気づいたら助けてました。
二話目でーす。
モンスター娘の種類をあまり知らないのでよかったら教えてください。
ある日俺は日課となっている薬草集めのために森へと来ていた。
俺の名前はメディス。細々と薬剤師を営んでいるごく普通の人間だ。ごく普通というのは俺が魔法を使えないからだ。
この世には魔法という摩訶不思議なものを使える者がいる。魔法が使えるのは先天的であったり後天的であったり様々だが、使える人は限られてくる。『魔法を使えたら人生安泰』なんて言うくらいだからな。そして、摩訶不思議なものがこの世界にはもう一つのある。いや、いるって言った方が正しいかな。それは━━
「きゃッ!?い、痛ッ!」
魔族だ。
この世界には人間以外に魔族という種族が存在する。魔族は忌むべきものとして人間から敵視されている。それと魔族はどんな奴でも魔法が使える。もちろん個人差はあったりするけど。
目の前に罠にかかった魔族が一人。いや、一匹か?
「ほぅ、これまた美人さんだなぁ」
俺のことに気づいたのか、魔族はキッと俺を睨みつける。
金色に輝く長い髪、整った顔立ちでタレ目がチャームポイントと言ったところか。その目のせいで睨まれているのに全然怖くない。しかし、注目するところはそこではない。彼女の腰から伸びる蛇の下半身。赤い鱗が何枚もついておりとぐろを巻いている。こいつは……
「ラミアか。珍しいな」
「くっ!貴方がですか!こんな卑怯な真似をしたのは !」
罠にかかった直後に俺が来たからだろう。俺が罠を仕掛けたと勘違いしているようだ。
魔族は時に毛皮や剥製、見世物として人間界で出回ることがある。特に俺の目の前にいるラミアなんかは貴重な種族のため高く売れることだろう。
「闇市に出して一攫千金、みたいな」
「な、な!?」
「とりあえず、っと」
俺はラミアに近づいていく。別に怖くはない。
「こ、来ないでください!」
「痛ッ!」
ラミアに触れようとした手を伸ばしたら、その手を噛まれてしまった。普通に痛い……。
「貴方の体内に毒を盛らせていただきました」
「え?マジで?」
「苦しまぎれの虚言などということはありません。今に身体をを蝕み貴方は死んでしまうでしょう」
「何それ怖い」
苦しみながら死ぬとか一番嫌だな。死ぬなら楽に逝きたいものだ。っと、呑気に考えてる場合じゃないな。俺は鞄の中に入れてきたあるものを探し出した。
「えぇっと、どこにやったかなーっと」
「武器でも出すつもりですか?毒の腹いせに私を殺すと?しかしもう数分もすれば貴方の命は━━ 」
「あ、あったあった」
「え?」
俺は一つの小さな袋を取り出した。その袋に入っているものを躊躇わず一気に飲み干す。
「ふぅ、これで安心」
「……なんですか?今のは?」
「え?あぁ、解毒薬だよ。即効性の」
「え……」
これでも俺、薬剤師ですから。色んな種類の薬は常備してます。
「そ、そんな……い、いや!近寄らないで!」
睨み続けてはいるが、段々怯えの表情が見え隠れしてくるラミア。ものすごく申し訳ない気持ちになるからやめて欲しい。それより、時間もないからさっさと終わらせるか。
再びラミアへと手を伸ばす。
「よーし、大人しくしろよ」
「やめて!やめてください!お願いですから殺さな━━ 」
ガチャ
「え?」
「よし、上手くとれたな。もう行っていいぞー」
俺が罠を外したことが信じられないのか、キョトンと俺の方を見ている。
「ほら、早く行けって。誰か来たら面倒だろ?」
「は、はい……ではなく!」
「はい?」
「どうして人間の貴方が魔族の私を逃がしてくれるんですか!」
「そりゃあ君が困ってたからじゃない?」
「そ、それだけで?」
「うーん、他に理由なんて無いんだけどなー」
「私は魔族なんですよ!」
「うん、美人なラミアさんだね」
「び、美人なんてそんな………ではなくて!」
あ、褒められるのに弱いなこの子。
「どうして人間の貴方が魔族の私を助けたのかと聞いているのです!」
「うーん……俺は人間だ魔族だって関係ないと思ってるからかな。困ってるのら尚更関係ないと思うよ」
「そ、そんなことって……」
そこで黙ってしまうラミア。そんなのんびりしてる暇はないんだけどなー。
「それより、ほら。早く行きなよ。さっきも言ったけど誰か来たら面倒だ」
「………はい。ありがとうございました」
何処か納得のいかない顔をしながらも、ラミアは蛇の下半身を動かして森の中に消えていく。ん?あれは………
「ラミアさん、ちょっと待ってくれ」
急いでラミアへと駆け寄る。
「あの……何か?」
「いや、たいしたことじゃないんだけど、罠の引っかかったところが怪我してるから」
トラバサミ式の罠だったためか、少し切ってしまった跡がある。
「このくらいどうってことないですよ」
「仕事柄、こういうのは見逃せなくてね。俺のわがままだと思って聞いてくれよ。人間のわがままに付き合うのは嫌かもしれないけどさ」
鞄から薬草で作った塗り薬を取り出す。指で少しすくい傷口に塗る。
「お待たせ。これでもう大丈夫だよ」
「あ、ありがとうございます………色々と」
再びラミアは森の中に向け動き出した。
「もう罠に引っかかったたらダメだよー。綺麗な鱗が台無しだからねー」
ラミアの背中に向かって言うと、帰る速さが増していった。あれ?嫌だったのかな?それとも恥ずかしかったとか?
「……よし、俺も帰るか」
その後、目当ての薬草を幾つか集めてのち、俺は森を出た。
この出会いが俺の人生を大きく傾ける原因になるとは、今の俺は思いもしなかった。
いかがだったでしょうか?
主人公はまだ魔王じゃありません。魔王にしていきたいって言い方、なんか変ですけどこれから主人公を魔王にしていきたいと思います。
ではー( ´ ▽ ` )ノ