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伏す陰も 語り惹かれば 散らぬ花

知らない人に話しかけるのって結構勇気がいるらしいですね。

まぁ、私には、あんまり、わからないですがね!!

第一章「無意識泥棒」


「……ない」


今は何もない空間に向かって、かつてそこにあったはずの“扉”を開けるポーズのまま、私はしばらく固まっていた。


「……ないじゃんか。冷蔵庫」


想像して欲しい。朝起きて、冷蔵庫がなかったときのことを。

想像して同情して欲しい。


ナノハナ分布域に暮らし始めてから、日々の生活は少しずつ形を成してきた。

昨日までは、そこに確かに“生活の音”があった。

リビングと呼ぶには簡素すぎる空間に置かれた、あの不自然な白い直方体が、私たちの「朝の営み」の中心だった。

そう、冷蔵庫。電気も来てないのに、なぜか冷えていた冷蔵庫。


「……いや、待って、ないのはいいとして……」


いや、良い訳はないのだが…私はしゃがみ込んで、床をじっと見つめた。。


「……なるほど。引き摺った跡はなし…か」


ともすれば冷蔵庫はとてつもない力で持ち上げられてどこかへ持ち去られたと見るのが妥当だろうか。

この仮拠点の床はやわらかい。ちょっとした物をおいておただけですぐ形状記憶しやがるこの床だが、冷蔵庫の痕跡はゼロ。


「……冷蔵庫がここにあった跡はあるし、みんなも使ってたよね……」


なんなら中にヨマリの水筒とか入ってたし、ヒメがこっそりリンゴ隠してたの、私は見てた。

聞いてまわればいいのだろうが、なんかすごい恥ずかしい。ねぇ、冷蔵庫どこやった?って聞くの。


「一体どういう……?」


私はナノハたちの寝床を順に見て回った。ヨマリは地面にへそ天で寝てる。

どういうわけかヨマリの足元に穴が空いてそこからだらんと足をぶらぶらさせながら、寝ている。


ヒメは木の枝の上で静かに丸まってる。

そして——


「……いないじゃんか。ナノハ」


もう一度、私は冷蔵庫が“あった”空間を見つめた。


冷蔵庫が、ない。

ナノハが、いない。


そして次の瞬間、風がふわりと吹いて、カーテン代わりの布が持ち上がった。

私は何気なくその隙間から空を見上げた。


視界の中心に、白い塊が浮かんでいた。


「…………え?」


それは雲じゃなかった。気球でもない。ドローンでも、もちろん鳥でもない。

それは、あれだった。


「……え、冷蔵庫?」


浮かんでいる。空に。ふわふわと。

おそろしく場違いなその直方体が、なぜか空中を、風に乗ってゆるやかに旋回している。


「ぃいやいやいやいやいや」


私は一歩引いて、もう一度見た。


「浮いてる……よね?」


そこには、冷蔵庫があった。間違いなく。

そして、よく見れば——


扉と本体に挟まる形で見慣れた銀髪がちらりと。


「…………」


私はしばらく無言だった。

遠くで鳥の鳴き声がした。分布域の空は今日もやけに青い。


「……あの子、また冷蔵庫に入ってるの?」


私はもう一度、浮かんでいる白い塊を見上げる。


「いや、いやいや……」


ぽつりと呟いて、私は手で額をかざす。

太陽が低い。朝の光に照らされたその物体は、やっぱりどう見ても冷蔵庫だった。


「……え、ちょっと待って」


今さら、ようやく思考が動き出す。


「ナノハって……私ひとり持ち上げるのが精一杯だったよね? 前、地上でダウンブレードナイトから逃げたときとか、ギリッギリで——」


想像が蘇る。

ナノハの眉間に思いきりしわが寄って、歯を食いしばって、ひたすら顔が必死だった、あの飛行。


「そもそも、その時も結局、墜落したよね……?」


で、今は?


「……冷蔵庫、飛んでる……よね?」


あれを支えてるのがナノハだとしたら、もはや“飛行”じゃない。“奇跡”だ。


「……ていうか、どうやって外出たの?」


私はポツリともう一度つぶやいた。


私が起きて行動を始めたのはついさっきだ。

この仮拠点に、ドアらしいドアはない。あるのは布と板で作った、仮設の隙間のようなものだけ。


「……そんな大物、無音で出せるか? 気づくでしょ、普通」


寝起きだったにしても、冷蔵庫を担いで出ていったなら、さすがに気配くらい——


「……いや、まさか、寝たまま飛んだ?」


ありえない仮説を、なぜか真顔で検討していた。


「就寝冷蔵飛行……?」


すごいワードが出てしまった。

語感だけならファンタジー系アニメの必殺技みたいだ。

…そうでもないか


「……ていうか、結構高くね?」


今さらだが、現実的な問題にも気づく。

冷蔵庫は、空に浮かんでいる。ちゃんとした“上空”にある。


「これ、回収できるの……?」


飛べるのはナノハだけ。私は飛べない。

ヨマリは走れる。ヒメは回復できる。でも空は無理。


「冷蔵庫の中に、朝ごはん全部入ってたのに……」


私は、空を見上げたまま、立ち尽くした。


——次第に、風が少し強くなってきた。

冷蔵庫がくるりと旋回し、ちょっとだけこちらに傾いたように見えた。


その拍子に、冷蔵庫の扉がほんの少し開いた。


ちらりと見えた、銀髪の頭。


「…………」


私の視線と、空飛ぶ冷蔵庫の“扉のスキマ”が、静かに交錯する。


そして——


ぱたん。


音もなく、扉が閉じられた。


「……閉めたな」


まるで、気まずさをごまかすような、静かな“自覚的な動作”だった。


私は冷蔵庫に向かって、そっと言った。


「……おはようございます、ナノハさん」


返事は、なかった。

扉の向こう、銀髪は動かない。

ああ、起きてる。あの子、絶対起きてる。

そしてたぶん、猛烈に気まずい。


「……はぁ、見なかったことにしてあげればよかった……」


思わず額を押さえる。

でもこのままじゃ、朝ごはんがない。

みんな、いつも朝ごはんを楽しみにしているのに。


「……回収、するしかない、か……」


私は地面を一度見てから、家の中へ戻る。

まずは、他の子たちの様子を——


「……ぅうー……さむい……ぅうー……」


寝床の片隅、さっきとは違う体勢で寝転ぶヨマリ


「……ヨマリ?」


「……ぅう……」


ヨマリは半目のまま、ぺたんと地べたに沈んでいた。

寝癖で跳ねた髪の隙間から、眉がぎゅっとしかめられている。


「ごはん……まだ……? ……ぐぅ……」


「……あのね、ちょっと問題が発生してましてね」


「……ごはん……の……においがしない……む……」


ごろり。

ヨマリはうつ伏せに転がって、布をかぶった。


「ぅうー……さくのごはんが……たべたいぃ……」


「……ヨマリ……まだ全部が終わったわけじゃない……だから……そんな顔しないで……」


泣きそうな顔で、ヨマリは再び布の中に沈んでいった。


ヒメはというと、木の枝に座って空を見ていた。

目が合うと、ゆっくりとまばたきを一回。


「……ヒメは、見た?」


「冷蔵庫?」


「うん」


「……うん。今朝、上がっていくの見えたよ」


「止めてよ……」


「……寝ぼけてたし……夢かと思ったの」


夢じゃない。

あれは確かに浮かんでいた。

空に。堂々と。


「……とりあえず、迎えに行くしかないな……」


私は深呼吸して、布を結わいた仮設の扉をぐいと押し開けた。

空を見上げる。冷蔵庫は、まだそこにいた。

ゆるやかに、風に乗って、ふわふわと。


「ナノハー!」


私は叫んだ。


「そのまま! どっか行かないでー!!」


ヒメは小さく笑った。

ヨマリはぐずぐず布団の中で転がりながら、


「……さくー……おにぎり……たべたいぃ……」


と、うわ言のように呟いていた。


「…冷蔵庫を、迎えに行く」


口に出すと、ものすごく変なセリフだった。


「……冷蔵庫って迎えに行くものだっけ?」


自問したけど、答えは出なかった。


「……それで、どうやって?」


ヒメが木の上から降りてくる。

顔には特に焦りも戸惑いもなく、いつもの通りの、ちょっとだけ眠そうな顔。


「……高さ、けっこうあるよね」


「ある。っていうか、飛べるのナノハだけなんだよね……」


無論、私も飛べない。Emクリエイターは魔法使いじゃない


「……呼び戻せば?」


ヒメが小さく呟いた。


「うん……それができれば……うん」


私はさっきの“ぱたん”を思い出して、無言で首を振る。


「……わたしは、無理だと思う」


ヒメがそっと、蚊の鳴くような声で言った。


「なぜか、わかる……」


布団の中から、ぐずった声が響いた。


「おにぎり……おにぎろ……」


ヨマリだった。

半分布団になったおにぎり星人ヨマリが、もぞもぞと這い出してくる。


「ナノハ、飛んでるの……? おにぎり持って……?」


「……いや、持ってはないと思うけど……」


「じゃあ、回収……しないと……」


ようやく起きたヨマリは、フラフラと立ち上がり、

棒のように真っ直ぐな足で、よろよろとこっちへ歩いてくる。


「たべたい……ごはん……」


「そうだよね、ごめん……」


私はヨマリの頭をぽん、と撫でる。

それだけで、ぐずったヨマリはちょっとだけ元気を取り戻した。


「じゃあ動こう……サク……ナノハ、捕まえにいこう……」


「だね。何と言うかどうしようもない事件だね」


「そうと決まれば、作戦…考えよう」


私は空を見上げる。

ゆっくりと回る冷蔵庫。

たぶん、あの中のナノハはまだ気まずいまま、動かないんだと思う。


「じゃあ、やろっか。冷蔵庫回収作戦……」


ナノハはまだ、空に浮かんでいる。






「……で?」


ヨマリが、さっきよりも少し目が開いた状態で聞いてきた。

相変わらずおでこには葉っぱがついていて、今はちょっとズレてる。


「結局、あれ……どうやって降ろすの?」


私は、返答に詰まったまま空を見上げる。

あの白くて四角い物体——冷蔵庫は、未だ空に浮かんだままだ。


「アーツ……使ってみる……?」


ヒメが小さく提案してくれたけど、私はそっと首を振った。


「……無理だと思う」


「え?」


「たぶん……普通のアーツは、私……まだ、ちゃんと使えないから」


私の声が、ちょっとだけ地面に吸い込まれていく。


「フィールドアーツみたいに、ゆっくり作るやつじゃないと、頭に思い描けないっていうか……」


「要するに、アーツで降ろすは無理ってこと?」


「……うん、ごめん」


「むむぅ……」


ヨマリが、今朝一番のしょんぼり顔を見せた。


「……でも!」


しかし突然何かを思い出したように胸を張る。


「わたし、足は丈夫だぞ!!」


私はぽかんと口を開けた。


「え、えっと……ありがとう……?」


「足だけは自信あるんだ!

 走れるし!蹴れるし!なんか蹴り上げられるものないか?!」


そう言うと当たりをキョロキョロし始めるヨマリ


「…それならジャンプして冷蔵庫に飛び移って引き摺り落としたら?」


「当てが外れたら私が落ちるだろ!」


と、騒ぐヨマリを横目に私はあれを発見した。


「あっ」


次いでヒメが、瓦礫の山を指差した。


「サッカーボール……?」


そこには、地上から巻き上げられてきたであろう瓦礫の隙間に、ぽつんと転がる黒白のボール。


「……運命、だな」


ヨマリが静かに立ち上がった。

目の下のクマが若干残ったままだが、やたらと勇ましい。


「やるぞ! サッカー作戦! コードネームは——」


「やめとこう。コードネームはやめとこう」


「くっ……却下が早い……っ」


「ここから蹴り上げる……?」


「いや、少し斜め後ろの丘の上から、走ってきてドンだ!」


ヨマリはサッカー部にエースみたいな足捌きでリフティングをしながら、体を温めはじめている。


「全力で走って、全力で蹴る!! それがわたしの……!」


「わたしの……?」


ヨマリが止まった。私たちも、なんとなく息をのんだ。


「……期待したことが何でも思い通りになると思うなよ?」


「…もうはよ行け。」


「…へーい」


少ししゅんとしながら発車の準備を進めるヨマリ


「……行くぞ」


ヨマリが、小高い丘の上で、ポツンと呟く。


目の前にあるのは、瓦礫の中から掘り出したサッカーボール。


助走距離を測るように、慎重な足取りでスタートラインまで後退していく。

葉っぱがくっついたままのおでこが、やけに真剣だった。


「……準備完了!」


ヨマリが仁王立ちで構えた。

その姿には、神聖な儀式的な何かすら感じる……気がする。


「い、行くよっ!」


私の合図とともにヨマリが発進の体制をとる。


「位置についてぇ…よーい、ドン!!」


——次の瞬間。


景色が、ブレた。


ヨマリがいた場所には、もう誰もいない。


残されたのは、足跡と風鳴りだけ。


「え」


私とヒメの声が重なった。


光が、空を切り裂いた。


サッカーボールがなんらかの作用で火花を散らしながら、真上へと撃ち出される。

まるでロケット弾のように、一直線に。


スパァァァァァン


ボールは、空中の冷蔵庫に、正面からクリティカルヒット。と同時に完全に消滅

白い冷蔵庫が煙を上げた。鈍く回転しながら、ぎゅるぎゅると空を舞う。


その間。


私もヒメも、さっきとまったく同じ表情・姿勢で固まっていた。


そして、


遅れてきた爆風が、私たちを直撃。

髪が、服が、旗のように風に煽られる。


「あばばばばばばばば」


空には、赤熱した軌道が、光の弧を描いていた。

それはまるで、炎の矢が放たれた軌跡だった。


その直後、冷蔵庫が錐揉み回転のまま墜落。

砂埃が吹き上がる。


静寂。


やがて、その煙の中から、銀髪の少女がヨロヨロと顔を出す。


「……う……ぅぅ……」


私はそっと、近づいて声をかけた。


「……おはようございます」


ナノハは、ぷるぷるしながら答えた。


「おはよう……ございまひゅ……」


冷蔵庫は、全壊していた。

ごはんも……ほぼ全滅だった。





「えっと……」


私は、崩壊した冷蔵庫の残骸を前に、口をぽかんと開けたまま動けなかった。


「……すごいな、ヨマリの脚力って」


「たぶん、冷蔵庫にとっては最悪の脚力だったけどね……」


ヒメが、倒壊した扉の破片をそっと拾いながら呟く。


「おにぎり……3個は……助かってるな」


「まーじ?それって……奇跡的じゃない……?」


「うん、でも……梅干しのやつは潰れてる」


「それはもう救えないかもしれない……」


一方で。


「うぅ……」


ナノハは、砂埃まみれのスカートをパンパンと叩きながら、まだぐるぐるした顔のままヨロついていた。


「大丈夫?ナノハ……」


「……ぐるぐるしてるけど……い、生きてましゅ……」


「……そう、それなら……良かったけど……」


正直、もう何がどう良かったのか分からないが、生きてたなら良しとする。


すると、ヨマリがサムズアップしながら走ってきた。


「ナノハ無事!冷蔵庫墜落!朝ごはん3個確保!大成功だなっ!!」


「成功……なのか?」


「成功だよ!勝利の朝ごはんだぞ!!」


私は、焼け残ったサンドイッチの破片を見つめながら、そっと呟いた。


「……まあ、これでも、食べられなくは……ないか」


「ナノハが飛ばした冷蔵庫を、ナノハが搭乗中に撃ち落とすという……前代未聞の戦果だったな」


「そう言われると……なんか、すごく複雑な気持ちになってきた……」


ナノハはまだ目を回したまま、遠くを見つめていた。


「ナノハ……次から、冷蔵庫では……寝ないようにね?」


「……はい」


「できれば……床で寝てね?」


「……はい……」


私はそっとため息をついた。


「……さて、と。朝ごはん……は、まあ、あれだけど」


「……気を取り直して、今日も1日がんばろ!」


まだふらついてるけど、目はしっかりしてきた。なんだか少し悔しそうなのは、なんでだ?


「…うん……がんばりましゅ……」


ヨマリが元気に腕を振り上げた。


「まずは朝ごはんの修復からだなっ!」


ヒメも小さく頷いた。


「……火は、わたしが起こすね」


私は、ほんの少し笑って言った。


「じゃあ、私は……残りの梅干しでおにぎり追加しようかな!」


——冷蔵庫は壊れたけど、なんだか、絆はほんの少しだけ、強くなった気がする。


(でもやっぱり冷蔵庫は壊れないでほしかった)


「……っていうかさ」


私は、ナノハの方に向き直った。


「最初の説得に応じて降りてくれてれば、あんな派手に墜落なんて……なかったんじゃないの?」


ナノハは、笑顔を貼りつけたまま、目を泳がせる。


「えっ……そ、それは……えっと……あの、だから……」


視線をあちこちに泳がせながら、わたわたと手を振る。


そのとき、ヨマリが腕を組んでうんうん頷いた。


「そりゃーなぁ」


ヒメも静かに補足する。


「……恥ずかしいもの」


ナノハの目が、ぱちんと見開かれる。


「ま、待って! 言わないで!!」


その叫びもむなしく、言葉は止まらない。


「わたしたちも詳しくは分かんないけど、感覚的にあれは、おねしょだからな!!」


「……そう。お寝飛おねぴ


「イヤあああぁぁあぁぁっぁああああっつああ!!!」


ナノハの叫びが、空にこだまする。


それはまるで、大切な人を目前で失った少女のような、深く悲痛な叫びだった。


──崩壊した冷蔵庫の前で。


ヨマリはどこか誇らしげにサムズアップ。


ヒメは黙って、倒れた冷蔵庫の取っ手をそっと直す。


私は……なんか、すごく、ごめんって気持ちでいっぱいだった。


「……次からは、床で寝ようね?」


「あああああっ!!!」



第二章「不機嫌」



——朝ごはんは、ちゃんと完成した。


壊れた冷蔵庫の中から拾い出した食材たちを、ギリギリで救出。

焦げたたまご、ちょっとぬるい牛乳、歪な形のおにぎり。

とても「完全」とは言えないけど、それでも、皆で囲む食卓には確かな温もりがあった。


「でさー! 蹴った瞬間、なんかシュイィィン!って音して、そんでビュン!って!」


ヨマリが身振り手振りで朝ごはんの席を盛り上げていた。


「シュイィィン……ビュン、ね、なんだろうね、アレ……」

「違うって、キィーーーッツビーンだってば!とにかくなんかすっごかったんだって!」


ヒメは箸を動かしながら、軽く相槌を打つ。

顔はいつも通りの穏やかさだけど、若干、話をいなしている雰囲気が漂っていた。


ヨマリは気づかない。多分、気づく気もない。


「しかもさ! あの火の線! アレ見た? アニメでよくあるやつ!!」

「そうそうアニメね……なんだろうね、アレ……」


そんな賑やかさの片隅で——


私は、真正面の彼女をそっと見る。


ナノハは、完全に“終わっていた”。


「……そんなに気にしなくていいと思うよ?」


小声で話しかけてみるけど、返事はない。

ナノハはご飯を口に運び続けている。が、その目は——


まったく、焦点が合っていなかった。


大きく見開かれた瞳。

箸の動きだけが機械のように動いていて、魂が抜けたような顔。


完全なる「心ここにあらず」状態。


「ナノハ?」


「……」


「ナノハさん……?」


「…………」


「あ、あの、ほら、ほらほら! そんな大騒ぎするほどのことじゃ——」


「…………ぴ……」


「え?」


「おねぴ、じゃないもん……」


「う、うん! もちろんそうだよ!? たまたま、あの、ね!? お天気的な事故というか!」


虚空を見つめるまま、ナノハの口元がほんのり震える。

さすがにこれは、どうにかしなきゃダメだ。


ヒメに助けを求めようとするも


「なぁおい!聞いてるか?!私のボールの命中制度について!ヒメの意見が聞きたいんだ!!!!!」


「…そうね、ボール、ね…なんだろうね、アレ…」


「…ほんとだ!ボールってなんなんだろうな?!」


ダメだありゃ、もう空気をぶった斬るしかない


その場しのぎではあるが仕方がない。私は席を立った。


「……よし、じゃあ、今日は家づくり、再開しようか!」


「おっ!! いよいよだな!!」

ヨマリが即反応する。椅子をがたんと鳴らして立ち上がった。


「少しでも復旧しないと……屋根も床も足りないままだしね」


ヒメも席を立つ。ナノハも、反応は薄いまま、流されるように立ち上がる。


でも……

彼女の表情はまだ、朝焼け色に沈んだままだった。


——ナノハの機嫌も、家と一緒に、直せるといいな。





分布域の外れにある、小さな坂をこえる。

木漏れ日がゆれる森へ、私たちは足を踏み入れた。


「よーし! じゃあ、まずは木材探しだな!」

ヨマリがぐっと腕まくりをして、例の手製の木槌を肩に担ぐ。

やたら似合ってしまうのが、やっぱりちょっと悔しい。


「ねえサク、ああいう枝とかはどうかな? ちょっと曲がってるけど……」

ヒメが指差したのは、なだらかに湾曲した木の枝。

ちょうど、梁に使えそうな形だった。


「うん、すごく良さそう! ヒメ、さすが!」


「ふふ、ありがと」


ヨマリはといえば、木の幹を片っ端からノックして音を確かめている。


「これは……ふつうだな!」

「…普通だな」


「これは……ちょっと硬いかもだ!」

「…かもだ」


「これは……いい音だあ!」

「…いい音だぁ」


そのたびにヒメが真似してて、地味に笑ってしまう。


ただ——

ナノハは、黙っていた。


後ろをついてきてはいるものの、手には何も持っていない。

枝に触ることも、草に触れることもなく、ただ、私たちの後を歩くだけ。


「ナノハ……」


私は、そっと声をかける。


「……木、集めるの……手伝ってくれる?」


ナノハは、一瞬だけ顔を上げた。


そして、ほんの少しだけ、頷いた。


「……うん」


私はほっと息をつく。


その直後だった。


——パキッ!


乾いた音。

私の真上から、枝が折れて、落ちてきた。


「えっ——」


思わず目を閉じた、その瞬間。


「……!」


ナノハが、私を突き飛ばすようにして、前に出た。


彼女の細い肩に、枝がぶつかる。

けれど、しっかりと踏ん張って、私をかばってくれた。


「……だいじょうぶ?」


「ナノハ……!」


私はナノハの手を取った。

彼女は、まだ無表情でいた


「……おねぴじゃ、ないもん……」


「……うん。知ってるよ」


私が笑うと、ナノハはそっと列の最後尾に戻る。


つれぇんだなって思う。





到着した。

木漏れ日の揺れる森の中、風にさらされてぽっかりと空いたその空間に、私たちは戻ってきた。


そこは——

かつて、家を建てようとして、建てられなかった場所だった。


梁だけ組まれたまま崩れた骨組み。

黒く焦げた板材。歪んだ釘。

地面には深くえぐれた土の窪み。


虫の異形に壊されたあの夜、私はここから逃げた。

ナノハも、ヒメも、ヨマリも——みんな無我夢中で。


あれから、ずっと放置されていた。

でも、今日は違う。

今日はここに、もう一度、新しい「家」を作りに来た。


「うぉ〜〜〜!! やっぱこの場所だよな!!」

ヨマリが叫ぶ。

手製の木槌を肩に担いで、すっかりやる気だ。


「思い出の土地ってやつだな!前回は途中で壊されちまったけど、今度こそ最後まで建てきるぞ!」


「…なんだか懐かしい感じがする」


ヒメが微笑む。

けれど、隣にいるナノハは、一言もしゃべらなかった。


彼女の目が、焦げ跡の残る木材の上で止まっていたからだ。


……ナノハ、きっと声も聞こえていないんだろうな。


「と、とにかく!今日から再スタートだよ!」

私は空元気で仕切る。


「今度はちゃんと暮らせる家をつくるんだから! まずは……えーと、土台になる木を……」


そのとき。


「…………」


「……あれ?」


視線の先、少し離れたところ。


焦げた土の影に、誰かがいた。


女の子だった。

茶色の髪。お花の髪飾りは、ない。

ボロボロの服を見に纏い、膝を抱えて座っている。

うつむいて、影の中に半分溶けていた。


私は、そっと声をかけた。


「……こんにちは?」


「………………」


女の子はぴくりとも動かなかった。


「え、えっと……あなた、誰……?」


しばらくの沈黙のあと、

彼女は、ゆっくり顔を上げた。


その顔には、まったく感情がなかった。

ただ、ぽつりと呟く。


「…えへへ…いいんです……自分なんか……いなくたって……」


「…………え?」


「どうせ、誰にも気づかれないですし……人の役にも立てませんし……すみません、すみません、……生きてて、すみません……」


うわあ、という声が誰かの心から漏れたような気がした。

いや、きっと実際に漏れていた。


「お、お名前は……?」


「ありません……仮にあったとして、名乗っても忘れられますし……」


「…………」


ヒメがそっと耳打ちしてくる。


「……なんか……今のナノハに似てる気がする」


「いやほんとに……」


私たちは顔を見合わせた。


でも、ナノハはそれを見ても反応しない。

そのまま、影にいる女の子に一瞥もくれず、黙って地面を見つめていた。


「わぁ……すごく可愛い女の子たちですね……」


その子がぽつりとつぶやく。


「……まぶしすぎるので……私、あっちに行ってますね……」


そう言って、地面に手をつきながら、影のもっと奥へと移動していった。

一番遠い、崩れた柱の裏側。

そこに座り直して、また膝を抱え、じっとこちらを見ている。


ただ——


目だけは、ちゃんとこちらを見ていた。


じっと。まっすぐに。

まるで……この光景を、全部覚えようとしているみたいに。


「……何あの子……」


「わかんないけど……なんとなく、そっとしておいたほうがいい気がする」


「だな……」


ヨマリがため息をつきながら、頭をかいて言う。


「よしっ! 家づくり再開だな!」


私は、なんとなくうなずいた。


あの子がどんな子なのか、今はまだわからない。

でも、たしかに彼女は、何かを見てる。

私たちが、何を作っていくのかを。


……その目はまるで、何かを、

取り戻そうとしているみたいに——





「よーっし! じゃあさっそく、土台打ち始めるぞー!」


ヨマリが威勢よく叫んだかと思うと、次の瞬間にはすでに地面を叩いていた。

ずがんっ!ずがんっ!ずがんっ!

木槌を上下に振るその動きは、もはや職人というより、原始人だ。


「……ヨマリ、それ、場所確認してからにしないと……」


私の忠告もむなしく、ヨマリはひたすら土を殴り続ける。


「確認済みだ! この辺は音の響きがちげぇからな!」


「また音で判断してる……」


「だってこれが一番信頼できるだろ!? “トン”はダメだ!“トゥン”もダメ!でも“ドォン”は最強だ!」


「なにその地面語……」


ヒメのツッコミにもめげず、ヨマリは自信満々。


「まあ見てなって、今度こそ、でっっっっかいおうちを建ててやるんだ!」


「うんうん……でっっっっかい“土くぼみ”ができそうだよ……」


私が冷静に突っ込むと、ヨマリは得意げに笑って、親指を立てた。






ヒメは、ひとりで淡々と動いていた。

適度な大きさの枝や、落ち葉を払いながら使えそうな木材を選別して、積み重ねていく。


「サク、このあたりの木なら、枠組みにちょうど良さそうなの」


「わ、ほんとだ。強度もありそう……!」


「うん。たぶんここ、風通しもいいから、乾きやすいんだよ。柱が腐りにくいと思う」


「さすがヒメ、観察力あるなぁ……!」


「ふふ、ありがと」


静かに、でも確かな言葉で、ヒメは現場の空気を整えてくれていた。


「こういうの、少しずつ積み重ねていけば……ちゃんと、住める場所になるはずだよ」


そう言って、にこっと微笑むヒメの後ろ姿が、なんだか頼もしく見えた。


だが油断はできない。この子は空中に浮く石製の塔を5基建造しようとしているのだから。





「えーっと……私は何すればいいんだっけ……」


私は手元のメモ帳をぱらぱらめくって、作業リストを確認する。


「よし、今日は……間取りを決めて、床板の位置を測って、支柱を仮止めして……え、そんなにやるの?!」


自分で書いたくせに、タスクの量にめまいがする。


「と、とにかく! やってみよう! ええい、ここに目印つけて……!」


地面に棒を立てて、布を広げて、仮の平面図を描いてみる。


「ふむふむ……これがキッチンで、こっちがリビングで……!」


だんだん楽しくなってきた私が、夢中になって設計図に色ペンで“ふとんゾーン”とか“おひるねくぼみ”とか書いていると、


「サク……それ、保育園の図じゃない……?」


「えっ!? ち、違うよ!これはれっきとした——住宅の間取りですッ!」


うっかり“おやつコーナー”とかも描いてしまっていた私は、全力で否定するしかなかった。





私には名前がない。けれどそれでいい。

ある日突然この世界に産み落とされた私には、生きる目的も、理由もわからない。


ただ、息をするのは心地いいし、眠るのは気持ちいい。何もしなくていいならゆっくりとこの穏やかな

世界で、何もしらぬまま灰になってしまいたい。そう思っていたのに。


さっきまでは清く澄んだ空気に満ちていたこの場所に、黒い空気が、じりじりと肺を焼くように漂っていた。

今はもう、何か……何かとても強くて、濁ったものに隣を占拠されている気がする。


そっと、隣を見る。

隣には、銀色の髪の少女がいた。


——いつからそこにいたのだろう。

膝を抱えて、静かに、ただ静かに、座っている。

無表情で、焦点の合わない目で、まっすぐこちらを見ていた。


「……ぁ……」


心臓が、どくんと跳ねる。


(まずい……この人、ぜったいヤバい……)


寒気がした。

体の奥から、氷のしずくがポタポタ落ちてくるような感覚。


「え、えと……」


耐えきれず、私は問いかけてしまった。


「な、なな……なんでそんなに……そんなに悲しい顔をしてるんですか……?」


……返事はない。


「……あの、えっと……私から見ると……あっちのみなさんとは、仲良さそうに見えるのに……」


そのときだった。


「……おねぴじゃないもん……」


聞き慣れない言葉が、ふわりと落ちてきた。


「……へ?」


「おねぴじゃ……ないもんッッッ!!!!」


いきなりの声量に、全身が跳ね上がった。


「ぴぇえッ!?!?」


私の口から、変な声が漏れる。

一瞬で涙目になる。心臓の跳ね方が今度はさっきとは別の意味でやばい。


(え、え!? なに!? おねぴ!? なにそれ!? え!?)


隣の少女は、顔を伏せ、肩を震わせながら、なおも膝を抱えていた。

そのまま、ぐるぐると黒い感情の渦が、再び空気を塗りつぶしていく。


私は思った。


(……だれか助けてください……)


けれどこの場に、助けてくれそうな人は、いなかった。


ただ、遠くで何かを組み立てる音と、陽気な掛け声だけが、風に乗って届いてくるのだった。



挿絵(By みてみん)



「ナノハ、こっち手伝ってくれる?」


私がふと声をかけたとき、彼女はすでに、そこにはいなかった。


「……え?」


振り返って、周囲を見渡す。


「ナノハ……?」


ヨマリもヒメも、作業の手を止めて、目をやる。


——いない。


あの影の中にも、残骸の柱の裏にも、彼女の姿は見当たらない。


「どこ行ったの……?」


私は、ふと気配を感じて、そっと視線を移す。


木陰の隅。

影のさらに奥。


……いた。


あの不思議な子の隣。

あの、茶髪の、名前も知らない少女の隣で——


ナノハが、膝を抱えて、じっと座っていた。


無言で。

表情もなく。

ただ、ぼんやりと、こちらを見ていた。


「……あ……」


そのとき、私は気づいた。


さっきの暗い少女の肩が、びくびく震えていた。

さっきまでネガティブオーラを撒き散らしていた彼女が、今は完全に目を泳がせている。


「え……なんか……」


「うぅ……こっち見てる……! こっち、見てるぅぅ……!!」


――あの子は怯えていた。


圧倒的な絶望オーラをまとっているのは、今やナノハのほうだった。


その隣で、同調したかのように、謎の少女の目がぐるぐると回る。


「うう……なんか、もう、いろんな記憶が走馬灯みたいに……ごめんなさい……ほんとごめんなさい……

あれ……走馬灯のはずが全部空白なのですが……あぁそうですか…走馬灯になるほどの記憶など私は

持ち合わせてはいなかったのですね……ごめんなさい…ごめんなさい」


謎の少女の絶望レベルもたちまちナノハに追いつく。


そこには黒が見える。圧倒的黒の奔流、竜巻が…


「うわぁ……」


私は、そっと、そっと、その場から目を逸らした。






影のなか。

私はいま、隣に座る“何か”と戦っていた。


(こわいこわいこわいこわい……)


銀髪の少女は、一言も喋らない。

ただ、膝を抱えて、こちらをじっと見ている。


(……な、なんでこっち見てるんですか……!? 目の焦点合ってないのに……!)


肩がガクガク震える。

思考がとけていく。

言葉がまともに出てこない。


(あっちのみんな、作業してるんですよね……? 明るい……楽しそう……太陽が……)

(ここだけ気温がおかしい……冷たい……つらい……)


私は意を決して、声を出す。


「あ、あの……な、ナノハさん…でしたっけ…?」


ピクリ、とも動かない。


「その……よ、よければ……いっしょに、あっち、戻りませんか……? ついてって…あげますし、ほら、柱とか、手分けして、えっと……あっち、

すごく和やかで……平和で……光があって……」


語彙がどんどん失われていく。


ナノハは、ただ黙って、膝の間に顔をうずめた。


「…………」


(ち、沈黙……!? このままじゃ、わたしが溶けてしまう……!)


私は焦った。

この空気から脱出するには、なんとしても彼女を動かすしかない。


(たとえば……差し入れとか!?)


焦って、ポケットをごそごそする。


「えっと……こ、これ……!」


手にあったのは、道中で拾った小石。

なんか……ちょっとだけハートの形っぽい……?


「こ、これは……幸運の……石……です?」


ナノハは見向きもしなかった。


(うわあああ無視されたぁぁ!!!)


焦りが限界に達する。

私は歌を口ずさもうとした。


「ら、ラララ〜……なんでもない日バンザ……」


「…………」


首をギギギッと鳴らしながら無言でナノハがこちらを向いた。


「ぴっ!?」


もうだめだ。私のメンタルが持たない。


(なんで私、こんな得体の知れない絶望の隣に座ってるんですか…?!これは、いじめですか?!私が暗いからいじめて楽しんでるんですね…?!)


耳の奥で、微かに陽気な声が響いた。


『おーい、そろそろ様子見に行くかー?』

黒いひまわりの人の声だ。助け舟!?


私は瞬時に目を潤ませて、心の中で叫んだ。


(来て!! お願い来て!!! あなたたちの光が必要なんです!!!)


でも、すぐに聞こえてきたのは青い薔薇の人の声。


『もう少しだけ待ってあげよっか。もしかしたら大事な話かもしれないし』

『うむ。それな』


「話なんてしてねぇですよぉ!!!」


声には出せなかった。


私はゆっくりと、ナノハの顔を見る。


やっぱり無表情。

なのに、なぜかそこにある、圧倒的な感情の渦。


黒い。黒すぎる。

このままだと、わたしも引きずり込まれる。


「だれか……交代してください……」


本気で、そう思った。


そして同時に私ははっきりと理解した。


(この人、いま、絶対に現場に戻る気ゼロだ……!!)






風が吹いた。

冷たい影の中、ナノハの銀髪が、そっと揺れた。


その様子を見て、私は目を閉じた。


(……次、どうすればいいんですかね……)


(む、無理……むりむりむり……もう無理です……)


ナノハさん(※名前たぶんそう)……

いや、今や完全に絶望の化身と化したこの少女は、ひと言も喋らないまま、ずっと私の隣に座っている。

無表情で。無言で。無慈悲に。


(あ、あの……どうか、早く光の世界にお戻りになってくださいませんか……?)


私の肩はもう限界を迎えている。

ガクガク震えすぎて、もはや小刻みに踊っているようだ。


(うぅ……このままじゃ、私は……絶望の海に……)


そのときだった。


「……ねえ」


突然の声に、私はびくりと肩を跳ねさせた。

それでも、返事を返す前に、彼女は続ける。


「……おねぴって……知ってる……?」


その言葉が、あまりに唐突すぎて、私は思わず瞬きをした。


「……おね、ぴ……?」


「……うん……寝てる時とか……勝手に……変なことしちゃうやつ……」


「…………」


「わたし……飛んでたの……冷蔵庫と一緒に……空の上……」


膝を抱えたままの彼女が、少しだけ視線を落とす。


「気づいたら、浮かんでて……止まれなくて……」


「……それで、ヨマリに……言われたの。“おねぴだったんだね”って」


ヨマリ。あのヒマワリの人のことだろう…


私は、何も返せなかった。


「……違うのに…いや、違くはないんだろうけど…わたし、ちゃんと……自分の意思だけで飛びたかったのに……」


言葉がゆっくり、沈むように落ちていく。


「でも……勝手に飛んじゃって……冷蔵庫……なんかもう……すごく、恥ずかしかった……」


ふと見上げた彼女の瞳が、じんわり濡れていた。

それは、泣いているというより、にじんでいるような——拭けない悲しさのにじみだった。


「バレたく…なかったのに…」


私は、どうすればよかったのか、わからなかった。


(……ギャグみたいな話……なのに……)


言葉をかけようとしても、何も出てこなかった。

彼女の絶望が、そっと私の中にもしみ込んできていた。


影の中で、しばらく沈黙が続いた。

けれど私は、ようやく少しだけ、呼吸ができるようになっていた。


(……そうだったんですね……おねぴ……)


正直、意味はよくわかってないけど——

でも、恥ずかしかったこと、悔しかったこと、ちゃんと伝わった。


(わたしだって、みんなに笑われるの……すごく、苦手で……)


ぎこちなく、私は膝を叩いて立ち上がった。

ぐにゃりと足が震える。

でも、もうこのままではいられない。


「な、ナノハさん……!」


震えながらも、私は彼女を見下ろす。


「わ、わたし……!あなたを……その……お連れします!現場へ!!」


その宣言に、ナノハはちらりと顔を上げた。

……でも、何も言わない。


「い、今なら!だれもおねぴの話なんかしてません!!冷蔵庫もありません!!太陽が照ってます!!鳥も鳴いてます!!!ほら、光が……!!」


やけくそになりながら、私は彼女の手を取ろうとする——が、


スッと躱されてしまう。


「あっ、ごめんなさい、勝手に触るのダメでしたよね!?すみません!!すみません!!」


自分もばっと手を引っ込めて土下座。地面に額が当たる。


それでも私はもう一度言った。


「でも、わたし……思うんです……」


もう声は震えていない


「その、恥ずかしいことって、笑われるとすごく辛いけど……」


「でも、たぶん……わたし、今日……」


「あなたが冷蔵庫で飛んでたって話、ちょっとだけ、ちょっとだけですけど、あったかいなって、思っちゃったんです……」


——沈黙。


「わたし……あなたが飛ぶとこ、ちゃんと見てみたいって……思いました」


ナノハは、微かに目を見開いた。


「あっちの皆さんだってきっとまた、ナノハさんのお空を飛ぶ姿見たいって思ってるはずです!」


私は心の中で叫ぶ。


(頼む!! 動いて!! せめて表情筋だけでもいいから!!!)


「……ほんとに……?」


低く、消え入りそうな声。

でもそれは、さっきまでの絶望の色とは違っていた。


「……わたしの、飛ぶとこ……見たいって……言った?」


私は慌ててうなずく。


「は、はいっ! あの、もちろん、できれば冷蔵庫じゃない方が……!」


「うぅ……」


ナノハは膝の間に顔を突っ伏した。


「やっぱり……おねぴのこと、笑ってるんじゃん……」


「あ、ち、ちがっ……!」


慌てて手を振る私に、彼女は顔を上げて、ほんの少しだけ口元を緩めた。


「……冗談だよ」


「ぴえっ!? わ、笑った……!?」


「な、なんだよぅ、私だって笑うよぅ……」


ナノハはぽつりとそう言って、ふわりと立ち上がった。


「……わたし、みんなにちゃんと謝らなきゃ」


「え……?」


「おねぴしてごめんなさいって。不貞腐れてて、ごめんなさいって」


光の方へ視線を向けながら、ナノハはそっと続ける。


「ほんとはね、これがトラウマになって、もう二度と飛べないかもって思ってた」


「……」


「ううん。もう、二度と飛んでやるもんかって、思ってた」


その横顔は、少しだけ照れて、でもどこか決意を秘めていた。


「でも……君が、見たいって言ってくれたから」


彼女は、私の方にちらりと視線を向ける。


「ちゃんと、終わらせてくる。おねぴのことも。……わたしのことも」


私は、思わず言っていた。


「……応援してます!」


ナノハは、ふにゃりとした笑みをこぼして——


「……行ってきます」


静かに、でもまっすぐに歩き出した。


私はその背中を見送った。

さっきまで絶望の塊だったのが、ちょっとだけ光に向かって動き出したような、そんな気がして。


「……強いなぁ」


私の呟きに、風がそっと答えた気がした。


私はまだ木陰に立ち尽くしたまま、彼女を見送っていた。

さっきまで、まるで地面に根を張ったみたいに動かなかったあの子が。


——ぱたぱたっ


ナノハが走り出した音が、少し遠くで聞こえる。

その速度は、少しずつ少しずつ、加速しているように思えた。


(あ……なんか……)


(飛びそう)


私はそう思った。

まだ空なんて見えちゃいないのに、不思議とそう確信できた。


ナノハは、もう大丈夫だ。


——そんな気がしたから。


「……さてと」


私は手についた土を軽く払う。

まだ膝はちょっと痛いけど、もう平気。


「見届けなくちゃ」


ようやく私も、木陰の中から一歩、光の方へ踏み出した。


(絶望の隣は……確かにきつかったけど)


(でも、あそこで隣に座れたこと、わたし、ちょっとだけ誇ってもいい気がします)


風が背中を押してくれる。

私は光の方へ、ナノハのあとを追って歩き出した。

小さな影の中の奮闘は、ようやく幕を下ろした——。



第三章「その花の名は」



「ん?」


真っ先に動いたのは、ヨマリの耳だった。

手製の木槌を肩に担いでいた彼女が、不意に振り返る。


「おい、今……誰か、走ってなかったか?」


「え?」


ヒメが振り向く。つられて私も。


——そして、


ぱたぱたぱたっ。

足音と一緒に、小さな影が現れた。


「……あっ」


「あれ……ナノハ!?」


銀髪が、陽にきらめいている。

影を抜けて、しっかりと地面を蹴って、こちらに向かってくる。


「……ナノハだ! 戻ってきたぞ!」


ヨマリが叫んだ。肩のハンマーをガツンと地面に突き立てる。


「……でも、なんか……顔が違うような……?」


ヒメがぽつりと呟いた。


「……うん、」


「なんか、ちゃんと……前を向いてる」


私は、スコップを地面に置いて駆け出した。


「ナノハー!!」


ナノハは少しだけ目を丸くする。


……でも、そのまま。

止まらずに、私の横をすり抜けて。


「えっ……?」


「……ちょ、ナノハ?」


「……あれ?」


「……おーい、無視か!?」


ざわめく私たちを尻目にナノハは、まっすぐに現場の中心へと進んでいく。

みんなが、目を見張って、そして——

ナノハが、ぴたりと立ち止まった。


静寂。

全員が注目する中で、ナノハが、小さく深呼吸をひとつ。


そして、


「……みんなに」


ぽつりと、でもはっきりと。


「ちゃんと……謝らなくちゃって、思って……」


私たちはきょとんと目を見合わせた。

ナノハは、ぎゅっと両手を握りしめて続けた。


「おねぴして……ごめんなさい……!」


「ふてくされてて……ごめんなさいっ!」


それきり、言葉はなかった。


風が、静かに吹き抜ける。


誰もすぐには返事をしなかった。


でも——


「気にしてないよ」


一番に声を出したのは、ヒメだった。


「ナノハが、元気になってくれるのが……一番うれしいから」


その言葉に続くように、私も声をかける。


「だいじょーぶ!むしろ、冷蔵庫飛行とか、一周回って伝説だったよ!語り継ごう!」


「それはやめて……」


小さく呟くナノハに、ヨマリがぱっと手を挙げて——


「いや!それに関してはわたしが悪かった!!」


勢いよく頭を下げた。


「おねしょって最初に言い出したの、わたしだもんな……!感覚的につい頭をよぎっちゃって……!ごめんなさい!!」


ナノハはびっくりしたようにヨマリを見た。


それを受けヒメも


「…それをもじっておねぴにしたのは私…。ナノハ、私たちこそごめんなさい。確かに

感覚的には似てるけど、厳密に言えば違うから、そんな悲観しないで…」


そして、何かがすっとほどけたように——


「……ううん」


彼女は、ようやく、ほんの少しだけ笑った。


ほんの少しだったけど、その笑顔は何よりも優しくて、柔らかかった。


光の中で、ナノハの影が、やっと色を取り戻した気がした。


そして、ほんの少し照れたように、でもはっきりと顔を上げて言った。


「……あの、私も……一緒に、お家、作っていい?」


その言葉に、私たちはぴたっと動きを止めて、顔を見合わせた。


一瞬の静寂。


そして——


「当たりまえじゃん!」


「じゃない」


「だ!!」


三者三様の語尾が重なるようナノハにかえる。


ナノハの表情がパァっと明るくなる


それと同時に——


ひゅうううっ


風が吹いた。


突然、あたりの景色が一変する。


さっきまで青々と茂っていた森の木々が、一瞬にしてピンクに染まりはじめた。


花弁が空へと舞い上がる。まるで吹雪のように、光の粒とともに辺りを包み込んでいく。


「……な、なにこれ……!」


思わず見上げる私の声をかき消すように、澄んだ声が響いた。


「それでこそ、あなたたちのあるべき姿ですっ!!」


声のした方を振り返ると——


そこには、見知らぬ少女が立っていた。


頭にはピンク色の花の髪飾り。

白と黒を基調にした、まるでメイドのようなフリル服。

やわらかい桃色の髪を靡かせ、くるくると舞う。


「素晴らしいですーーっ! あっぱれですーーっ!!」


くるりと一回転して、桜吹雪の中で両手を広げてポーズを決めるその姿は、どこからどう見ても“祝福の精”みたいだった。


そのまま両手を胸に当て、感極まったように目を細める。


「これでやっと……やっと私も……光の中に……っ」


桜吹雪の中。


くるりと回った少女は、ぴたりと動きを止め、ふわりとスカートの裾をつまんで一礼した。


「はじめましてっ!でいいですかね?!皆さんの素敵な絆、ナノハさんのフルエモーションな感情に充てられてつい咲いちゃいましたっ!」


ワンチャン自分よりも元気なその少女にヨマリが小声で「おぉ……なんかすげぇテンションだな……」と呟く。


「わ、わたしもはじめまして……?」


そろりと私も返す。でもこの違和感、きっとはじめましてではない。

もしかして…もしかしてだけど……


「あの……あなたって、もしかして、さっきの木陰で——」


「あっ、はいっ! そうなんですっ!」

ぱっと右手を挙げて答える。


「さっきまであの辺で膝かかえてぶつぶつ言ってたの、わたしですっ!えへへ!」


「マジ!?」とサクがツッコんだのも無理はない。


人はそう簡単には変われない。仮にすぐ変われたとしてもここまでの変貌は

普通、遂げない。


私は恐る恐る声をかけてみる。


「そ、それで……名前は? 君、名前はなんていうの?」


「えっ」


ぴたりと、少女の動きが止まった。


「……えっ、あっ、そうでしたっ!」


手をぽんと叩いて目をまるくする。


「し、失念してましたっ! わたし、まだ名前ないんでしたっ!」


「そう言えば、さっきも無いっていってたもんね!?」


あまりにも別人すぎて同じ質問をしてしまった、

私はすでに若干デジャヴを感じつつも反応する。


「そっか……サクが名付けてなかったんだね」


ヒメがそっと耳打ちしてきた。


「この子も、きっとサクが生み出したんだよ。私たちと同じように」


「……わ、私が?」


やっぱり…お花だもんね、


「はいっ! そうだと思いますっ!」

と、本人がノリノリで返してきた。


「で、でも私この子を生み出した記憶ないんだけど!? えっ!?!? 怖っ!!」


「そんな……では私は……望まれなかった存在……だったのですね……っ」

少女はその場で膝をつき、ぶるぶる震え出す。


「し、しぬほど重い!!!」


「わかるよその気持ち……」


すっとナノハが入ってくる。


「私もそうだったから……最初、サクに「だれ?!」的な感じで来られたし……」


「やめよ!?この無意識生まれ連合みたいなやつやめよ!? 責任感が……!」


「でもっ」


ぱっと顔を上げて少女が言う。


「今こうして、ちゃんと話せてるしっ! サクさんが名付けてくれたら、それがいちばんですっ!」


「うぅ……命名権が、肩に重い……」


——けれど私の顔は、ほんの少しだけ笑っていたような気がする



挿絵(By みてみん)



「……うーん……」


私は唸ったまま、しゃがみこんで枯れ枝で地面にぐちゃぐちゃと何かを描き始める。


「そんな簡単に思いつくもんじゃないよ……」


気軽に名付けてるように見えて、実はけっこう考えてるんだよ……!


「よし! じゃあ名付け合戦だなっ!」


ヨマリが急に腕を組んで叫んだ。


「サクが悩んでるあいだに、わたしたちが代わりにいい名前案を出すんだっ!」


「なにそれ……全員で迷わせにきてない?」


「いいじゃない、楽しいし」


ヒメがくすっと笑って参加宣言。


「では……第一案です」


ナノハが手を挙げる。


「…チリジリ」


「バカにしてるんですか?!」


「もちろんしてる」


「ぴえーん」


ナノハ、そのお花さんは一応あなたの恩人なんじゃ無いの?


複雑な気分に陥っていると、今度はヨマリが続く


「第二案!!!影子!膝抱…w 影子!」


「何ちょっと笑ってんすか?!」


少女は叫ぶ


「ご丁寧に名字っぽいものまで付けて悪口増やすんじゃねぇです!!!!!」


「あなたたちねぇ」


ヒメが2人の終わってるネーミングセンスに思わず項垂れる。


「自分たちが「虚無元気」とか「般若飛行」って呼ばれた嫌でしょう?」


「きょ…虚無元気?!」


「般若…飛行…?!」


調子に乗る2人に現実を突きつけ、ヒメは言う。


「第三案…私は、陰苦隷恥震ちゃんとか可愛いと思うの」


ヒメの持っていたメモ用紙には名前の煌びやかさとは対照的な

陰鬱とした漢字が行儀良く並んでいた。


「ちょっと待ってくださいヒメさん?!」


ヒメは意外に鬼だった。全方位を等しく傷つけることに成功した


「…いいじゃん、いんくれぢぶるちゃん…」


「…ダブルミーニングだな…すごいクオリティだ。サク…決まったぞ…」


「待て待て待ってください?!なんでみんな暗い時の私にばっか注目してるんです?!

大切な私の名前ですよ?!」


渾身の魂の訴え。無論それは3人の心にもしっかり届き、響いた。


そして


「…そうだね、ごめんねピンクちゃん」


「…確かに、今こそが本当の自分ってやつだもんな、あっぱれちゃん」


「…ごめんなさい。元気のお花さん…」


「ちょっと?!遊べそうになくなった途端飽きんな!!ですよっ!」


みんなが勝手に盛り上がっていく。

盛り上がって……うわ、般若飛行に睨まれた


少女はひたいに汗して必死に3人の抵抗しているが、

口元は少し笑ってる。たぶん、楽しんでくれてるみたい。


「……あぁもう、ほんとに……責任重大すぎる……」


私は再び枝で地面を傷つけながら呟いた。


そんな私の葛藤も知らず、白熱していた花会議は終息へと向かっていた




はぁ…と短いため息が聞こえる。


「……チリジリちゃんもナシなんでしょ」

般若飛行がしょんぼりしながら呟く。



「崩子も……なあ……」

虚無元気からは元気が剥がれようやくその無表情が似合うテンションに落ち着いている。



「きみ…結構わがままだねぇ…」


「な、なんですと?!」


「…じゃあかげぼっちさんは?」


「ねぇヒメさん?!」






そんな感じで、結局、日が暮れるまで名前会議は紛糾し続けた。


気づけば空は茜色に染まり、吹きすぎる風も少しだけ涼しくなっていた。


「今日は……いったん帰ろっか」


「そうだな。腹減ったし」


「晩ごはんはどうしよっか。冷蔵庫は……まだ空中?」


「だれか取ってきてよ、冷蔵庫」


「今いじってきたやつ、面覚えたかんな?」


「…今まで覚えてなかったのね…」


他愛ないやりとりを交わしながら、私たちは今日の作業場を後にした。


帰り道、ぽつぽつと並んで歩く。


私は少し後ろから、みんなの背中を見つめて——


「ナノハー、ヒメー、ヨマリー」


それぞれの名前を呼ぶ。


「……ミオウもー!」


「はーーい」


——ぴたっ


最後に呼ばれたその名前に、ピンクの髪がぴくりと揺れた。


「って、えっ……」


思わず振り向いたその顔は、ぽかんとしていた。


「……今、ミオウって……」


私がにっと笑って答える。


「不意打ち、成功〜〜〜〜!」


「えっ、えっ、名前!? 今のって名前ですかっ!?!?」


「うん。いま決めた。おめでとう、ミオウ」


「わ、わたし……! ミオウ……!!」


何度も何度も、その名前を口の中で転がしてみるように、繰り返していた。


その顔は……少しだけ泣きそうで、

でも間違いなく、嬉しそうな顔をしていた。


ナノハがふふっと笑って小声でつぶやく。


「やっぱりサクは、そうやって名前つけるよね……」


ヒメも、そっと私に囁いた。


「うん。新しい仲間、大事な儀式」


ふと、ミオウがぎゅっと胸の前で手を握る。


「……ありがとうございますっ……!」


その小さな声は、ちゃんと夜風に乗って、私の耳に届いた。


私は肩をすくめて笑う。


「どういたしまして、ミオウ」


夜が来る。


でも、なんだか今日は、心の中があったかい。


名付け合戦の終わりは、静かで、でもすごく大きな始まりだった。









「そう言えばヨマリ。朝、ヨマリの寝てる足元におっきな穴が空いてたんだけどあれってどしたの?」


「…え?!…あ、あーーあれ?!あれか?!いや、今のナシ!!なんだそれ!そんなの知らないぞ!!」


「…ヨマリ、あれ…おね蹴でしょ…」


「えーー?そうなのーー?よまーりちゃーーん?」


「イヤあああぁぁあぁぁっぁああああっつああ!!!」


「ハハッ…!結構虚無が似合うんですねっ!」


こんにちは、SleePです。

ここまで読んでくれてありがとうございます!!!


今回の章も、いろいろありましたね…


冷蔵庫のは飛ぶし、おねぴでナノハは絶望するし、それでも建築は再開するし

そして何より、膝と闇を抱えた新キャラが影から出てきました。


最初は暗かった彼女も、最後にはきれいに咲いてくれたので、

あれだけ騒がしかった章の締めくくりとしては、

ちょっと気持ちのいい春風みたいな気分で終われたかなと思ってます。


さて次回は、ミオウの意外な特技で建築が異様に進む進む!

今ままで建築リーダーとして皆を支えていたヒメが少し拗ねてしまうものの…


次回もお楽しみに〜!!


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