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気づいたら使ってました。

ユメの過去編です。ちょっと暗い話になっちゃってるので、そこらへんよろしくお願いします。

俺の案内により寝室に辿り着くと、俺はベッドに降ろされた。あぁ、なんという安心感。やっぱり地上は最高だ。俺がそんなことを改めて実感していると、


「お兄ちゃーん!!」


「うおッ!?」


ここへと連れてきた張本人、ユメが飛びついてきた。そのまま馬乗りになれてしまう俺。


「やっと二人っきりになれたね!」


「いやお前が無理矢理したんだろ?」


「なんか無理矢理したってなんかいやらしい言い方だね」


「この場でそれを言うお前がお兄ちゃん怖くて仕方ないよ」


何故この場でその言葉が出てくるんだ妹よ………。


「で、これから何するんだ?」


「何するって………男と女が二人っきりでベッドにいるってことは………分かるよね?」


「そ、添い寝でもするのかな?」


「それもしたいけど………」


フフッと彼女は妖艶に微笑んでこう言った。


「もっと大人なことをしようよ」


「ッ!?」


ゾクッ!と背筋に悪寒が走った。そのため少し後ずさってしまう。目の前にいるのは本当にあのユメなのか?


「うーん、やっぱり慣れてないから上手くいかないか。というよりお兄ちゃんが魔族に慣れちゃったのがいけないのかな?」


「……何の話だ?」


「私の本質だよ」


「本質?」


「お兄ちゃんはさ、私が何の魔族か分かる?」


「いや、全然分からないよ」


「私はね………サキュバスだよ」


「……………マジでか」


サキュバス。人を誘惑して襲う魔族だ。夢魔ともいわれている。

アルラウネも誘惑して人の魔力は吸収するが、サキュバスは魔力ではなく人の精力を吸収するのだ。精力を吸収するというのは、人とのR18(そういう)行為をすることを指す。

つまりこのベッドで二人っきりの上、ユメの大人なこと発言をしたこの状況は、非常にまずいということになってしまうのである。

よく見てみるとユメの服は大事なところが隠れているだけの、なんとも肌色面積が多いような格好だった。


「それじゃあ始めよっか♪」


ま、まずい!このままじゃヤられる!どうにかこの流れを変えないと!


「そ、そういえば、どうして魔族ってことを黙ってたんだ?」


って、よく考えたら人間に正体隠しとくのって当たり前じゃないか!完全に空振ってしまった!

そう俺は思ったが、突然ユメが目を伏せ雰囲気が重くなった。そして、


「……………もうあんな目で見られたくなかったから」


そんなことを言った。


「………ねぇお兄ちゃん」


「な、なんだ?」


「私のこと………嫌いにならない?」


「え?」


「嫌いに………ならない?」


一体どういうことだ?


「これからちょっと話したいことがあるんだ。お兄ちゃんに聞いてもらいたいお話。でもそれは同時に私が汚れてるってことを話すことになるの」


何のことか分からないまま、ユメの話は進んでいく。


「だから嫌いに………うぅん、嫌いになってもいいから、私を怯えた目で、蔑んだ目では見ないで欲しいな」


そう言うとユメは少し悲しげに、儚げに微笑んだ。


「それじゃあ話すね。私の過去を」


***


今から遡ること十五年。

人間界に住むサキュバス、リムは人目につかないように、森で一人の子を生んだ。その子どもこそユメだった。

ユメを生んだ後、リムは人の姿に化け、彼女を抱えて近くの村へと向かった。リムはその村の村長にここで住ませてほしいと頼み込こんだ。村長は快く迎え入れてくれ、また村人たちもリムとユメを温かく迎えた。



そして月日が経ち五年。ユメは村の子どもたちと仲良く遊んでいた。するとある日、彼女はリムから大切な話があると言われたのだった。


『ママ、大切なお話ってなあに?』


『ユメ。こっちにいらっしゃい』


『?はーい』


首を傾げながらユメはリムの元へと駆けていった。すると、リムは優しくユメを抱きしめた。


『ママ?』


抱きしめるリムの身体は震えていた。それを見たユメは手を伸ばして、リムの背中を撫でた。


『どうしたのママ?どこか痛いの?』


『大丈夫よ………ありがとね、ユメ』


リムは抱きしめるのを解くと、ユメの肩に手を置いた。


『ユメ。一回しか言わないからよーく聞いてね。あなたはね━━人間じゃないの』


『…………え?』


人間ではない。その事実がユメに叩きつけられた。


『信じられないかもしれないけど信じて。これがその証拠よ』


リムは立ち上がるとバサッ!と黒い羽、黒い尻尾を出現させた。


『私たちはサキュバス━━魔族なのよ』


リムの姿をぼうっとユメは見つめていた。そんな彼女を見て、リムは心が痛くなる。


(ショックが大きすぎて現実が受け入れられないのね。ごめんなさいユメ。本当にごめんな━━)


『すごーい!』


『え?』


ユメの声を聞き、リムは慌てて彼女の顔を見た。リムはそこで驚愕する。

なんとユメの顔は輝いていた。落ち込むどころか笑顔をだったのだ。


『ユメ?これが怖くないの?』


『どうして?すごくかっこいいよ!』


『でもいつも遊んでる子たちとは違うのよ?』


『それはちょっといやだけど………』


ニッ!と笑ってユメはさらに驚くことを言った。



『大好きなママと一緒だもん!だから全然嬉しいよ!!』



その言葉を聞いた瞬間、リムは絶対に流さないと決めていた涙を流してしまった。


『どうしたのママ!?また痛いの?』


『ありがとう………ありがとうね………ユメ………』


母は子を抱きしめ、しばらく涙を流し続けた。



そしてまた五年が経った。ユメを含む十数人の子どもたちは森へ来ていた。友達と歩きながらユメは五年前にリムから話されたことを思い出していた。



『いーい、ユメ。あなたが魔族だってことは誰にも知られちゃダメよ。もしこの村の人に知られちゃったらここにはもう住めなくなるわ。ママと約束できる?』


『うん!』



(………絶対守らなくちゃ!)


ユメはそう心に誓うのであった。


ユメたちがいる森は彼女たちが住む食料源となっている場所だった。森に住む兎や猪、鹿などを狩って食料としているのだ。

村では十歳になると狩りについて学ばなければならない。そのため動物が普段どのように生きているのか。それを見て知る必要があるのだ。


『楽しみだねーユメちゃん』


ユメの親友、チカはユメに笑顔を向けてそう言った。


『そうだね!』


その後、ユメたちはたくさんの動物の姿を見た。

一列に並びながら跳ぶ兎たち。より強い者を決めるため角をぶつけ合う鹿たち。ただただ木にぶつかり続ける猪など。

昼頃になると見晴らしのいいところで、持ってきていた弁当を広げ、ユメたちは今日見た動物たちのことを話しながら食事をした。


『兎可愛かったね』


『うん!特に親子兎が可愛かったよね』


『一番かっこよかったのはやっぱり右側にいた鹿だな!』


『いや左側の方が角が大きくてかっこよかったって!』


『猪は馬鹿だったよね』


『『『『『『『うん』』』』』』』


食事を終え話も盛り上がって、そろそろ村へ帰ろうとした時だった。

ドシンッ!!と何か大きなものが倒れる音がした。その場にいる全員が音のした方に振り返った。ユメたちの目線の先には驚くべきものが映っていた。

森一番の大木が倒れていたのだった。だが今気にするのはそこではない。

ドンッ!!ドンッ!!と音をたててこちらに何か大きな生き物がこちらに向かって来ているのだ。おそらく大木を倒した張本人だろう。

その場にいる全員が逃げないといけないと感じたが、恐怖で身体が動かなかった。

しかしユメはリムの魔族の姿を見ていたため未知のものへの耐性が少しついていたのか、なんとか勇気を振り絞り叫んだ。


『みんな!逃げなくちゃ!』


その言葉を聞いた瞬間、固まっていた全員が動き出した。

すぐに荷物を片付け村に向かって走り出す。その間も後ろからは何者が動く音がする。怯えながらもユメたちは走り続けた。

走り続けること10分。やっと村が見えた。全員が安堵し、村に向かおうとした瞬間、



ユメたちは何か大きな者の影に覆われた



『え?』


自然とユメの口からそう漏れた。真上に何かがいる。とても大きな何かが。

しかし数秒後にはその影は消えた。そのかわりに、


『ハァ………ハァ………グルゥ……』


目の前に5メートル程の巨大な熊がいた。先ほどの影は熊がユメたちの真上を跳び越える時のものだった。


『グルゥゥゥゥゥアアアアアアアア!!!!』


全員を震えあがらせる咆哮を熊は放った。案の定何人かは力が抜け、その場に座り込んでしまった。


『な、なんでこんなところに熊が………?』


ユメの疑問も当たり前だった。熊は普通森の奥にいるのだ。もちろんユメたちはそんなところまで行ってはいない。何故こんなところに熊がいるのか。

そしてもう一つおかしな点があった。普通の熊はだいたいが3メートルほどなのだ。しかし目の前の熊はその倍近くの大きさなのである。

そんなことをユメが考えていると、


『グガァァァアアアアアア!!!!』


熊がこちらに向かって襲いかかってきた。その先にいたのは━━


『チカちゃん!』


ユメの親友、チカだった。


『あ……あ………』


チカは最初の咆哮で座り込んでしまったうちの一人だった。そして熊から一番近い場所にいてしまったのだ。


(このままじゃチカが………どうしよ!)


しかし身体は動かない。ユメだってまだ十歳の少女だ。こんな事態にうまく動けるわけがない。


(…………ダメ)


どうにか身体を動かそうとするユメ。しかし身体はまるで鉛のように動かない。


(………ダメ)


『グルゥァァァアアアアアアアアア!!!!』


『嫌ぁ!来ないで!』


熊がチカの目の前まで迫る。


『……ダメ』


そして熊は大きな爪のある前足を振り上げた。


『ダメェェェエエエエエエエエ!!!!』


ユメの静止の声も届くはずもなく、大きな爪は小さな命を刈り取るため、振り下ろされた━━その時



ドクン



ユメのなかで何かが昂まり解き放れた。

それと同時に熊の爪がチカの目の前で止まった。そしてすぐに熊はその場に倒れてしまった。まるで眠っているかのように。


『やった………やった!』


ユメは何があったかは分からなかったが、チカが生きていることが何よりも嬉しかった。


『チカちゃん!大丈夫!』


すぐにユメは彼女のもとへ駆け寄る。しかし、


『え………』


ある異変に気づき立ち止まった。チカの様子がおかしかったのだ。


『チ、チカちゃん?ど、どうして━━』



そんな怯えた目で私を見るの?



『う、うわぁぁぁぁあああああああ!?!?』


そう問いかけた瞬間、一人の少年が叫んだ。ユメはすぐにそちらに振り向く。


『ど、どうしたの?』


『来るなぁぁぁああああああ!!!』


『え?な、何が来るの?』


その次の瞬間、少年はユメをじっと見てとんでもないことを言った。



『こっちを見るなぁぁぁああ!!化け物!!!』



『化け………物?』


その言葉を聞いた瞬間、ユメは慌ててその場にいる者を見渡した。視界に入る人全員がこちらを見ていた………怯えた目で。


(どうして………どうしてなの………まさか!)


ある一つの嫌な予感が頭に浮かび、すぐさまユメは持ってきていた手鏡で自分の姿を確認した。そしてユメは絶望する。


魔法を使ったと思われる妖しく赤く光った目


明るい昼間には一層目立つ色した漆黒のコウモリのような二対の羽


羽と同色で悪魔を彷彿とさせる先の尖った尻尾



今のユメの姿は、まぎれもない化け物だった。

俺の名は威乃獅子。森に住む二つの角を持った誇り高き獣だ。

俺は日々自分磨きを欠かさない。今日も木の野郎と一対一の勝負だ。今日こそは木の野郎を倒してやる。

いつか俺はこの森一番の大木を倒して旅に出る。そして世界でも通用することを証明してやる!待ってろよ大木!お前は俺が倒して━━


大木『ア〜レ〜。オラレテシマッタ〜』


威乃獅子『………………』


巨大熊公『グルゥァァァアアアアアア!!!!』←遠く方から聞こえる


威乃獅子『…………………………………』


この時、俺は諦めるという素晴らしい言葉を身をもって知ったのであった。


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