不意の再会
余りにも突然の別れだった。どんなに努力をしても叶わない彼との関係の終焉を迎えるなんて・・・・。失恋よりも決定的で修復不可能な別れだった。再会する事さえ出来ないのだ。
彼を失った私は、その悲しみを乗り越えるのに必死だった。大学のキャンパスで一緒に受けていた講義も、ずっと一人で受けなければならない。友だちとの食堂での会話も、どことなく私に気を遣っている。私の前では自分たちの彼氏の話をしようとしなくなった。もう私の身の周りで生身の彼を感じる事は出来ない。ついこの間まで同じ空気を吸っていたというのに・・・・。
あの日から彼と過ごしたあらゆる空間を避けようとしていた。彼と過ごした思い出のかけらを感じると、急に悲しくなり涙が出てしまうから・・・・。
それでも彼とは心の共有をしたいと無意識の内に考えていたのだろう。大学では彼も私も日本文学を専攻していた。私は他に行きたい学部がなくて入っただけだったが、彼は心底文学を愛していた。好きな詩人の作品を一つ一つ取り上げては、それについて熱く語る。私には良く分からなかったけど、一つの事に打ち込んでいる彼がたまらなく好きだった。そんな彼が愛した文学を私も好きになる事で、彼を私の心の中で生かしたかった。
彼が亡くなって一年が過ぎた頃、教養課程から専門課程を迎えた私は、自分の進路について真剣に考え始めていた。それまで何気なく受講していた教職課程を、これからは真面目に受けようと考え始めた。彼が愛した文学をこれからの人生で共有する為には、国語教師として生きていこうと決意したからだ。
新しい恋をみつけるべきだと何人もの友だちから何度も進められたが、そんなつもりにはなれなかった。私の心の中で、いつまでも彼が生きていたからだ。
そんな決意をして早くも二年が過ぎ、彼が亡くなってから三度目の夏が来た。
大学は無事に卒業した。教員免許も取得した。でも私はまだ教師にはなれない。就職先が決まらないまま、派遣のバイトを始めてから数ヶ月が過ぎていた。
一人暮らしをしている私は、何よりも毎月の生活費を心配しなければならない。教員採用試験の準備や私立校巡りは生活費を稼いでから後の話だ。好きでバイトに明け暮れたわけではないが、日々めまぐるしく変わる職場環境が教員への道を歩もうとしているモチベーションを少しずつ低下させていた。
気付けば陽はすっかり暮れていて、間もなく花火があがろうとしていた。すぐにでもこの場を立ち去ろうと足早に部屋へと向かおうとしているのに、大勢の人々の波が行く手の邪魔をする。どうしてこんなところに来てしまったのだろう。寄りによって花火大会のある日に会場に来るなんて。花火を観たくないからバイトを入れたのに、今日に限ってキャンセルだなんて・・・・。
場内のアナウンスが開会を宣言する。そして間もなく最初の花火があがろうとしていた。
その瞬間、私は自分の目を疑うものを見てしまった。まさか・・・・。いや、そんな筈は・・・。これは疲れから来る幻覚なのか?私は何度も目を擦ってしっかりした意識で視線を向けた。それでも視界に入るもの。それは三年前に亡くなった筈の彼だった。




