気づいたら水あげてました。
ということで宣言通り新キャラ登場です。皆さん、小さい子はお好きですか?
こんにちは、メディスです。この頃、死と隣り合わせの生活を送っている気がします。そんな俺を癒してくれるのが、
「自然だーーーー!!」
おっと、思わず叫んでしまった。
今俺はミーアと会った森にいる。皆さんお忘れかもしれないけど、俺はもともと薬剤師です。ミーアと会ったのものここに生えている薬草を取りに来たことが原因だ。
まぁ何をしにきたというと、使えそうな薬草の回収と管理だ。これは半分趣味みたいなものだからやめられない。まぁ変な薬作ったりしてたからほとんど趣味か。
あ、そういえばここって立ち入り禁止ってユーリが言ってたな。なんか俺とミーアが暴れ回った?せいらしいけど。そういえばユーリともこの前やっちゃったよな………あれ?俺って結構悪人だったりして。
まぁそんなことは置いといて、さっそく行きますか!
まずいつも確認しているポイントに向かった。この頃行ってなかったから、どうなってるか心配だ。
しかし目的地に着くと、俺は安堵の息をもらした。
「よかった。悪くなってるものはなさそうだな」
解毒薬用の草や傷を治す草、火傷に効きやすい草など様々な草がこの場所には生えている。いわゆる穴場だ。
「お、これは………」
するとある草を見つけた。この頃、俺がものすごくお世話になったものだ。
ある草の前まで行くと俺はしゃがみこんで手を合わせた。
「ユーリとの決闘や彼女を助ける時、本当にお世話になりました」
俺の前におられるお草様は麻痺の薬を作るためのものである。
「どうぞ、これをお納めください」
そう言うと俺はじょうろを使い水をあげた。
俺はここに生えている薬草がまだ成長しきっていない時は、こうやって水をあげに来ているんだ。
ということで、十分育った草を摘み取り、育ちきっていない草には水をやり、あらかたやることは終わった。
「さて、そろそろ帰………うん?」
すると俺の視界に気になるものが入った。すぐさまそれに俺は駆け寄る。
「………なんだこれ?」
今俺の目の前には大きな紺色の花がある。大きいといっても30センチぐらいだ。
「綺麗な色だなぁ」
なんとなく水をあげた。まだ水も余ってたからな。すると突然、その花が揺れた………揺れた?ははっ、この頃色々あって疲れてるのかな、俺。確認のため、俺は再び水をあげた。すると、
「………しい」
「へ?」
「おいしいーー!」
「うわッ!?」
突然その花が飛び上がった。いや、花を頭に乗せた女の子が飛び上がった。
「こんなおいしいお水初めて!ねぇ!もっとちょうだい!」
その女の子は魔族だった。緑のショートヘアに緑色の肌。背丈は人間の子供ぐらいで顔つきも幼い。
多分この子はアルラウネだろう。緑の色の肌が何よりも証拠だ。まさかここにも魔族がいるなんて。
「お水ちょうだーい!……あれ?あなたどっかで見たことある?」
首傾げながらまじまじと見てくる女の子。俺ってもしかして有名人だったりして?
「うーん………あ!わかった!まおさまだ!」
………おしい。
「どうしてここにまお様がいるの?」
「ちょっとここに用事があってね。それとまおじゃなくて魔王だからね?」
「そうだ!まおさまもナウラ一緒に隠れよ?」
「あの、聞いてる?まおじゃないって」
「ほらー!早くー!」
訂正できないまま俺は彼女(ナウラという名前らしい)の隠れていた茂みに引っ張られていった。とりあえずナウラと一緒にしゃがみ込む。
「ここで何してるの?」
「隠れんぼだよー」
おー、なんとも微笑ましい光景だな。
「よーし。なら見つからないように隠れないとな」
なんかかなり魔族に耐性付いたな俺。
「うん!」
ナウラは眩しいぐらいの笑顔を浮かべた。よーし、お兄さん頑張っちゃうぞー!
そして一時間後、誰もうろつかず。
「………誰も来ないな」
「きっとナウラたちの隠れる技術がすごいんだよ!」
「………だといいんだけどな」
さらに一時間後、やはり状況は変わらない。ここまで来ると何か嫌なものを感じる。
「ナウラ、少し聞いてもいいかな?」
「なにー?」
「いつからここに隠れてるんだ?」
さすがに二時間経って誰も来ないのはおかしい。それにナウラは俺が来る前より隠れていた。何か裏がありそうだ。
「えーっとね、夜が三回来たよ!」
「つまり三日前からここにいるってこと?」
「うん!ナウラって隠れるの得意なんだぁ」
「三日間隠れられるスキルか。もう達人級だな」
「えへへへ」
気づいてないのが幸いなのか。ナウラはたぶん………よし。
「なぁ、ナウラ」
「どうしたの?まおさま」
「まだ誰も来なさそうだし俺と遊ばないか?」
ナンパじゃないからな。絶対違うからな!
「本当?遊ぶ遊ぶ!」
あっさりと了承してくれるナウラ。ちょっと警戒心が無さ過ぎるからお兄さん心配。
「何して遊ぶの?」
「うーん………鬼ごっこはどうだ?」
「うん!鬼ごっこ好き!まずはまおさまが鬼ね!」
それだけ言うと彼女は駆け出した。さすが魔族というべきか、すぐに視界からナウラが消える。
十秒数え、俺も走り出した。
「フッ、こういうのは本気でやらなくちゃ相手に失礼だからな」
とだけ言っておこう。よし、これで俺は大人気なくないな、うん。
辺りを見回りながら見つからない。いくら魔族でも子供の足でそんなに遠くに行けはずないし………。
そんなことを考えていると、不意に俺の目の前に一枚の葉が落ちてきた。
「風も吹いてないのにどうして………」
周りを確認した後、上を見上げた。するとナウラと目が合った。
「こんにちはー。そこで何してるのかなお嬢さん」
「隠れんぼと鬼ごっこと木登りだよ」
「へーいっぱいやってるんだね〜」
木に手をかけると俺は一気にナウラの乗っている枝まで飛んだ。ユーリとの契約のおかげでかなり身軽になっているな。自分でも驚きだ。
「あはは!捕まらないよー」
しかし俺が飛んだと同時にナウラも地面へと飛び降りた。すぐさま走り出すナウラ。
「あ、おい待━━ 」
俺も飛び降りようとしたが、その前に枝が折れて落ちてしまった。思いっきり顔を打つ俺。
「ふ、ふふふ………」
ゆらゆらと立ち上がる。そしてナウラの背中を目で捉える。そして俺は全力で走り出した。
「待てやこら!!」
大人気ない?鬼ごっこでも熱い心を忘れない少年ですけど?決して怒ってるわけではありません。
「うわっ!?まおさま速いよ!」
「ふはは!魔王を舐めるな!」
※これは鬼ごっこです。
でも思った通り地上にいれば追いつけないわけがないな。手が届きそうな範囲までナウラに近づいた。
「ほら!捕まえ━━ 」
た!と言おうとした。だが突然目の前からナウラが消えた。すると、
「こっちだよーまおさま」
真上からナウラの声が聞こえた。見上げると彼女は何メートルも上にある枝にぶら下がっていた。
なんで一瞬でそんなところに!?と思ったが、その理由はすぐに分かった。
彼女はアルラウネだということを忘れていた。ナウラは手をツルに変形させて伸ばした後、枝に絡ませたのだ。その後ツルを縮めることで何メートル上に移動できたというわけか。
「まおさまここまでおーいで」
枝に掴まっていない方の手を振りながら、身体を左右に揺らすナウラ。
「こら!そんなにはしゃぐと危ないぞ!」
「そんなこと言って降ろそうとしても無駄だよー」
そういうともう片方の手もツルに変形させ、枝から枝へと移動し始めた。サルかあいつは。
「ここまでおいでーまおさ━━ 」
バキッ!
「うわぁ!?」
案の定、細い枝に掴まってしまい、その枝は折れて彼女は落下してしまった。
「ほら言わんこっちゃない!」
全力で彼女に向かい走り出した。だがここからじゃ間に合わない。どうする!このままじゃナウラは大怪我を………!
「………こうなったら一か八か」
俺は後ろに振り向き両手を前に突き出した。
「使ってみるか!魔法を!」
はっきりとは分からないが、少しぐらい魔力が身体に馴染でいると思う。一回ぐらいは使えるはずだ。
イメージは爆発。身体を吹き飛ばす程の爆発だ。すると腕に熱いものが流れていくのを感じた。これが魔力か。そして熱いもの、魔力が両手に塊のように集まった。
「今行くからな!ナウラ!」
叫ぶと同時に手に集まる魔力が破裂するイメージをした。すると手のひらサイズの火の玉が現れた。失敗したか?と思った次の瞬間、その火の玉がドンッ!という音をたてて爆発した。
「よし!成功し━━ ちょ!勢いありすぎ!?」
爆発の余波により身体が勢いよく飛ばされたまではよかったが、勢いがありすぎてナウラを通り越してしまった。
くそッ!ここまで来て失敗してたまるか!
「こッッッのッ!!!」
足で地面を抉るような勢いで力を入れる。少し煙を出したながらも、なんとか動きは止まった。だがこれで安心してはいけない。
すぐさま助走をつけナウラに向かって跳んだ。そして、
「ナウラ!!」
彼女を抱きとめた。腕の中にある小さな身体は少し震えていた。
「はぁ、やっと捕まえられたよ」
「ご、ごめんなさいまおさま………」
シュンと落ち込むナウラ。怒られると思ったんだろうか?
「まぁそう落ち込むなって。怪我はしなかったんだしさ。それと俺は謝罪よりお礼を言ってほしいな」
「うん!ナウラを助けてくれてありがとうまおさま!」
「おう、どういたしま━━ うげッ!?」
俺は忘れていた。ここは木が生い茂る森で、そんな場所で俺は今跳び上がっていたことを。
太い枝に頭をぶつけてしまったため、身体のバランスが崩れてしまった。
「ま、まおさま!?」
「くぅ………大丈夫。どうにか体勢を戻して━━ え」
そこで俺は固まった。まるで追い打ちをかけるように、身体が動かなくなってしまった。
まさか………魔法を使った反動か!?
そう気づいた時にはもう遅く、
「ぐへぇ!?」
盛大に地面に身体を打ち付けた。そのまま俺は意識を失った。
***
「………ま……さま……」
「う、うぅん……」
「……おさま……まおさま!」
「その声は………ナウラ?」
「まおさまぁ!!」
俺が目を覚ますとナウラが飛びついてきた。俺はなんとか彼女を受けとめる。
「よかったぁ、よかったよぉ」
涙を流しながら喜ぶナウラ。俺は彼女の背中をそっと撫でた。
「うぅ、まおさまありがとう。大好きだよぉ」
「いきなり告白されても困るよぉ」
ナウラ風に返してみる。
「……………」
「あれ?ごめんナウラ!別にバカしたつもりじゃ!」
「ナウラね、ずっと一人だったの」
「え?」
突然どうしんだ?
「ナウラの花ってこんな色だから皆がバカにするんだぁ。みんなは綺麗な赤とか黄色なのにナウラだけ暗ーい色なの」
「そうか?綺麗な色だと思うけど」
「ありがとうまおさま。でもそれだけじゃないんだ。ナウラはね、変身できないの」
「変身………」
変身。アルラウネには二つの姿がある。一つは頭の上に花がある、今のナウラのような姿だ。
そしてもう一つは花から人が生まれたような姿だ。この姿の時は花が何倍もの大きさになる。こっちが本来のアルラウネの姿と言ってもいい。
アルラウネは人を誘惑して魔力を奪うと言われる魔族だ。誘惑する姿が二つ目の姿。
一つ目の姿は日光を浴びたり水を飲んだりといった、生活向きの姿なのである。生まれた時はこの姿で、成長していくと二つ目の姿に変身できるようになる。うーん、二つ目の姿が本来のアルラウネってなんか違和感を感じるな。
「…………ジャー」
「うわっ!?いきなり水かけないでよ!」
「いや、元気出るかなぁって思ったから」
「ちゃんと話聞いてよまおさま!」
「…………よし、なら俺がなんとかしてやる」
「え?」
キョトンと首を傾げるナウラ。
「ほんとぉ?」
「俺は植物に関しては詳しい方なんだ。それに城に帰ればそういう本もあると思うしね」
ナウラは半植物みたいなものだから、ちょっと調べるのがわくわくしてるのは秘密だ。
「だから明日魔王城に来るといいよ。場所は分かる?」
「うん!あのおっきなお家だよね!」
「うーん、たぶんあってるよ」
城以外に大きな建物ってなかったと思うし。
「それじゃあ俺はそろそろ帰るよ」
「あ……う、うん………」
そう言うと彼女の声のトーンが明らかに下がった。でも早く調べないといけないし今日は帰らないといけない。
「ナウラ。明日調べ終わったら、その後はまた遊ぼうな」
「ほ、ほんと?やったーー!」
さっきの様子が嘘のように、飛び跳ねて喜んでいる。やっぱり子どもは元気が一番だな。
「それじゃあまた明日、ナウラ」
「うん!バイバイまおさま!」
ナウラが見えなくなるまで手を振り続けた。彼女が見えなくなるとすぐさま走り出す。
「久しぶりに未知への挑戦だ!」
魔王兼薬剤師のメディス。今回は後者の方が活かされそうだ。
メディス「あんなアクロバティックな動きしたり魔法使えたり………なんかいきなり強くなりすぎてるような………」
ヨウブン「そこにはつっこまないで」