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wake up pandra 1-1 




チリチリと何かが焼けていた。




私のうっすらと霧が掛かったような視界には、赤く染まった天井があった。




あと、何かの肉が焼ける臭い。




『ママ、パパ。』




声を出そうとしても、ただヒューと空気が漏れることしかなかった。




思い頭を捻り、横を向く。




そこには変わり果てた弟の姿があった。




焼け爛れ、まるで肉の塊みたいな顔だったもの。




横なんて向かなければ良かった。




自分もこんな姿なのかな?




でも体の感覚ないから分かんないや。




また上を向く。




赤く染まった天井。




ここで、終り。




私達、何か悪いことしたかなぁ。




何でこんなことになっちゃったんだろ。




天井だけだった視界に何かが写り込む。




それは知らないお兄さんの顔。




「悔しい?」




優しい音色の声な筈なのに、まるで蜘蛛の巣の様にねっとりと耳にこびりつく。




「これはね、僕がやったの」




にっこりと笑みに歪む。




「これは、僕が君と契約する運命を築くためにやったんだ。家族は関係ない。」




『じゃあ何で家族は死んでしまったの?』




そう口にしようとしてもヒューヒューと空気が漏れるだけだった。




しかし、お兄さんはにっこりと笑って答える。




「君を『悲劇のヒロイン』にしようと思ってね」




『まるで悪魔みたい』




「だって悪魔だからね」




また優しげな笑みを浮かべる。




でもそこに優しさなど存在しない。




「ねぇ、僕と契約して僕を殺してよ」




『....』




わけ分かんないや。




理解することを諦め、目を閉じようとする。




「....やっぱり子どもだしあんま分からないよね。仕方ない。」




お兄さんのそんな声が聞こえる。




「じゃあ勝手に契約させてもらうよ」




突然、閉じたはずの目に焼けるような痛みが走る。




その痛みはあまりにも大きすぎて、体を思い切り仰け反らせる。




その時だった。




まるで何かが注がれるような感覚に陥る。



真っ黒い何か。




息苦しくなり、体中が力を帯だす。




それは弟と喧嘩をするときと似ていて、しかしそれより遥かに大きすぎるものだった。




「君に最凶の憎悪を押し付ける。変わりにそれに見合った目を君にあげるよ....」




『いらないいらないいらないいらないいらないいらないっ!!』




体が灼熱の炎に炙られるような痛み。




「すぐには楽になれないよ、ロン。」




『死んじゃうよ!このままじゃ死んじゃう...』




「解放されたかったらその目で僕を殺すことだね」




「僕は君をずっと待っていたし、これからもずっと待っている」




「だから早く僕を」




『ウァァァァァァァァァァッ!!!』








「うぅ...ぅぅぅぅ...」




「ロン、起きろ」




その呼び掛けで今まで開けなかった瞼がやっと動く。




「...相変わらず酷いな」




「...」




腰に回していた手をほどき、バイクの後部から降りる。




「ほら、スポドリ。」




「....うん」




渇きすぎてざらざらな舌と喉を潤せば、何故か涙も流れ出す。




「.....まぁ、少し休んでからでもアイツらが逃げる訳じゃない。」




「...うん」




その場に座り込み、ロンは小さく呻いた。










ランスはバイクに乗っていて少し崩れた黒髪をまた後ろに一つ、束ね直す。




そして支給ポーチから水の様に透明な液体の入った小瓶を取りだし、蓋を開けて一気に飲み干した。




「....結構ヤバそうな雰囲気だな」




眉を少し険しくし、隣に踞っていたロンを揺さぶる。




「....うん」




顔を上げれば、何時も通りきりりとした面持ちの少女に戻っていてランスは肩を下ろす。




「今日のは多分、結構取り込んでるしカリスマも高いから雑魚も何時もより多いと思う。で、凖ボスてきなのが二匹。」




「それだけ分かれば十分だ。」



くしゃりと頭を撫でてやれば、「ちょっと、崩れるっ」と小さく悲鳴を上げる。




その姿は、まさに普通の兄と妹の様な図であった。








誰かが来た。




それだけがはっきりと分かった。




早く目を覚まさなければ、と誰かが頭の中で囁いていた。




このままだともう時間は動かないと。




眠気が弱くなる。




目が、開いた。




ほこりだらけの部屋は、もう誰も何もない。




涙が溢れて、悲しくて、空っぽで、もうあの娘は戻ってこない。




指にはブカブカな指輪が一つ。




もう、これしか残ってない。




涙が止まらず、それでもぼくは扉を開いた。





_____あれ、そう言えば




なんでぼくは、ここにいるの?






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