気づいたら出番がありませんでした。
みなさん、ミーアのこと、忘れてませんか?ぼくは忘れていたわけではありません。本当ですからね!
「この頃、私の出番が無いような気がします」
『いきなりサブタイつっついちゃう?』
「だって仕方ないじゃないですか!この頃のユーリの話ばかりで、私の出番はどこにいったのですか!?」
『い、いや、この前の話も登場してたじゃん?』
「寝てただけじゃないですか!セリフ二個ですよ!二個!だいたい貴方作者でしょ!私の出番を増やすぐらい簡単でしょう!」
『そんなこと言っても話の流れっていうものがあってね』
「そんなの気にしてたら一生出番なんて来ないじゃないですか!?」
『そ、そんなことないよー。新キャラとか出てこない限り出番は回ってくるって』
「それって遠回しに出てくるって言ってますよね!?」
『ということで次回、新キャラ登場です」
「ここで宣伝!?そんなのいいから私メインの話を書いてください!!」
「という夢を見ました」
「何からツッコんでいいか分からない!?」
作者って誰!?出番って何!?でも知らないことなのに知ってはいけない気がする!今は執務室だが、そんなことを言われたら仕事に集中できないじゃないか!
「ということでメディス様!私に構ってください!」
「ならまずは身体に巻きつくのをやめようか」
「この状態で可愛がってください」
「いや身体が動かせないんだけど」
「まだ動かせる場所があるじゃないですか。ほら、口とか舌とか」
「よーし今すぐこれをほどけ。身の危険を感じる」
しぶしぶ、彼女は俺を解放した。巻きつかれることに関しては動じなくなった自分が怖い。
「ところで構うって具体的に何をすればいいんだ?」
すると待ってました!と言うように、
「待ってました!」
あ、本当に言った。
「まずはこれをご覧下さい」
どこからか長方形の画用紙を取り出してきた。それに何か書いてある。
「えーっと、何これ?」
「いいから読んでください」
「なになに………『配下を満足させて主としてもレベルアップ☆目指せ!配下ポイント100!!』…………何これ?」
何かの企画書だということは分かった。でも理解できないというか、なんか理解したくない。
「つまり私を可愛がって主としてレベルアップしよう!という企画です」
「………とりあえず配下ポイントについての説明が欲しい」
俺の言葉を聞くと、ミーアはもう一枚画用紙を取り出した。そこにはまるでメニューのようにこう書かれていた。
『配下ポイント一覧表!これで貴方の配下を満足させてあげましょう!
1.手をつなぐ 5P
2.恋人つなぎをする 10P
3.抱きしめる 20P
4.あすなろ抱きをする 30P
5.「好きだよ◯◯」 10P
6.「愛してるよ◯◯」 20P
7.5または6を耳でささくように言う +10P
8.キスをする 40P
9.ディープで大人なキスをする 80P
10.襲う 100P
さぁ!目指せ100P!』
………………は?
「あ、おすすめは9の後に10をしてめでたくゴールインですね」
「それもう80Pオーバーじゃねぇか!!」
おかしい!全てがおかしい!特に最後の『襲う』ってなんだよ!?襲われる気しかしないんだけど!
俺はとりあえず画用紙を奪いビリビリに破いた。
「フッフッフッ」
しかしミーアは笑っていた。ど、どういうことだ!
すると彼女は何枚もの画用紙を取り出しこう言った。
「そんなことをなされるのは分かっていました!何故なら私はメディス様のことをなんでも知っているのだから!」
「それって俺がムカつくのを分かってやってるってことだよな!」
はぁ、俺は本当にアレをやらなければならないのか………。ふと周りを見てみるとミーアの蛇の下半身が俺を囲っていた。つまり俺に逃げ道は無いということか………。
「100P貯まればいいんだよな?」
「もちろんです」
なら『手をつなぐ』を10回すれば━━
「あ、ちなみに一回行ったことはもう二回目からポイントが入らないので注意してください」
「なん……だと……!」
一瞬にして計画が狂ってしまった。どうやらここは慎重に動きべきところのようだ。
まず9と10は無しだ。10は完全アウトで、9をすれば自動的に10に繋がりそうな気がするからこれもアウトだ。
とすると、3〜8までで100P稼ぐしかないようだ。1と2はポイントが低すぎるため使えない気がする。
「よし!」
頬を軽く叩いて気合いを入れる。やってやる………俺はやり遂げてみせる。
「ミーア、後ろに向いてくれ」
「は、はい」
俺が何をするのか分かったのか、少し緊張気味に後ろに向いてくれた。
やることは決まった。だけどやっぱり緊張するし恥ずかしい。だけどヘタレるな俺!ここでやらないと男じゃない!
俺はそっと、だが力強くミーアを後ろから抱きしめた。
「ひゃわッ!?」
ミーアは短い悲鳴を上げた。だがこれだけでは終わらない。俺は彼女の真っ赤になった耳に顔を近づけ、
「………愛してるよ、ミーア」
ささやくとと共に、さらに抱きしめる力を強めた。
しばらく抱きしめたままでいたが、一向にミーアの反応がない。
「ミーア?大丈夫か?」
「うひゃい!らひりょうふれふ!」
「いやどこがだよ」
ミーアの身体をこちらに向けてみると、顔は火が出そうなほど真っ赤で目はグルグルと回っていた。もしかしてミーアって………
「なぁミーア」
「なんれひょうか!」
「愛してるよ(ニッコリ)」
「ひゃわわわわわわわ!?」
前から思ってたけど確信が持てた。ミーアって自分からは積極的だけど、逆にやられると弱いんだな。焦る反応を見てると楽しい。
さて、話をもとに戻そうか。とりあえず今は60P。残りは40P。これって2と3と5をすれば100P貯まるじゃないか。よし!一気にクリアしてやる!
ミーアの手を握ろうとすると、突然彼女が小さな紙を渡してきた。そこには、
『読んでください』
とだけ書かれていた。何のことだ?と思っていると、また何か書かれている紙を渡された。
『うまく喋れないので書いて話しましゅ』
いや噛んでるよ。書いてるのになんで?
『10個ある項目のうち似ているものがいくつかありますよね?』
似ているものって、例えば1と2、3と4、みたいなことかな。
『その似ているものうち、一つを選んでしまうともう片方は選べません』
え………それってつまり………
『つまりもうメディス様は8以降しか選べないということです。キャッ♡』
「何ぃぃぃいいいいい!?」
くそッ!真っ赤になって焦っていてもやっぱりミーアだった!こういうところは抜かりがない。
つまり、つまりだ。最低キスするしかないってことか?どうにか変えてもらおうとミーアを見ると、
「メディス様………」
目を瞑ってもう準備万端だった。
「………はぁ」
やるしかないのか。でも考えてみたら幸せじゃないか。自分のことを待ってくれている女の子が目の前にいる。それに応えることに何の戸惑いがある?
「………いくぞミーア」
「………はい」
そっと彼女の肩を掴む。そしてゆっくり近づく。自分でも分かる。今俺はかなり震えている。さっきの緊張の非じゃない。だけどそんなのは気にしない。気にしてはいられない。俺は今、成し遂げる!
彼女の唇に向かって自分のそれを重ねようとした。しかし、
「うわッ!?」
「きゃあ!?」
俺の足が思った以上に強張っていたようでもつれてしまった。そしてミーアを巻き込むように倒れてしまった。
「痛てて……ごめんミーア。だいじょ………!?」
倒れた後に気づいた。今俺はミーアを押し倒したような体勢になってしまっていた。
「ご、ごごめん!いやこんなつもりじゃなくて……ってそうじゃないだろ俺!今すぐどくから━━ 」
「フッフッ」
すると突然ミーアが笑い出した。
「本当にメディス様は決めるところで決められないですね」
目に涙をためながらそんなことを言った。
「どうします?10がやりやすい体勢にはなりましたけど」
「………いや、それはまた今度の機会にしとくよ」
「なら」
ミーアは俺の首に腕を回し、
「100Pにしてください」
そう言って再び目を瞑った。
もう俺は何も言わなかった。
俺も目を瞑り、唇を━━ 重ねた
触れるだけの軽いキス。それでも重ねている時間がまるで何時間、何十時間というように長く感じた。
今ミーアがどんな表情で、俺と唇を重ねているのか。それが気になり目を開けた。すると俺とほぼ同時にミーアも目を開けた。驚いているとミーアの目は微笑んだ。
そんな彼女に見惚れていると━━
ガチャ
「メディス。明日はちょっと用事があって朝の特訓は…………へ?」
ユーリがご登場なされた。
俺とミーアは慌てて唇を離すがもう遅い。完全に見られてしまった。その証拠に、
「ななななな何をやっている貴様ら!?!?」
彼女の顔が真っ赤だった。
「いや、これはなんというかその…………」
うん、誤魔化せるようなことが浮かんでこない。
「主と配下のふれあいですよ♪」
ミーアはホクホク顏で包み隠さずそう言っ………ちゃったよこの子!?
「ふれあい!?押し倒されてキスされることがですか!?」
「そうです。私とメディス様のような深〜い関係になれば、このようなことは日常的なことですよ」
平気で嘘付いたよこの子。
「そ、そんなハレンチな関係いいわけないでしょ!」
「でも、メディス様、つまり主様の言うことには逆らえないから仕方ありません」
「え?」
この場を荒らした挙句にこっちにぶん投げてきた!?え!?俺どうすればいいの!?
「………そうか。全て貴様が元凶か」
「ち、違うんだよユーリ!確かに俺から抱きついたりキスしたけどこれに事情があって!」
「………ほう、キスだけじゃなくそんなことまでしていたのか」
なんでいつも自分で墓穴を掘るんだ俺!!我ながらバカすぎる!!
「ならばそのいやらしい根性を叩き直してやる!!」
ユーリは天に手を掲げ、ハルバードを召喚した。そしてすぐさま俺に向かって駆ける。しかし、
「ごめんなさいユーリ。今日だけはメディス様を独占させてくださいね」
ミーアが俺の腕を持った。次の瞬間、俺たちは自室にいた。
「あれ?なんで?」
「瞬間移動魔法を使いました」
そうか。とりあえず俺の命は救われたということか。
「メディス様ー♡」
するとミーアは俺の腕に抱きついてきた。
「今日はずっとこうしてます」
「俺に拒否権は?」
「ありませーん」
何処か浮かれているミーア。まぁ今日は構うって決めたらいいか。
俺はそっと彼女の頭を撫でた。もっとして、ということなのか俺の手に頭を押し付けてきた。たまにはこんなのもいいかもな。
この後、まったり空気によりすっかりユーリのことを忘れ、部屋に走り込んできた彼女に思いっきり殴り飛ばされたのはまた別のお話。あぁ………死ぬかと思った。
メディス「そういえば俺ってこの頃………」
・二人による顔を首を回された件
・剣の柄により気絶&天井に埋まる事件
・とばっちりによるフルボッコされた案件
メディス「…………いつか死ぬな俺」