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気づいたらまた会ってました。

三話目でーす。

だらだらと続いていくと思うんでよろしくお願いします。

「ただいまー」


「おかえり、お兄ちゃん」


「ただいま、ユメ」


俺が家に帰ると妹が駆け寄ってきた。彼女の名はユメ。艶のある黒髪を腰まで伸ばし落ち着いた雰囲気のある少女だ。しかし、


「おにいっちゃーん!」


「うわ!」


この通り、すぐに抱きついてきたりする甘えん坊な性格なのだ。その性格が体にも現れてたりする。つまりぺったn


「お兄ちゃん?変なこと考えてない?」


「な、なんのことかな?」


女の勘って怖い……。


「それならいいけどね。ねぇ?いつもみたいにぎゅうってして?」


「はいはい。お前本当に子供だなぁ」


ユメの背中に手を回しぐっと抱きしめる。そのまま数分の時が過ぎる。


「ほら、そろそろいいだろ」


「えぇー、もっといいでしょー?」


「ダメだよ。やることたくさんあるんだから」


「はーい」


不服そうにしながらもユメは俺を解放してくれた。こんなことが俺たちの日課となっている。


「あ、そうだ。お兄ちゃん、ご飯できてるよ?」


「そういえば今日はユメの当番の日だったな」


「そうだよー。だから早く食べちゃお」


俺たちは机につき、晩御飯を食べ始めた。今日はシチューか。スプーンで一口すくい口に含む。


「やっぱり美味しいなシチューって」


「だよね。特に今日は美味しくできたんだ」


ユメは甘えん坊な性格だが、こういうところしっかりしていたりする。料理以外の家事は基本ユメに任せているからな。


「これならいつでもお嫁に行けるな。お兄ちゃんは安心だよ」


「え?そんな気無いよ?私はずっとお兄ちゃんと暮らすつもりだから」


「お前ももう15なんだからそろそろ兄離れを━━ 」


「嫌ッ!!」


突然ユメが叫んだ。


「私はお兄ちゃんと離れるのなんて絶対に嫌!ましてやお兄ちゃん以外の人と関わるなんてもっと嫌なの!」


息を荒げながらユメはそんなことを言った。


「ユメ……」


「……はっ!ご、ごめん!お兄ちゃん!」


「……ユメ、ちょっとこっちに来なさい」


「………はい」


向かい側に座っていたユメを呼び寄せる。ユメは俯きながら俺の前に来た。


「全く……お前は本当に甘えん坊だなぁ」


「うぅ……ごめんなさい……」


「俺としては可愛い妹に好かれてて嬉しい話なだけどね」


俺は手を伸ばして俯いたユメの頭を撫でる。


「ぅん……ふぁ……」


気持ちいいのか目を細めて俺の手に頭を押し付けてくるユメ。


「いつかは兄離れできるようにならないとな」


「………うん……できるだけ頑張ってみる」


「よし、その心意気はいいぞ」


話は終わったので俺はユメの頭から手を離した。


「あ……」


「うん?どうした?」


「も、もっt……ううん!な、なんでもない!」


「?」


何か慌てた様子でそそくさと自分の席に戻って行った。どうしたのだろうか。まぁいいか。


「あ、そういえば今日森でさ」


「何かあったの?」


「それがさ、なんとラミア見つけちゃったんだよねー」


「へぇーラミ、ラミア!?」


驚きのあまりその場で立ち上がるユメ。


「こらこら、食事中なんだから立つんじゃありません」


「ご、ごめんなさい……じゃなくて!大丈夫だったの!?」


「今俺に異常があるように見えるか?」


「だ、だよね…。よ、よかっt━━ 」


「噛まれて毒盛られたぐらいだよ」


「一大事だよ!?異常しかないよ!?」


またしても立ち上がるユメ。行儀悪いって言ってるのにまったく。


「大丈夫。解毒剤持ってたからすぐに治ったよ」


「そ、それならいいんだけど………いいのかな?それよりなんでこんなところにラミアなんていたの?」


「なんか罠にかかってたらしくてな。外してやったら何もせずに帰ってくれたよ」


「助けちゃったんだ。なんかお兄ちゃんらしいね………私の時もそうだったよね」


私の時も、か。その言葉でユメと初めて会った(・・・・・・)時のことを思い出す。

確か五年前だったか。街に薬を売りに行った時、俺はユメを見つけた。彼女は顔も上げずにボロボロの服でただただそこに座っていた。どう見ても捨て子だった。

道行く人は見向きもしない。そんな態度に怒りを覚え半ば強引にユメを連れて帰った。帰って冷静に考えたら誘拐じゃない?とか思ったけどそれは置いといて。

ユメに直接聞いてみるとやはり捨て子で間違いなかったようで、俺は彼女にどうしたいかを聞いた。すると彼女は、


『死にたくない……』


たった一言そう言った。この言葉を聞いた以上、彼女を育てる以外の選択肢はないと思った。

ユメが俺以外の人を嫌がるのは、たぶん捨て子のことが頭に残っているからだろう。どうにか治してやりたいんだけどなぁ。


「ねぇ……お兄ちゃん」


「うん?」


「お兄ちゃんは……魔族が怖くないの?」


「え?」


唐突な質問だな。魔族が怖くないか。そりゃあ……


「怖いよ。実際殺されかけたし」


「な、ならどうして助けたりするの?」


「別に嫌いってわけでもないしな。今日会ったラミアだって罠を外したら襲っても来なかったし。それに同じ生き物だろ?そう考えたら人間と魔族なんて些細な違いだよ」


「………やっぱりお兄ちゃんは優しいね」


優しいねぇ。俺からしたら人は魔族に過剰に反応しすぎなような気がするけど。


「………お兄ちゃん……あのね……私……」


「どうした?」


「………ううん、なんでもない」


そう言ったユメの顔はどこか悲しいそうだった。


***


次の日、昨日と同じく俺は薬草集めに来ていた。昨日はラミアの件もありあまり集められなかったからな。今日はしっかり集めるぞー。と思った瞬間、


「き、きゃあ!?い、痛い……」


またしても昨日のラミアさん発見。これ、幻とかじゃないですねよ?


「何やってんだよラミアさん……」


「くっ!に、にんげ……貴方は!?」


近づいて行くとラミアさんはキッと睨んだが俺だと分かったら驚きの表情へと変わった。


「昨日ぶりですね。罠にはまったラミアさん」


「侮辱ですかそれは!それよりどうしてここに?」


「いやそれこっちのセリフだよ。どうしてまた罠に引っかかってるんだ。しかも昨日とほぼ同じところで」


「そ、それは………」


俺の質問に目を泳がせるラミアさん。なんで言いよどむんだ?罠にはまった時点で名誉も何もないのに。


「うぅ……人間(あなた)たちが作るものが美味しいからいけないのです………ぐすっ」


「食べ物につられてたの!?」


魔族って意外と馬鹿かもしれない。


「はぁ……ちょっとじっとしてて。それ外すから」


「すいません……」


昨日と同じように罠を外す。本当にまったく同じ罠なんですが。


「ほら、これで大丈夫だよ。無理かもしれないがもう罠にかかるんじゃないぞ?無理かもしれないが」


「何故二回も言うのですか!?」


「君が……心配だからだよ」


「馬鹿にしてますよねそれ!」


こう話してたらやっぱり種族なんて関係なく感じるな。話す相手は考えた方がいいとは思うけど。


「それじゃあ俺はこれで」


ラミアさんとの話は楽しいが俺にもやることがある。それに誰かに見られでもしたら面倒だからな。


「あ、あの!」


しかし、ラミアさんは俺を引き止めた。


「すいません。今これといって食べる物持ってなくて」


「そんな理由で引き止めませんよ!す、少しだけお話しませんか?」


やだ、魔族からお誘い受けちゃったよ俺。


「それはデート的な意味で?」


「違いますよ!少し貴方に聞きたいことがあるだけです!」


俺に聞きたいこと?うーん………なんだろう?


「と、とりあえず話しやすい場所に行きましょう」


そう言うとラミアさんは歩き出した。歩き出すとは蛇の下半身をニョロニョロと動かして進んでいるということだ。

しばらく進んで行くと小さな泉がある場所へと出た。


「へぇーこの森にこんな場所があったなんて」


「ここは私のお気に入りです。あまり来られないのが残念です」


俺たちは泉を前にしてそのまま座った。


「で、俺に聞きたいことって?」


「あの……貴方は魔族が怖くないのですか?」


………あるぇ〜。こんな質問、昨日も聞いたぞ。これなんてデジャヴ?


「はぁ」


「な、何故ため息を?」


「色々あるんですよ俺にも」


「は、はぁ……それで……私の質問には……」


「あ、はいはい。えぇっとどうして魔族が怖くないか、か」


うーん、これ昨日答えたのと同じでいいよな。ユメに話したことと同じことを俺はラミアさんに話した。


「やはり貴方は普通の人間とは違うのですね」


納得した表情でラミアさんは何度も頷く。


「仮にですよ。もし私が罠を外していただいた後に襲っていたら貴方はどうしてますか?」


「効くなら痺れ薬で痺らしてそのうちに逃げる。それが駄目なら諦める」


「そ、そんな考えで私を助けていただいたのですか。私が言うのもなんですが無謀ですよ」


「そうなんだろうけど俺は殺生とか嫌いなの。殺されるのも嫌だけど殺すのも嫌なの」


それより、それよりもだ。


「ラミアさん。君の要望に俺は応えたから俺の要望にも答えて欲しいんだけど」


「私にできることならなんでもいいですけど」


俺もアレだがラミアさん中々人間と距離ないよな。だからお願いもできるしいいんだけど。


「ラミアさん」


俺はぐいっとラミアさんに寄る。何故かって?なんとなくだ。


「ち、近くないですか?」


「そんなことはない。それよりもラミアさん」


「は、はい」


「身体を触らせてください!」


「はい!?」


あれ?俺変なこと言ったか?……言ったな。


「いや、今のはそういう意味じゃ……」


俺が手を伸ばすと、


「い、いやああああぁぁあああああ!!??近寄らないで変態!!!」


ものすごい速さで泉の向こう側へ移動した。あれ?おかしいな。今魔法も使わずに泉の上を歩いたような……あれ?


「君が思ってるようなことは何もしないから!ちょっと撫でるだけだから!」


「撫でる!?いやあああぁぁあああ!!!」


「大丈夫だから!撫でるって言ってもあれだ!ちょっと触るだけだから!」


「触る!?いやあああぁぁあああ!!!」


「あぁもう!一回ちょっとこっちに来てくれ!」


「来る!?いやあああぁぁあああ!!!」


「いや来るは別にいやらしい言葉じゃないだろ!?」


しばらくしてラミアさんはしぶしぶといった感じで戻ってきてくれた。しかし腕で胸を隠しているということはまだ警戒されているということですかね。いやユメにはないその大きな果実は十分魅力的ですけど。正直触りたいですけど今言ってるのはそこじゃない。


「あの、改めていいっすか?いやらしい意味じゃないんで」


「は、はい……」


「鱗、触ってもいい?」


「………それだけですか?」


「だからいやらしい意味じゃないって言っただろ」


「そ、それぐらいならど、どうぞ」


俺の方に蛇の部分を向けてくれた。昨日見たがやっぱり綺麗だ。炎のように真っ赤な鱗は日の光を浴びて輝いてる。まるで宝石のようだ。俺はそっと一枚の鱗を撫でた。


「あ……うぅん……」


ざらざらかと思ったら全然そんなことはなく、むしろつるつるした肌触りで触っていて心地いい。一枚に終わらず何枚も鱗を撫でる。


「ひゃっ!んんっ!」


どの鱗も傷一つなく輝きを失うことはない。十分に手入れされているのだろうか。


「あぁん!も、もう……」


さらに俺は他の鱗に手を伸ばし━━


「もうダメェ!!」


「ぶべらッ!?」


突然俺はラミアさんに思いっきり蛇の下半身ではたかれた。

ここで俺は思い出す。人間と魔族では身体能力が大きく違う。魔族は身体能力も高く魔法も使えるが人間には数がある。なので魔族がこの世では劣等種族となっている。

話はズレたが俺が言いたいことは魔族は力が強いということだ。そんな力ではたかれた俺はもちろん、


「ぐへぇ!」


宙を舞い木に叩きつけられるのも当たり前である。いやほんとにこれ冗談にならないって。マジで死ぬ……。


「ああ!ごごごごめんなさい!!」


自分でも驚いているのかラミアさんはあたふたとしながら謝ってくる。こんな状態じゃなかったらゆっくり見たい光景なんですけどね。


「なんだ?今何か音がしたような……」


そんな時、俺が木にぶつかった音を聞いて一人の男性が現れた。つまり、


「ラ、ラミア!?」


ラミアさんが見つかってしまったということだ。

いやユメにはない大きな果実が━━


***


メディス家


ユメ「………今日はお兄ちゃんの嫌いなものにしよう」

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