 」


「ちょっと話を聞け!!」


まったく、一人で話を進めやがって。


「俺は迷惑だなんて思ってない。無理なんてしていない。ちょっと驚いただけで嬉しかったよ。金輪際会わないなんてそんな寂しいこと言わないでくれ。そして………泣かないでくれ」


ミーアはずっと涙を溜めて話していた。今にも溢れそうで見ていられなかった。


「う、うぅ………メディス様ぁ!!」


「うおっ!」


感極まったのか、ミーアは思いっきり抱きついてきた。


「あーあ、結局泣いちゃったな」


「だ、だってぇ、あんなこと言われてぇ、泣かないわけないじゃないですかぁ。メディス様!」


感極まりすぎたのか、蛇の部分まで俺に巻きつけてきた。ってえ!?


「ち、ちょっと、ミーアさん、嬉しいのは分かったからそろそろ離して……」


「メディス様!メディス様!」


「俺はここにいるから!どこにも行かないから!でもこのままじゃ俺逝っちゃうから!魔界(ここ)よりも物騒なところに逝っちゃうから!だから離してくれ!!」


「あぁ、メディス様ぁ……」


「なんで若干落ち着いた感じなんのに身体から変な音が聞こえてるの!?軋んでる!絶対これ軋んでる!骨が大変なことになってるって!お願いだから早く離し━━ 」


「メ・ディ・ス・さ・ま♡」(力いっぱいの抱きつき)


「ミーーーーーアーーーーー!!!!」(力いっぱいの懇願)


バキッ★


「ぎゃああああぁぁぁぁああああ!?!?!?」(力いっぱいの断末魔)


お願いだから……離して……く…………れ…….


***


数分後、目を覚ましたメディスです。身体中が痛いです。どうしてこうなった………。


「私が思いっきり抱きしめちゃったからです(ポッ)」


「だから人の心を読むんじゃありません!」


ポッてなんだ、ポッて。


「さて、キスした理由は分かった」


「はい、大好きです」


「………照れるからやめなさい」


「ふふっ、はーい」


何故普通にあんなことを言えるのか。このメディス、甚だ疑問である。


「契約っていうのは何のこと?」


一番の疑問はこれだ。俺はいつの間にこの子のマスターになったのか。


「契約というのは主従契約のことです。私が従者でメディス様が主様となっています」


「だから俺のことをマスターって呼んでたのか」


「はい。この主従契約は相手に自分の魔力を送り込むことで契約することができます。魔力を送り込むには両者の接触が必要なのです」


「だからキスしてきたわけね……ん?」


両者の接触が必要。それって……


「別にキスじゃなくてもいいじゃないのか?例えば手を繋ぐのも立派な接触だろ」


「唇、柔らかかったです」


「誤魔化そうとしてるのかしてないのか分からないよ……」


それにしてもキスにはそういう意味があったんだな。ということは今俺の中には魔力があるってことか。身体がなんか重いし熱い。


「ちょっと横になっていいか?」


「はい、どうぞ」


「………何故俺に向かって手を広げている?」


(ここ)にどうぞ」


つまり膝枕ってことですよね。ここはミーアに甘えさせてもらおうか。


「本当は抱き枕になりたいのですが……」


「やっぱり遠慮しようかな」


「今は我慢します!本番はベッドの上で!」


「女の子がそんなこと言っちゃいけません!」


そんなやりとりをしながら俺はミーアの膝を借りた。


「あぁ………」


思わず声が漏れてしまった。それ程ミーアの膝は柔らかく寝心地がよかった。さっきもしてもらっていたが、再度やってもらうと揺れる馬車の中でぐっすり眠れていた理由がよく分かる。


「寝心地はいかがですか?」


「とっても気持ちいいです」


「ふふ、それはなによりです」


あぁ……このまま寝てしまいそうだ。でもまだ契約のこと詳しく聞いてないし、寝るわけにはいけない。


「契約ってさ、具体的にどんな意味があるの?」


「幾つかありますよ。一つ目に魔力を通してお互いの位置とその周辺の様子が分かります。二つ目に頭の中で会話をすることができます」


頭の中で会話?テレパシーみたいなもの?


(その通りです)


へぇー結構べん………ん?あれ?口動いてた?


「もしかして………今やった?」


(はい。こんな感じです)


おぉ、なんかすごいな。これも魔法なら自分でやるのって初めてだし。


「とりあえず今は口で話してくれる?」


「はい。もちろんです」


再びミーアの口が動き出す。


「できることってその二つだけ?」


「はい。私ができるのはこの二つだけです」


「つまり俺だけができることがあるってことだな」


「正解です」


ふふっ、とミーアは微笑む。美人ってホントに笑顔が似合うよな。


「あ、ありがとうございます」


「え?もしかして声漏れてた?」


「い、いえ。その、伝わってきたといいますか……」


テレパシー、やっぱり不便かもしれない。


「これって聞こえないようにできないの?」


「念じればできると思いますが、どうですか?」


「ちょっとやってみる」


聞こえなくなれ、聞こえなくなれ、聞こえなくなれ………よしこれで念じるのはいいだろう。あとは確認だな。


「…………今の聞こえた?」


「いえ。なんとおっしゃったのですか?」


「膝枕気持ちいい」


「…………」


「?」


「…………(ボンッ!)」


「え!?」


いきなりミーアがなんか爆発した。そしてある声が聞こえてきた。


(ふ、不意打ちです!こんなの卑怯です!一回言ってもらいましたけど、メディス様から言ってくれるなんて思ってませんでした!)


あ、この子心の声ダダ漏れだ。


(でもでも気持ちいいってことは満足してもらえてるってことですよね。つ、つまりずっと膝枕されたいってことですよね!)


「おーい、ミーア?」


(つ、つ、つ、つまり!私を奥さんにしてずっと膝枕されたいってことですよね!!)


「そこまで言ってないよー。妄想はその辺にしよー」


(も、もうそこまで気持ちが伝わっていたなんて………。この勢いなら『大好きだよ、ミーア』なんて言ってもらえる日も近いはず!)


「大好きだよ、ミーア」


「ホントですか!?………え?」


「やっと戻ってきたか。ほら話の続きを聞かせてよ」


「…………聞こえてました?」


「奥さんは早すぎるんじゃないか?」


「………い」


「いやああああぁぁぁぁあああああ!!!!!」


「むごっ!?」


いきなり叫んだと思ったら、ミーアは膝枕をしたまま俺に覆い被さってきた。つまり大きな果実にプレスされて息ができない!


「見ないでください!私を見ないでぇぇぇ!!」


君のせいで目の前真っ暗だから。


「真っ赤ですから!絶対顔真っ赤ですから!!」


俺は絶対真っ青だよ。


「うぅ、穴があったら入りたいですぅ………」


俺は空気があったら吸いたいです。ていうかあ、ダメだ……だんだん気が……遠く………に…………


「うぅ…………あれ?メディス様?メディス様!?」


俺はまたしても気絶しました。そして数分後目が覚める俺。これ何回目?


「よし!過去のことは振り返らない!これからのことを話そうじゃないか!」


「はい!過去のことは忘れましょう!」


人は……前を向いて歩いて行くんだ!決して過去のことをあやふやにしているわけではない。


「メディス様、つまりマスターだけができることは従者の『呼び出し』と『命令』です」


ふむふむ、なんというかイメージ通りだな。でも命令ってことは従ってくれるってことだよな。よーし………


「犬の鳴き真似をしろ!」


「…………わん?」


「おぉっ!」


すごい!本当に命令できる!


「あの、メディス様。今の違いますよ?私が自分で言っただけですよ?」


「え?自分から『わん』って言ったってこと?まさかミーアにそんな特殊な一面が………!」


「貴方のためなら犬になるのもやぶさかではありません♡」


「冗談のつもりで言ったらとんでもない答えが返ってきた!?」


俺のためならってどういうこと?犬になるってどうやって?


「まぁ冗談はここまでにして」


(犬のようにメディス様にじゃれたいですけど)


「心の声聞こえてますよー?」


「………コホン。メディス様、ちょっとお手をお貸しください」


あ、無視した。と、手を貸せって?何かあるのかな?言われるがままに俺の手をミーアに差し出した。


「少し失礼します」


そう言うとミーアは袖をまくった。別にそんなところ怪我して………ん?


「あれ?何これ?」


俺の腕には何かが刻まれていた。これって刺青?蛇の刺青?のようなものが俺の腕にはいつの間にか存在していた。


「それが私との契約の証です」


俺の疑問にミーアは答えてくれた。テレパシーはしていない。しかし俺が戸惑うことを最初から分かっていたのだろう。


「腕に刻まれたのは『蛇人族の加護』です。契約加護は契約をして際に従者が魔族の場合のみ与えられる代物です。蛇人族の加護は魔法へある程度の耐性ができます」


「だからニルスは俺を燃やせなかったのか。うん?でもおかしいな。まだあの時は契約してなかったはず……」


「あの時、仮契約は済ませてましたから。お忘れですか?おまじないを」


あぁ、あれか。ほっぺにチュッってやつね。


「仮契約でも加護の効果はある程度の効果は発揮します。本契約の十分の一程度ですけどね」


ということはニルスの魔法はそれぐらいの強さしかなかったってことか。加護ってすごいな。ニルスの魔法って結構すごかったはずだけど、それも防ぐなんて。


「命令の説明に移りますね。従者に命令を下すには腕にある加護の印に触れる必要があります」


「つまり触りながら命令すればOKってこと?」


「その通りです」


意外と簡単にできるんだな。でも逆に………


「危なくないか?もし他人に触られて命令でもされたら……」


「ご心配はいりません。命令はメディス様自身が触れないと効力を発揮しません。そしてメディス様が触れたとしてもメディス様のご意志に背く命令できません」


俺に無理やり印に触れさせても命令できないってことか。つめり俺以外は絶対に命令をくだせないってことだな。


加護(これ)には感謝だな。そして加護をくれたミーアにも感謝してるよ。ありがとう」


「いえ。私がしたくてしたことですから」


ニコッとミーアは笑った。こんな形になったけどミーアと会えてよかった。でもなんか忘れてるような…………あ


「ユメのこと………完全に忘れてた」


ヤバイな。絶対怒ってる。早く帰らないと。


「悪い、ミーア。俺帰らなくちゃいけない」


「妹さんのことなら心配ないですよ」


「いや、絶対怒ってるって!………あれ?」


「どうしました?」


「なんで妹のこと知ってるの?」


確か話してないはずだけど。


「さて。そろそろ目的地に着きますかね」


明らかに話を逸らしたな。よし、試してみるか。俺は腕の加護に触れた。


「どうしてユメのことを知ってる?」


「魔法でメディス様の頭の中を見ました。………は!」


…………ちょっと理解が追いつかない。ある意味寝てる間に襲われてたってことだよな。


「ちなみにどうしてそんなことをした?」


「貴方のことを全て知りたかったからです。………は!!」


これは愛なのか?愛ゆえに仕方ないのか?


「ちなみに……」


俺の尋問がまだ続くと思ったのか、ミーアはバッとすぐさま口を両手で塞いだ。そんなことをしても無駄だと分かってるはずなのに。


「両手を後ろで組みなさい」


俺が命令すると両手がゆっくり口から離れていき最後には俺の命令通り後ろで両手を組んだ。


「さて、続けようか。他に俺が寝てる間に何かしてない?」


「キスしました。………は!!!」


………これも愛ゆえ……なのか?


「もうやめてぇ!恥ずかしさと罪悪感でどうにかなってしまいます!」


顔を真っ赤にして頭を横に振る。若干涙目で後ろに手を回しているため、俺が捕まえていじめているみたいになっている。ミーアのそんな姿を見てもやめたいと思わないのは何故だろう。まぁいい。続けようか。


「キス以外に何かした?」


「傷を治したいぐらいです」


ここにきてやっと安心できた。さすがにこれ以上変なことは━━


「でも」


「ん?」


「キスは10回以上しました。………は!!!!」


前言撤回。何も安心できない。完全に襲われていたじゃないか。


「最後に。今の気持ちは?」


「もう一回キスしたいです!………は!!!!!」


「羞恥心と罪悪感はどこいった!反省しなさい!」


恐ろしいことを知ってしまったような気がする。でも命令するのは楽しかったです。


「うぅ………もうメディス様のところにしかお嫁に行けません」


「俺のところも無理だからな」


「そんな!?あんなに何回も唇を重ねた仲なのに!」


「記憶を改ざんするんじゃない!襲っただけだから!」


こいつ……開き直りやがったな。


「そ、それよりも!妹さんのことは心配いりません!私が保障します!」


「いや、でもなぁ……」


「わ、私が信用できませんか?」


「ミーア………」


涙目で俺を伺うようにミーアは尋ねてきた。そんな悲しい顔をしないでくれよ……。


「そんな顔をしても信じられないものは信じられないんだ!」


だって襲われてたんだもん!


「ほら、見えてきましたよ。目的地が」


自分の立場が悪くなると思ってまた話題を変えたな。でも目的地ってどこだ?


「そういえばこの馬車ってどこに向かってるんだ?」


「魔王城です」


………おかしいな。今途轍もない不吉な単語が聞こえたような気がするぞ。気のせいだよな。確認のためにもう一度聞いておこう。


「ごめん。もう一回言ってくれる?」


「魔王城です」


気のせいじゃありませんでした。魔族のトップの住まいでした。最後の確認のため窓を覗いて見た。そこには、


「うわぁ…………」


禍々しいお城がそびえ立っていました。


「さぁ、そろそろ降りる準備をしてください」


やはり俺はここで降りるらしい。ここは言わば魔族の巣窟中の巣窟だ。そんなところに、だ。もう一回言う。そんなところに、だ。


「人間の俺が入って大丈夫なの?」


「分かりません♪」


「………おうち帰ります」


馬車が止まったため俺すぐに逃げよ(かえろ)うとした。


「逃がしませんよ♡」


ミーアに背を向けた途端、俺の身体に蛇が巻きついてきた。いや、これはミーアの蛇の部分だ。


「離せ!離してくれ!」


「離しません、一生♥︎」


「怖い!なんか色々怖い!」


身動きが取れないため命令することもできない。


「さぁ、行きますよ。マスター」


俺はズルズルと引きずられながらもう逃げられないことを悟った。

ミーア「契約によって繋がることができましたね」

メディス「そうだね。俺には加護もあるわけだし」

ミーア「次は物理的に繋がりましょう!ベッドの上で!」

メディス「(この子ってこんな残念な子だったっけ?)」

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