why?why?why?
暖かい日差しに包まれて俺は目を覚ました。
「うん?」
柔らかな草木の臭いが鼻を燻り、周りには一面花ばかり、俗に言う花畑という所に俺は豪快に寝転んでいた。
「なんでこんなメルヘンチックな場所に居るんだ俺?」
自分にはまったくあわない所に目が覚めたらいきなりいて少し困惑したが、ついさっきあった出来事を思い出した。
「そうか、俺負けたのか?あのドラゴンに。」
「て事は、俺死んだのか!?」
はっきり言ってまったく実感がない。
「じゃぁここが天国か?あんまり地獄って感じじゃぁないしな。」
「はぁー最近、非日常的な事が起こりすぎだろ。」
俺がため息交じりに他愛のないバカなことを考えていたら後ろから懐かしい声が聞こえた。
その声を最後に聞いたのは3年前のことだった。
「メルヘンチックで悪るかったわね。八雲。」
俺は嘘だろ?と思った。
なんせ、死んだ人間が話しかけてきたんだから。
けど、なぜ死んだ人間がここに居るのか?なんて言う質問をする気はなかった。
理屈や理由なんていらなかった。こうして一度でも会えて話ができるだけでよかった。
俺は振り返りながらぶっきらぼうに答えた。
「そういえば、お前こういうとこ好きだったよなイリア。」
後ろには俺が守り切れなかった少女イリアが立っていたのだ。
大きなクリっとした水色の目が面白い物をみたかのようにキラキラした目で聞いて来た。
「ていうか、何その髪キモイわよ。さっさと切りなさいよ。」
「どうだ?かっこいいだろ?」
「キモイ。」
「せめて、もうちょいツッコメよ!!俺のボケを3文字でおわらしてんじゃねぇ。」
イリアの頭にチョップをくれてやった。
「痛っ。よくもやったわね!!」
イリアさんはフフフフと怪しげに笑い、キランと目が閃光のように光って追いかけてきた。
この女は意外に足が速い。
「だがしかし!!」
おれはもっと速い。
「ま、待ちなさーい!!」
「じゃぁその殺気消せ。」
「フフフ、アンタが1発殴らしてくれたら消すわよ。」
「嫌だね。痛いのは嫌いなんだ。」
「大丈夫、一撃で沈めてあげるから。」
鬼の形相で襲ってきた。
「ヒィィィ。」
俺は悲鳴をあげながら今まで鍛えてきた、足をフル回転さして走った。
しばし、俺らは花畑を餓鬼みたいに走り回った。
・・・・・・・・・・・
走り回って疲れた俺たちは背中合わせにして木の木陰に座った。
しばし、無言が続き心地よい風が俺たちを包んでいた。
無言を破ったのは、俺だった。
「・・ていうかすげぇ久しぶりだな。」
「そうね。会えなくて寂しかったでしょ?」
「ああ。」
俺は後ろからイリアを抱きしめた。
「ちょっと、いきなりどうしたのよ?」
イリアは頬を真っ赤に染めて、俺の行動に抗議してきた。
「あの時はお前を守ってやれなかった。悪ぃ。あの時は俺がすげぇ未熟だった。」
「いいのよ。別に。あなたは良くやってくれたわ。」
「だ・け・ど」
そう言って、俺を突き飛ばした。
「私の事は忘れなさい。いつまでも過去にとらわれて苦しんでるあんたなんか私は見たくない。」
「あんたは、私と違って生きてるんだからね。」
ニカッと笑ってそう言った。
俺は悪いとしか言えなかった。
「どんだけ謝るのよあんた。私が生きてた頃、悪い事したのに全然謝んなかったくせに。」
俺が失礼なやつみたいじゃねぇか!!と突っ込もうとした時、イリアの体の異変に気付いた。
「おい、イリア!!」
イリアの体はどんどん透けていって水色の粒子と化していた。
「やっぱり、夢はなかなか続かないものね。」
他人事のよう天を仰ぎながら言った。
その顔は何かを諦めたかのような、儚げな顔をしていた。
俺は無言でイリアに近づき、頬をなでて、キスをしようとした。
しかし、唇を指で押さえられて阻止された。
イリアは小悪魔のように笑い俺の鼻にデコピンをして言った。
「言ったでしょ?私の事は忘れなさいって。」
「だいたい、あんたまた負けたでしょ?」
「うっせ!!何で知ってんだよ。しかもドラゴン相手に頑張ったほうだ。」
「私の恋人ならどんな奴でもぶっ倒しちゃなさいよ。」
そう言ってグーで胸を殴ってきた。
相変わらず無茶苦茶なやつだ。
「だいたい、お前はどうなるんだ?お前には聞きたい事は山ほどあるんだ。」
「知らないわ。」
べーと舌を出して俺をからかうつもりだったんだろうしかし、彼女の瞳から次々と涙が溢れだしていた。
しかし、彼女は笑顔をくずさなかった。
「ねぇ、最後に抱き締めて。あんたの温もりを感じたいの。」
「ああ。」
俺はイリアを抱きしめた。
イリアは俺の胸の中でくすぐったそうに目を細めた。
「最後に会えてよかったわ八雲。・・・私の大好きな人・・・」
「ああ。俺も好きだった。」
「俺の守れなかった人。」
俺の目から一筋の涙が流れていった。
「何泣いてんのよ。」
「お前だって泣いてんだろ」
「うるさい。」
俺たちは少しの間抱きしめあった。この温もりを忘れないようにギュッと・・・
イリアの体はとうとう見えるか見えないかわからないような、まるで存在がこの世から消えて行くように
透けて行った。だけど、まだイリアの温もりは俺のはだを通して感じられる。
「そろそろ、お別れの時間ね。あのドラゴンに勝ちなさいよ。負けたら許さないからね。」
「わかってるよ。約束する。勝つぜあいつに」
俺が自信満々に答えた瞬間だった。
唇に柔らかな感触が触れた。
「!!」俺は突然の出来事にうまく脳が働かなかった。
イリアは本日2度目の意地悪が成功したので、上機嫌だった。
「へへへ、びっくりした?これはお礼よ。いままでありがとうって意味でね。」
イリアはそう言うと、相当恥ずかしかったのか俺の胸に顔を埋めてしまった。
「違うんだ。俺は、お前に・・・ぐはっ。」
イリアは俺の話をみぞおちに頭突きと言う荒業で中断させた。
「そんな辛気臭い顔しないの。最後くらい笑顔で送りなさいよ。」
俺は心の中でやってしまった。と思いながら俺はぎこちない笑顔で笑った。
「フフ、ぎこちない笑顔ね。ほんと不器用なんだから、でも私はそんな大好きだった。」
俺は再度イリアをギュッと抱きしめ言った。
「乱暴だけど、本当は優しいお前が大好きだったよ。」
「乱暴は余計よ。」
苦笑ぎみに答えて、イリアは光の粒子になって消えて行った。
イリアを抱きしめていた両手は空を切って腕が交差した。
イリアの温もりがほんのりと残っていた。
「イリア・・お前は俺を許してくれたんだろうか?こんな不甲斐ないおれを・・」
天を向いてつぶやいたが、答えが返ってくる訳ではなかった。
不意に背中をドンと押された気がした。
まるで、頑張ってこいと言わんばかりに・・
「ま、ほどほどに頑張るわ。」
俺がてきとうな宣言をした瞬間、俺は夢から覚めた。
俺はうつ伏せでたおれていた。
どれくらい倒れていたのだろう?
耳にはまだグォォォォとドラゴンの咆哮が聞こえてくるのを踏まえて考えると一瞬だけ気絶していたらしい。
それは、かなりありがたい事だった。
俺はまた槍のような棒を杖にして立ち上がり血の痰を地面吐き捨て、一番切れ味のある短剣をポケットから取り出した。
「お前まだ生きてたのか?」
エリスは驚いたように、聞いて来た。
「あんたがぎゃあ、ぎゃあ騒ぐから起きちまっただろうが。」
「それは、悪い事をしたな。だが、心配する必要はない、また寝かしてやる。」
「うれしい、お誘いだけど、断らしてもらうわ。」
「遠慮することはないぞ?」
「悪ぃな、今回は、負けらんねぇんだ。」
エリスは面白いと言った声で答えてきた。
「ほぉ?まだ勝つ気だったのか?」
「へへ、知ってるか?あんたみたいな自信過剰なやつって大きいの一発入れたら案外簡単に自信が粉々になるんだぜ?」
「まぁそれを見るのが楽しくて殺し屋やってたんだけどな。」
俺はそう言って見た目は手榴弾に見える、白い球体ををポケットからとり出した。
俺はその白い球体のピンを抜きエリスに向かって投げつけた。
シュウゥゥゥと言う音を立てて白い煙が辺りを覆った。
「でかい口を叩いて何をするかと思えば、目隠しか?私は呆れたぞ八雲。こんなつまらない小細工しおって。もういいもう楽にしてやる。」
エリスは煙幕をかき消すために翼を降りあげた瞬間、空から数本のナイフが殺到しナイフが翼を貫いた。
「グゥゥ、またしても小細工か?八雲?」
「それはどうかな?」
俺は不敵に笑った。
「お前はなにがそんなにおかしいんだ?」
そう言った瞬間、まさにガクっという音を立ててエリスは地面に無抵抗で力なく倒れた。
「体に力が入らぬ。私の体が、私の体がうごかぬ。お前ぇぇぇ!!私にいったい何をした?」
怒り半分、自分の体が動かない焦り半分といった所か。
「毒だよ。ナイフに大量の毒を縫ってたんだ。」
俺はあと数本しか残ってないナイフを懐から出して見せた。
「な、ぜだ?私に生ぬるい毒はきかんぞ?」
「なめてんのか?そこら辺のと一緒にすんじゃね。」
「この毒は、俺の特注で、体内に入ると、ありとあらゆる細胞を食い潰す毒なんだ。」
「最後には、あんたの心臓も食い潰す。」
「けど、あんた、すげぇよ。あんたの口ん中に刺したナイフの毒の量じゃ、アンタを行動不能にすることはできなかったみたいだしな。」
「いやーびっくりたぜ?口ん中にナイフ、ブッ刺してんのに、アンタピンピンしてんだからさ。」
「まさか、お前・・・」
「私を油断させるために最後の攻撃をわざと喰らったな?」
俺は指をパチンと弾き答えた。
「ご名答。」
「あんた、舐めすぎなんだよ。最初からアーツ?ってやつ使ってたら間違いなく俺は死んでたな。」
「何時だ?」
「ん?」
「空から落ちてきたナイフは何時仕掛けた?」
「ああ、そりゃあんたに尻尾でどつかれた時に適当に投げたぜ?」
「何、?てきとうに投げただと?」
俺はうなずいて続けて言ってやった。
「さすがに、狙いは付けられなかったわ。苦し紛れに空に数本投げただけだ。」
エリスは信じられないと言った声を漏らした。
「そんなバカな話があるか!!」
俺はニヤリと笑い言ってやった。
「そんなバカな話があるんだよ!!あんたは運悪く俺がてきとうに投げたナイフがあったったんだよ。」
「たまに言うだろ?運も実力のうちって。」
「そうだとしても、そもそも私はお前がナイフを投げる所など見えなかったが?」
「そりゃな、わざわざ逆光になる位置に誘導して投げたんだから。見えなくて当然だ。」
俺は種明かしをしてやった。
「何時からだ?私がお前の罠にかかったのは。」
エリスは恨めしげに聞いて来た。
「思いついたのは、最初にナイフ投げた時だ。」
「あんたは人間を舐めてる所があったからな。俺がボロボロになったら油断するだろうなと思った。」
「予想通り、アンタは俺が瀕死の状態になったらアーツを使わなかった。風圧とか、攻撃を食らった時に
わざとオーバーリアクションしたのは、逆光の位置に誘導するためとアンタを油断させるためだったのさ。」
俺はしゃべり終わった後にひどいたちくらみにあった。
「クッ・・・」
「フフ、格好つけてお前もしゃべったが、ギリギリじゃないか。」
「まぁな、だがまだ倒れる訳にはいかねーんだ。」
「勝負はどう見ても俺の勝ちだ。」
「さぁ、教えてもらうぜ?俺がいったい何者で、贄の子ってどういう役をしてる奴なのか。」
「それは無理だ。」
「は?てめぇ約束が違うじゃねーか。」
「それは悪いと思うがお前の作った毒が私の体を蝕んでいるようだ。長々と話ができそうにない。」
「だが、私に勝った褒美をやろう。」
「待てよ、勝手に死ぬなよ。今解毒剤打ってやるから。」
俺は念のために持っていた、小さな小瓶に入った解毒剤をポケットからとりだした。
「無駄だよ。脳も、心臓も半分くらい食い潰されている。」
そう言ってエリスは額についている黒色の宝石を無理やり引きちぎって、俺の投げてきた。
俺は反射的に受け取ってしまった。
その宝石を持った瞬間、やかんを体に押し付けられたような、熱い痛みがはしる。
「熱っ何をしやがった?」
俺は手を見てみると宝石が手の中に吸い込まれていったのだった。
「フフフ、それは魔痕石、お前の何かを奪う代わりに、新しい何かを与えてくれるだろう。」
「俺は、何を奪われて、何を得るんだ?」
「さぁな。だがお前ならいい物が得られるだろう。」
「しかし、私は驚いたぞ。まさか、人の子に負けるとは思わなかったぞ?」
「人を舐めてるからだよ。アースでは人間は強い生き物だからな。」
「フフ、ハハハそうだな。お前は強かった。」
「嫌、俺なんかより強い人間なんていっぱいいるぜ?」
「そうか。そいつらとも戦ってみたかったが、もう時間のようだお前に醜態をさらす気はないどこかに飛ばしてやろう。」
「おい、待て飛ばすって俺をか?」
「私のアーツを忘れたのか。空間だ。お前を飛ばすなんて造作もない。」
そう言って、エリスから、黒色のモヤみたいなものが出てきて、遺跡一帯を覆いこんだ。
まるで、昼から夜に変わったようだった。
「ふむ、ここならお前の知りたい事がわかるだろう。」
「では、幸運を祈る。そして、ようこそグラスフィアへ。」
エリスの言葉とリンクするようにいきなりピカっと辺りが光ったと思うと目の前いたドラゴンは消え失せ
イタリアのミラノの裏路地のような場所に立っていた。
「糞、全然訳わかんなかった。」
俺は小さく愚痴って壁にもたれ掛けた。
ぎりぎりの戦いが終わって緊張していた体や精神が限界に達していた事に気付いた。
そのまま、ズルズル下に滑って行き、糸が切れた人形のように地面に尻を付けた。
俺は天を仰いだ。そうしないと、今にも目が閉じてしまいそうだったからだ。
俺は血だらけの自分の格好を見て自嘲気味に笑って言った。
「けっこうやばかったな。ちょっとサービスしすぎたか?」
バカなことをつぶやいて、俺は眠気との戦闘をサレンダーして、目を閉じた。
・・・・八雲の周りは血の海ができていた。・・・・・
アドバイス、感想宜しくお願いします。