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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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海と老人とカノン

作者: 蘭陵王
掲載日:2025/12/01

これは、売れない小説家であり、植物学者であった西岡護の物語。ある少女との出会いが、彼の人生を大きく変えることになる。そして、時が経ち、老婆となった少女は、護の足跡を辿り始める。

(場面:薄暗い研究室。顕微鏡を覗き込む護。)


護「さあ、これで学者の道を歩みだしたぞ!植物の神秘を解き明かすんだ!」


意気込み、研究に励む護。しかし、結婚して間もない妻・照美が急死。護は絶望の淵に突き落とされる。


照美の手紙「貴方ごめんなさい!一緒に歩けなくなりました。天で貴方が駆け登る様に応援しています。」


研究所を辞め、心の廃人と化した護は、ある教会に通い始める。そこで、彼は少年時代に出会った一冊の本について語った。


護「私が少年の頃に出会った本、『老人と樹』。少年は樹木に助けを求め、樹木は惜しみなく与え続ける。しかし、老いた少年は、人生に疲れて樹木の元に戻る。樹木は『すまない、もう何も与えられない。切り株に座って休め』と言うのです。」


教会の人々は、護の話に涙を流した。その中に、一人の少女がいた。


(場面:教会。講演後、少女が護に駆け寄る。)


少女「西岡さん!あの、さっきのお話、すごく感動しました!私、本が大好きなんです!」


護「…ありがとう。」


少女「私、西岡さんのこと、応援したい!また、お話聞かせてください!」


護は、少女の真っ直ぐな瞳に、久しぶりに希望の光を見た気がした。少女の名は、ナンシーといった。


(場面:教会。ナンシーが護に話しかける。)


ナンシー「西岡さん、私、先生のお話、本にしませんか?子どもの絵本のような形で、植物のことをわかりやすく伝えたいんです。」


護「本、ですか…。」


ナンシー「私、子どもの絵本などを制作する会社に勤めているんです。きっと、素敵な本が作れると思います!」


護は、ナンシーの言葉に心を動かされ、共に絵本制作を始めることになる。


(場面:護の質素なアパート。夜遅くまで、ナンシーと護が向かい合って話し込んでいる。)


ナンシー「この植物の生態は、子どもたちには少し難しいかもしれませんね。もっと簡単な言葉で表現してみましょう。」


護「うむ、そうだな。子どもたちに、植物の面白さを伝えたいからな。」


いつしか、二人は良き相棒となっていた。その後、何冊か子ども向けの植物の絵本を出版し、その絵本は子どもたちに大人気となった。


(場面:書店。護とナンシーが、自分たちの絵本を手に取る子どもたちを見守っている。)


子ども1「この絵本、すっごく面白い!植物って、生きているんだね!」


子ども2「私もこの絵本大好き!植物博士になりたい!」


絵本制作を通して、ナンシーはいつしか護に恋心を抱くようになっていた。しかし、護は自分がもう歳を取って自信がなかったため、ナンシーの恋に応えようとはしなかった。


(場面:カフェ。ナンシーが意を決して、護に告白する。)


ナンシー「西岡さん、あの…私、先生のこと…。」


護「…ナンシーさん、君はまだ若い。私はもう歳だ。」


ナンシー「年齢なんて関係ありません!私は、先生の知識や優しさに惹かれたんです!」


護「…すまない。私は、君の気持ちに応える自信がないんだ。」


その後、ナンシーも諦めたのか、何も言わなくなった。護は、ナンシーの気持ちを拒絶してしまったことを、後悔していた。


(場面:護のアパート。ナンシーからの結婚式の招待状が届いている。)


(護、招待状を見つめながら)「結婚…か。」


ナンシーからの結婚式の招待状が届いた。護は、胸を締め付けられるような想いがした。護は、本当はナンシーのことが大好きだった。しかし、自分の年齢や過去の傷から、彼女の幸せを願うことしかできなかった。


(場面:護のアパート。護はギターを手に取り、カノンを奏で始める。)


(護、ギターを弾きながら)「…これが、私の最後の演奏になるだろうな。」


護は、大好きな彼女が好きだったカノンをギターで弾き、人生に幕を下ろそうと考えた。そして、ナンシーへのメッセージを録音した。


(場面:護のアパート。護は、録音機に向かって語りかける。)


護「ナンシーさん、結婚おめでとう。人生には嵐ばかりではない。しかし、愛もいつまでも続くとは限らない。君は幸せになるべき人だ。だから、愛を掴んだら離しては駄目だよ。幸せに…ナンシーさん。」


護は、メッセージを録音した後、嵐の海に挑んだ。


(場面:荒れ狂う海。護は、海に向かって叫ぶ。)


護「海よ、神よ!何故我はこの世に生まれ、このような試練ばかりを受けなければならないのか!応えてくれ!」


しかし、海は荒れ狂うばかりで、護を容赦なく飲み込んでいった。


(場面:海岸。打ち上げられた下駄が、二つ並んでいる。)


その後には、護の下駄が二つ、並んでいるだけだった。


しかし、この結婚式の招待状は、ナンシーのイタズラであった。あまりにも煮え切らない護を懲らしめる、少し残酷な手段だったのだ。だが、もう取り返しがつかない。


(場面:ナンシーの家。護の訃報を聞き、泣き崩れるナンシー。)


ナンシー「…嘘だ…!私が、私が殺してしまった…!」


ナンシーは、泣き崩れた。そして、護の最後のメッセージを胸に秘めて、あまりにも悲しかったので、いつしか忘れてしまったのかもしれない。


(場面:現代。老婆となったナンシーが、美術館を訪れている。)


ナンシーは、誰ともわからない日本人の男性と見合いをして結婚した。今はもうおばあさんになり、護のことは遠い過去の出来事として封印していた。


(場面:美術館。ナンシーは、「西岡歩里作品展」の会場で、護の絵を見つける。)


ナンシー(心の声)「西岡…?まさか…。」


西岡歩里作品展の中に、亡き護の絵を見つけた。それは、護が最後に波にさらわれてしまった後の、下駄の絵だった。ナンシーは思わず、作家に真相を聞いてみたくなった。


(場面:美術館。ナンシーが、歩里に話しかける。)


ナンシー「あの…この絵を描いた西岡歩里さんですか?この絵のことについて、少しお伺いしたいのですが…。」


作家の名前も西岡だったから、身内の方だろうと思ったのだ。


(場面:美術館。歩里が、優しく微笑む。)


歩里「ええ、私が西岡歩里です。あリがとうございます。まだ父の生前の話が聞けてうれしく思います。父はある教会で私を気にいってくれて、養子にしてくれたんです。」


ナンシーはその話を聞いて驚愕した。そんな話は、今まで一度も聞いたことがなかったからだ。


(場面:美術館。歩里は、少しずつ父、西岡護のことを話し始める。)


歩里「父は凄く繊細な人でした。だから、最後はあんな形でしか生きられなかったんじゃないかと…。でも、父の児童小説の『老人と若者とカノン』という物語が大好きでした。」


(場面:美術館。歩里の言葉に、涙ぐむナンシー。)


歩里「そうですか、貴方がナンシーさんですか。ナンシーさん、もう貴方がしたことを恨んでいません。ただ、貴方が幸せになっていてくれれば良いな、とこの頃、ちょくちょく父が夢で語るんです。だから、私もあなたを恨むのを辞めます。もっと早く、一言だけ言ってほしかったですけどね。」


(場面:美術館。歩里は、少し寂しそうな表情を浮かべる。)


歩里「父は、良くナンシーには幸せに成ってもらいたいと言って居ましたね。わたしには、直ぐにナンシーさんを愛しているって分かったけどね。まー言っても仕方がないけど?もし、貴方が『どんな事になろうと父について行く』と言ってくれれば、あんな事にはならなかったかな?とは思うけど?まーすぎた事だから…。」


ナンシーは、この護の養子である歩里に、人生最後の贈り物をしたいと考えた。孫は、実はこの護の本が大好きで、児童文学の道に進んでいた。その孫(晴美)に、この絵を見せて、この全体の不幸な話を何とかハッピーエンドにして、自分の最後の贈り物として、世間に広めて欲しいと願った。


歩里は、そこそこ売れている絵画の売れっ子では有るので、余り気乗りはしなかった。でも、父の話を悲劇にだけはしたく無かった。何故かと言うと、大好きなパパの思いだけは、埋もれて欲しくない思いで、この絵を描き、タイトルも【海と老人とカノン】にしたからだ。


そしてこの話は、晴美によって全世界に広まり始めた。そして、護の偉大な人物を偲んだ。


その後、大ブームになり、護の追悼式典が行われる運びになり、護を偲んだ。そこにはもうナンシーの姿は無かった。この式典の数日前に亡くなっていたのだ。


(場面:追悼式典。歩里は、祭壇に飾られた護の写真を見つめる。)


歩里(心の声)「パパ、やっとナンシーさんと結ばれたね。天国で仲良くね。」


(場面:歩里は、壇上に立ち、参列者に向かって語りかける。)


歩里「皆様、本日は父、西岡護の追悼式典にご参列いただき、誠にありがとうございます。父は、生涯を植物の研究と、子どもたちへの愛に捧げました。そして、父の作品は、今も世界中の人々の心に、温かい光を灯し続けています。」


(場面:歩里の隣には、晴美が立っている。)


歩里「そしてね、パパの本や物語が世界中に広まって、植物を身近に考えてくれる様になったよ!良かったね?パパ、ナンシー最後に素晴らしい贈り物をあリがとう。」


式典は終わり、この物語は終わりを告げる。


晴美と歩里は、児童文学祭で絵本担当を歩里にして、今も沢山の本を一緒に書いております。

(場面:児童文学祭。晴美と歩里は、自分たちのブースでサイン会を開いている。)


子ども1「この絵本、すごく面白かったです!また新しい本、作ってください!」


晴美「ありがとう!これからも、もっと面白い絵本を作れるように頑張るね!」


(場面:晴美と歩里が、顔を見合わせて微笑む。)


歩里「晴美、この絵本、子どもたちに大人気だね。」


晴美「うん、歩里さんの絵が、子どもたちの心を掴んでいるんだと思う。それに、この物語には、おばあちゃんの想いも込められているから。」


(場面:晴美は、空を見上げる。)


晴美「おばあちゃん、見てる?私たちの絵本、たくさんの子どもたちに読まれているよ。きっと、喜んでくれているよね。」


歩里「…パパも、喜んでいると思うよ。やっとナンシーさんと結ばれて、子どもたちの笑顔を見守っているんだから。」


(場面:晴美と歩里は、再び自分たちの絵本に目を向ける。その絵本の表紙には、【海と老人とカノン】というタイトルが書かれている。)


晴美「さあ、次の絵本に取り掛かろうか。今度は、どんな物語を紡ぎ出そうか?」


歩里「そうだね。子どもたちに、夢と希望を与えられるような、そして、護とナンシーの愛のように、時を超えて人々の心に響くような、そんな物語を作りたいな。」


(場面:晴美と歩里は、互いに顔を見合わせ、笑顔を交わす。二人の瞳には、未来への希望が輝いている。)




後書き


人生には限りがあります。だからこそ、一瞬一瞬を大切に!そして、才能は人が決めた指針ではなく、自分自身の中にあるものだと信じて、精一杯生きることこそが、人生の喜びなのだ。

(全てフィクションであり実際に起こった事実ではありません。ご了承願います。)



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